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アクマ召喚

作者: 山田裕子
掲載日:2026/08/25

召喚陣が光った。

その場にいた者たちは、固唾をのんで見守る。

瘴気がひどく、魔獣も大量に発生するこの国は、最後の手段として聖女召喚を行った。

それは、この国の魔術師たちが総力をあげて呼び寄せたものだった。

そのはずだった。

まぶしい光が収まり、召喚陣の中にいたのは、さえない中年男。


「なんてことだ! 聖女召喚は失敗したのか?」


そこで王冠を頭にのせた人物――この国の国王であろう男が叫ぶ。


「いえ、完全に失敗ではないのでは?そこに人がいますし。」


「しかし我々が呼んだのは、聖女であって、こんな貧相な男ではない!」


「ずいぶん失礼な言い草ですな。久しぶりに呼び出されたと思えば、人違いだとは。」


貧相な男はしゃべった。


「私は、安心グループの営業課長、アクマと申します。


この召喚陣には、聖女ではなく、セールスを呼び出すと書いてありますよ。


『せ』しか合っていませんね。誰が書いたんですか、この召喚陣。」


おそるおそる手を挙げた魔術師がいた。


「忙しかったので、ついうっかり。」


「うっかりじゃないだろう!それでも王宮魔術師か!」


内輪もめだ。

筆頭魔術師らしい老人が唾を飛ばして、怒っている。


「あんな悪筆の奴に召喚陣をかかせるから......。」


「誰も確認しなかったのか。」


そんな声も聞こえてくる。


「せっかく呼び出されたのですから、何かお困りでしたら、お役に立てますよ。


どんなことにお困りですか?」


セールスマンがセールスを始めた。


「実は、瘴気がひどくて......。」


「それでは、こちらのパンフレットをご覧ください。


瘴気浄化装置です。空気清浄機能も付いております。


電源がない?でしたら屋外用電源もお付けしましょう。


リース契約で、今ならひと月お試し価格です。」


パンフレットを見せてくる。

皆興味があるようで、覗き込んでくる。


「魔獣も大量に出るんですよ。」


「それなら安心警備サービス(株)の害獣駆除部門がお手伝いいたします。


魔獣一体につき、こちらの金額で処理いたします。


サービスパックにご加入いただくと、何体でも上限数まで同じお値段でお得ですよ。」


「魔獣と闘わなくて済むのか!」


嬉しそうな声が上がった。


「ついでに、結界も何とか......。」


「そちらは、安心警備サービスの結界セッティング部門にお任せください。


結界の広さによりますが、24時間対応のアフターサービスまで含めてこのお値段です。」


アクマを呼び出した連中は、目を白黒させている。

聖女を呼び出したはずが、様々な商品のセールスをされている。


「聖女の召喚には失敗しましたが、これで目的は果たせるのでは?」


「契約書をよく読んでみないと。」


などとこそこそ相談している。


「ご心配なく。当社は、誠実、迅速、がモットーの安心グループです。

必ずお客様に安心をお届けいたします。」


アクマはまた新しい顧客を開拓できて、ホクホクである。

安心100年パック契約が結べれば、特別報奨金が出るかもしれない。

久しぶりの召喚に戸惑ったが、悪魔はころんでもただでは起きないのだ。

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