第19話
「今度は木の上にあるみたいだね」
「んじゃ、手っ取り早く取るか」
つぐみがそう言うと秀久が木に登ろうとする。
それを見たつぐみが慌てて制服の袖を引っ張って止める。
「ぐえ!? なにすんだよ!!?」
「ご、ごめん。 でも、木にのぼるなんて危ないよ?」
振り向いて怒りながら言う秀久。
つぐみは謝罪しながら見つめて伝える。
「ああ、不憫なことが起きないか心配なんだね、つぐみは」
「あらあら、つぐみはいいこね~♪」
納得したように手を叩く澪次の隣で頬に手を当ててにこにこ笑顔な美桜。
時々、怪我をして帰宅するのでそれをふまえての行動だったのだろう。
「たかが、木登り程度で大それた怪我なんてしねーよ」
「たかがなんて思ったら駄目だよ! それで大怪我した人だっているんだから!」
呆れるように赤い瞳でつぐみを見つめる秀久。
つぐみは両手をばたばたさせながら秀久を見上げて注意する。
身長に差があるので必然的に上目遣いになる。
「なら、どうやって取るんだよ」
「そうだね、人目もあるから力は使えないし」
「なら、肩車すればいいんじゃないかしら?」
ふてくされる秀久が言うと澪次も対応について悩みはじめる。
そこへ美桜がにこにこしながら提案をする。
「いいとは思うが、誰を誰が?」
「うふふ~♪ ヒデくんがつぐみを♪」
秀久の疑問に美桜は笑顔で告げる。
それはもう楽しそうに。
「・・・・なんでだよ!? 澪次に任せればいいだろ!」
「ちょ、どうしてそこで僕のことを挙げるのさ!?」
秀久が声を挙げながら澪次の方に役割を移そうとする。
「あら~♪ いいことが起きるかもしれないじゃない♪
それに、澪次くんにはあのこがいるし~」
「いいことって?」
にこにこ笑顔の美桜の隣でつぐみは小首をかしげていた。
どうやら理解できていないらしい。
「ぐっ・・・・・」
「秀久の負けだね?」
口ごもる秀久に澪次が苦笑しながら肩を叩いた。
それを聞いて肩を落とす秀久だった。
「ほらほら、早くしないと~♪」
「はぁ、わかったよ。 つぐみ、乗れ」
「・・・・・・・・・ふえ?」
急かす美桜に押され気味になりながら声をかける秀久。
つぐみはいまいち状況がつかめていないようだった。
「ふえ? じゃねーよ、俺の肩に乗れって」
「え、えェェェェェェ!!?」
呆れる秀久とは裏腹に顔をりんごのように赤くするつぐみが大きな声を挙げる。
さすがに狼の血をひいているだけあって、声が高くなる。
全校中に広がっているのは間違いないだろう。
「ちょ、声がでかすぎだ!?」
「もごもご(ご、ごめん)」
慌ててつぐみの口を抑える秀久と謝罪するつぐみ。
なんとも微妙な光景である。
「とりあえず、俺が担ぐからつぐみはあそこにあるお宝を回収するんだぞ?」
「う、うん」
深呼吸しているつぐみに秀久が言うと戸惑いながらも頷いた。
「つぐみ、ファイト♪」
「落ちないようにね?」
美桜はとても楽しそうに笑いながら声をかけ、澪次は心配そうに見つめて言う。
それから、秀久がしゃがむとつぐみは秀久の両肩に足を置いて秀久の頭に手を置く。
「立つぞ、いいか?」
「う、うん! いいよ!」
秀久の声に頷くつぐみ。
それと訊いた秀久は掛け声をかけて立ち上がる。
あやうくよろけそうにつぐみはなったがとっさに秀久の頭にしがみついた、
それで秀久の頭につぐみのふくよかな果実があたり、動揺が彼に襲ったのはいうまでもない。
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