第10話
つぐみ達が教室に入ると、すでにそこには仲間が座っていた。
つぐみはその姿を見るなり嬉しくなり、秀久から離れてそちらへと向かう。
「久遠くん、深紅ちゃん! おはよう♪」
そう笑顔で声をかけると、二人は振り向いて笑みを向けて、手を振る。
もう一人は残念ながら一緒ではない。後輩だから、そうなるのは仕方ないだろう。
「おはようさん、つぐみ」
「はよ、つぐみ」
と、笑顔であいさつを返す。
先に挨拶したのは、水色のふわふわロングヘアーの女性だ。
瞳はスカイブルーで綺麗にみえて、でるところはちゃんとでてくびれもきゅっとしまっている。
つぐみにとってあこがれの姿をそのまま再現されたといってもいいほどだ。
そんな彼女の名は月神深紅といい。
彼女も先祖がえりなのだが、幾分彼女の方がつぐみ達より、血が濃いようだ。
もう一人は少年で、秀久の良き相談相手ともいえる頼もしき相方でもある。
名は久遠光一といい、身体付きは平凡の男性とはちがいがあるため、いろいろハンデが大きい。
彼も先祖がえりで、つぐみ達とはちがい、西洋の人外の血をひいてる。
「二人とも、終わったんだね♪」
「ああ、まあな」
「それほど、てこずることやなかったしな」
にこにこ笑顔のつぐみに微笑みを見せながら話す深紅と光一。
「ふふっ……ヒデくん、もっとしっかりしないとダメよ~?」
「うっ……わかってますよ」
その光景をほほえましげに見つめる美桜の隣で秀久がおり、うらやましそうに見ていたのだが。
美桜にいわれて、秀久は苦虫をかんだ顔で頷いた。
「……(とはいってもな……つぐみに出会うまでは感情がよくわからなかったからな)」
「あんまり、おもいつめないようにね」
ぼんやりと考えごとをする秀久を見てため息をつく澪次。
彼は光一のつぎに秀久の相談相手でもある少年だ。
「そういえば……アルさんは、まだこれないの?」
「ああ、姫もいろいろと準備があるからね」
美桜の問いかけに、澪次は苦笑しながら答える。
どうして、美桜が彼の事情を知っているかといわれれば、母つながりだとしかいいようがないだろう。
「そう……残念ね~」
「まあ、機会があれば、また会えますよ」
本当に残念そうな美桜に澪次が苦笑いを浮かべながら告げる。
それを聞いて笑みを浮かべるとつぐみの方へと向かった。
「おはようなのじゃ、皆の衆!」
「あんまり大きな声でいうなよ」
扉がひらいた途端に玉藻の声と明晴の声が響いた。
視線を向けると明晴にしがみついた玉藻がいた。
それにいっそ嫉妬のまなざしがくわわったのは、玉藻の美しさゆえだろう。
「???」
「由香里ちゃはわからなくていいぜよ」
この光景に不思議そうに首をかしげる由香里に心が苦笑しながら言った。
まあ、こちらにも嫉妬のまなざしが多くきていたりするのだが。
つぐみや美桜や玉藻ほどではなかったりする。
「オーラが変でスね?」
「そうですね、でも……なんででしょうか」
緋華の呟きに煉介が反応して同意するが、このオーラはなんによるものなのか理解していなかった。
「はい、みんな、席についてね~」
「俺の愛は永遠に不滅なんやー! 本気で愛してるんやで!」
と、そこへスーツ姿のまみが入ってきて教卓へと向かおうとしている。
その後ろから大輝がついてきており、必死にアピールしていた。
「あいつは、また」
「……あ、あはは」
「うふふ♪ いいわね、青春って」
その様子に頭をかかえる秀久と苦笑いするつぐみとにこにこ笑顔で見ている美桜。
三人の反応はそれぞれだった。
「飽きもせずにようやるわ」
「まあ、それがあいつなんだろうぜ」
呆れた様子の深紅が呟くと光一は苦笑を浮かべていた。
あまりにも不憫そうな光景なので、秀久にほろりと同情感がよぎる。




