第11話
「さて、みんなそろったわね」
まみが周りを見渡して笑顔で言う。
それはとても嬉しそうに見えたのは仲間がそろったからだろう。
「由香里ちゃ……」
「?」
そんな中、心が由香里に話しかけた。
彼女は不思議そうに心を見つめて首をかしげる。
それはあまりにもかわいらしかった。
「昨夜、学校にいたがか?」
「……行ってない」
心が真剣な表情で問うと由香里は首を横に振る。
これを聞いていた澪次達は驚いたように顔を見合わせる。
記憶置換をつかったのにもかかわらず、変化がないのはおかしい。
「ねえ、レイくん」
「ちゃ、ちゃんと使ったよ? でも、気力で吹き飛ばしたのかな」
つぐみが隣にいる澪次に声をかけると彼はあわてながらも言い、腕を組んで悩みだす。
「こんなときに、アルさんがいてくれたらわかるんだけどな」
「あら、他にもわかる人はいるじゃない♪」
秀久のぼやきに美桜が反応してにこにこ笑顔で言った。
「悠さんは最終手段で…」
「僕もそれには賛成かな…」
青ざめながら言う秀久の発言に澪次は苦笑いしながら賛成した。
ここまでおびえさせるほどのなにかが悠にはあるようだ。
「ところで、お姉ちゃん」
「なーに?」
つぐみが美桜に振り向いて声をかけると、彼女は笑顔で返答する。
狼の耳がでていたら、それはもう嬉しそうに動いていただろう。
「気力で記憶置換ってどうにかなるものなの?」
「ん~……それそうおうの霊力をもってる人なら可能だろうけど……普通の人には無理かしらね」
つぐみの疑問に美桜は笑顔で答えていく。
だが、それゆえに心の状態はどういうことなのか、ますます疑問が残っている。
「記憶を置き換えても……ね」
「そんな不思議なことも起こるんやね~」
光一は顎に手を当てて思案し、深紅は目をほそめて呟いた。
「ここは候補生と人と共同する為に設立された者が集う場所だから、そんなことが起きても仕方ないがのう」
「裏は候補生と妖怪が人と共同していけるようにするための学園だからね~」
玉藻がつぶやき、明晴はお札を整理しながら言う。
候補生とは、人を襲う妖怪などを始末するもの達のことを言うのだ。
「ところで、レイくん……吸血衝動大丈夫?」
「ん~……ちょっとキツイかな」
つぐみが問いかけると彼は苦笑しながら答えた。
吸血種にはさけて通れない衝動がある、それは吸血だ。
人の血をすすることが彼らの食事といってもいいのだろうが、中にはそうしなくても大丈夫な種も存在している。
まあ、そういった種はマレであるためそうそうお目にかかれないといわれている。
ちなみに澪次は吸血衝動が強いほうである為、辛いのだ。
それを押さえる為の薬は用意されていたりもする。
一つはタブレット・もう一つは血液パックで補給すること。
まあ、どれも合わないという種も存在することもあるので、確実とはいえないのが現状だ。
「まあ、これがあるから……大丈夫だけどね」
「無理したら、ダメだよ?」
そう言ってタブレットを見せるとつぐみの表情が曇る。
美桜はさっと携帯をとりだすと、ある場所へとメールを送っていた。
届け先はいわずもがな、彼の主である姫様だ。
彼女なら、吸血衝動を抑えることができるものも知っているからだろう。
「はーい、プリント配るよ~♪」
まみの声が響くと同時にプリントが次々と、生徒達に届けられる。
それを見て目を輝かせるものや、さわぐものそれぞれだった。




