ただ、そこに辿り着くことの難しさ 其の四
「なるほど、あんた、私と同じ『みえる』奴だったのか。いや、先の件で後天的に覚醒したのか?」
桜沢は口元に指を当て、視線をはずしつつなにやら呟いている。
「おい、どういう意味だ。説明してくれ」
「まぁ簡単に言えば結界みたいなもんだよ。かなり簡易なモンだけどね」
「冗談……ではなさそうだな」
「そうやって簡単に信じてくれるところをみるとやっぱりループさせられたみたいね。『あれ』は『迷い仏』っていう呪法でまぁ素人が使用してもそれなりに効果があるやつ。設定がおおまかになってしまうのが欠点だけどね」
結界やら呪法やら普通なら絶対信じないような単語を並べられてはいるが現にそういう体験をしてしまったのだから信じるしかない。ちょっと現
実感はないけど。夢ではないか、そんな現実逃避的な思考すら浮かんでくる。
「なんで俺はその結界のフィルタに引っかかったんだ?」
こいつのいうように俺がもしそういう『モノ』がみえる人だとしてこいつも同じように弾かれるのではないだろうか。
「さっきも言ったけど設定がおおまかだからね。『そういう』素養のある人及び『そういう』モノは全部NGで設定しているのよ。やってる活動が活動だけにね。一応の用心ってとこ。憑かれた奴にいきなり来られても困るし」
という事はこのクラブは心霊現象によく関わるということなのだろうか。
「じゃあお前は?」
「玄関の鍵と一緒よ。開け方があるってこと。まぁそれは後で教えるわ」
桜沢は頭を掻きながらあきらかに面倒臭そうに答える。
「今日はとりあえず見学でしょ?部室で活動内容について詳しく説明するら……」
そう言いながら桜沢は右手で部室の扉を開けつつ、俺の方を向く。左手差し伸べ、微笑みながら一言。
「あらためて、『民俗学研究部』へようこそ」