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55.ID:KokT_6mR 02:47
「う、ウワァァァアアア!!!」
幽霊の発したカタコト言葉にゾアっと悪寒が全身に広がる。俺は情けない声で叫んでBとCを見捨てるように幽霊とは正反対の方へ走り出した。幸いにもその悲鳴が【逃げろ】の合図の役目を果たし、BとCも悲鳴に体が反応して、走り出した俺に続くように全力で逃げる。
すると、さっきまで静かで無人だったはずの獣道では、両脇の草むらから無数の白い手が伸びてきて逃げる俺達を掴もうとしてきたんだ。
「ウワァァァアアア!!!ウワッ、ウワァァァアアア!!!」
逃げることしか頭にない俺達は、とにかく叫びまくり掴まれないように必死にかわしながら来た道を走り抜ける。
嫌だ、死にたくないって俺は半泣きになりながら、体力の限界に悲鳴を上げる足を止めずに駆け抜けていたのを今でも鮮明に覚えている。あの時にもしも草むらから伸びている手に掴まれたら、きっとここでレポも書けなかっただろうな。
56.ID:Qwe1xP9A 02:47
一気に嘘臭くなったな
57.ID:KokT_6mR 02:50
嘘だと思ってくれても構わない。実際こんな経験、二度とないだろうし、あの時の事はパニックによる幻覚だったのかなって思う事もある。
走り続けていく内に茂みから手は見えなくなり、向かう道中あれだけ長く感じていた獣道もあっという間に駆け抜け、俺達はハザードランプが点滅する車まで帰って来れた。
でも誰もがパニックになってるからさ。一息つくこともなく慌てて車に乗り込んで
「早く早く早く!!」
って、後部座席からCに車を走らせるのを急かしたんだよ。
こういうのって何故かエンジンがかからなくて幽霊の襲撃は続くものだと思うじゃん?車は何も苦戦する事なくエンジンがかかって、法定速度をガン無視した速さでIトンネルへ突入したよ。みんながみんな、目がガンギマリで心臓をバクバク鳴らして、この爆走を止める奴なんていなかった。
58.ID:KokT_6mR 02:53
かなり危険な運転はしてたと思うけど深夜というおかげで、俺達以外の車に遭遇する事はなく迷惑をかける事もなかった。Iトンネルも抜けて山を降りていくと、人の手によって生み出された街の照明が見え始め、その時は物凄く救われた気分になったな。
最寄りのコンビニに到着すると、俺達は車から降りて大きく腕を伸ばして深呼吸をする。コンビニ前でタバコを吸う輩が「何やってんだコイツら」って感じの目で見てたのは気付いていたけど、人気がある場所に着いて漸く恐怖から解放された事に、とても安心したんだ。
強張っていた筋肉の力は一気に抜けて、其々の大汗まみれの顔を見たら、良い歳した男達なのになんて情けないんだと笑いあった。
59.ID:UZ1p-h3dQ 02:54
koeeeeee
60.ID:j7kT_2q4s 02:54
まぁなんだ。無事に帰って来れて良かったな
61.ID:mJ7hT3rD 02:55
釣りにしてもそこそこ楽しめたやで
62.ID:KokT_6mR 02:56
終わりそうに見えるけどもう少し続くぞ。
その後俺達は時間をかけて落ち着きを徐々に取り戻していき、気がつけば朝の5時を迎えていた。
若干日も登り始めていて街を明るく照らし始めている。なんていうか、太陽を見た瞬間、真っ暗な夜が終わりを迎えたんだと心底ホッとした気持ちになれた。
Cは俺達を家まで送ってくれたんだけど、車内で誰一人黒低村の話をする事はなかった。みんながみんな、今日の事は忘れようと思って、口に出さなくとも勝手にタブーとして扱われた。
家に着いて車から降りると直ぐには中に入らず、Bを乗せた車に俺は姿が見えなくなるまで手を振り続けた。一緒に恐怖体験を乗り越えた熱き友情がそこにあったからだ。
見送り終えて家に入ると、軽くシャワーで体を流して直ぐにベッドへ横になる。あまりにも体と精神状態が限界だったのか、横になって1分もしない内に深く眠りについた。
黒低村で見たあの幽霊が夢の中で現れるんじゃないかって怖さはあったけど、その日に見た夢は思い出せないぐらい、どうでもいいものだったのだけは覚えている。
その後、俺達は連絡をする事なく二週間が経とうとしていた。
黒低村の事をすっかり忘れ、いつものようにオカ板を巡る俺の元へ一件の電話が寄せられる。
『Cの母です。息子が事故で亡くなりました』