第29話 冒険者ってそもそも何だよ……職業?
苦しさの出口がない。
ルロイへの『好き』が苦しい。
なんでだろう。
苦しいのにルロイを好きな気持ちを手放すことができない。
なんでだろう。
いまだにルロイのことが好きで好きで仕方がない。
会いたい、声が聞きたい、触れたい、一緒にいたい。
知らなかった。
その気持ちがひっくり返ると、こんなに苦しい。
◇
目が覚めたら朝になっていた。
いつ眠ったのか記憶がないけど、目が覚めたってことは寝ていたんだろう。
「おはよう、はやく朝ごはん行かないと終わっちゃうよ」
メイリが声をかけてくれる。
「おはよう……」
朝ごはんなんて食べたくもなかったけど、いま起き上がらないと永遠にベッドから動けなくなる気がする。
リアはゆっくり体を起こした。
無意識にみつあみを編んでいることに気づいて手が止まる。
毎日みつあみにしていたのは、ルロイが好きだと言ったからだ。
それより前はどんな髪型が好きだったっけ……もう思い出せない。
ドレッサーボックスの中でルロイからもらった髪飾りが光る。
少し恐ろしくなってきた。
リアの日常はどれだけルロイに侵食されているんだろう。
◇
食堂にはほとんど人がいなかった。
1年生は講義の時間だし、2年生も研究で忙しいのかもしれない。
ルロイに会わなかったことにほっとして席についた。
皿の上のパンを見つめる。
ものすごくお腹が空いているはずなのに、全然パンを食べる気にならない。
普段は意識していないけど、食事をとるのにも体力って必要なんだ。
パンを無理やりかじると小麦の香りが口の中に広がった。
『うまそうに食うなあ』
ルロイの笑顔を思い出す。
あれはいつだったか、ルロイと2人でパンを焼いて食べた。
あの時はただルロイと一緒にいることが嬉しくて……
あ、ダメだ。
鼻の奥がツンと痛くなって、両目から涙がぼろっと落ちる。
他の学生もいるのに、こんなところで泣いちゃダメなのに。
食べかけのまま膳を下げてリアは食堂を出た。
泣いているところを誰にも見られたくない。
でも、部屋にはメイリがいるし、談話室や図書室には学生が……もしかしたらルロイがいるかもしれない。
屋外階段も案外人目につくことは去年知った。
どうしよう、ひとりになれる場所がない。
こうしている間にも涙はどんどんあふれてくる。
ルロイにだけは絶対に涙を見られたくない。
リアは逃げるように部屋に戻った。
◇
「え、え、なに、どうしたの?」
泣きながら部屋に駆け込んできたリアを見てメイリは戸惑っていた。
「ごはん食べられなかったの?」
リアは首を横に振る。
あ、でも結局パンをひと口しか食べてない。
「食べてない」
「どっちよ」
「だって、ルロイ、ルロイ、ルロイが……」
ルロイの名前を口に出すとさらに悲しくなってリアはしゃくりあげる。
「なに、ルロイがどうしたの?」
「ルロイ……もう会えない」
本当は今でも会いたくて会いたくて会いたくて仕方がない。
でも会ったからといって一体何になる。
ルロイと同じ道を行くことはできないのに。
「さっき普通に食堂にいたけど」
「それはルロイじゃない……」
「ええ……じゃあ誰だったんだ、あれ」
きっと何も変わらないんだろう。
ルロイは昨日と同じようにごはんを食べて、研究をして、たまに煙草を吸いに出て、お風呂に入って、眠って、そしていつか冒険に出ていく。
ルロイの答えを聞いて変わってしまったのはリアの世界だけだ。
「ルロイと何かあったの?」
「うん、あった」
空気のかたまりが詰まっているみたいに胸が苦しくてうまく息ができない。
でも体が苦しいあいだは全身に絡みついて離れない喪失感を紛らわせられる。
心がつらいのよりも、体がつらい方がいくぶんかはマシだ。
「とりあえず涙拭いて、お茶入れてあげるから一緒に飲もう、ね?」
メイリはタオルで顔を拭いてくれた。
リアは頷きながらメイリの優しさが胸にきてまた涙が出てきた。
◇
ルロイにふられた。
それだけのことを説明するのに長い時間を要したのは、リアが泣いてしまってその都度話が途切れるからだった。
それでもメイリはリアの話を最後まで聞いてくれた。
「それでね、クソジジイはめちゃくちゃ妨害カード使ってくるし、毎回サイコロ振る前にすごい時間かけて考えるしで全然楽しくなくて、本当にもう何してんだろうって感じで……」
リアは涙を拭うとすっかりぬるくなったお茶を飲んだ。
「それで昨日遅かったのか……ていうか、双六のくだり絶対関係なかったでしょ」
メイリはそう言ってカップに残っていたお茶を飲みほすとリアの頭を撫でた。
「つらかったけど、頑張ったね。ほら、ぎゅーしてあげるからおいで」
メイリの腕の中でリアは声を上げて泣いた。
去年もこんなことがあった。
あのときぼんやりと見えていた絶望の正体が、いまはっきりと現実として突きつけられてしまった。
ルロイはリアにルロイの世界を見せてくれた。
狭い田舎町しか知らなかったリアの世界を広げてくれた。
それはルロイにとっては子どもと遊ぶようなものだったのかもしれない。
遊びはもう終わりだから、暗くなる前に家に帰れと、そう言いたいのかもしれない。
リアの手を引いて同じ世界へ連れ出すほどにはルロイはリアのことを好きではなかった。
その手厳しい現実を直視するのがただ怖かった。
ルロイは一緒にいられるのはここまでだと、冒険はここまでだからあとはひとりで帰れと、つないでいた手を離した。
ルロイとの時間は、知らないうちにすり減ってなくなってしまった。
煙草に火をつける、ふたりの距離が少しだけ近くなる瞬間、手をつないだとき、体温と一緒に気持ちまで伝わってくるような感覚、やさしさに直接触れるみたいなルロイの魔法、煙草を吸っているルロイを見ながらただ横にいる時間、あまりにも無防備に嬉しさを全身で浴びてしまった。
だって知らなかった。
大好きだったやさしい時間が、牙をむいて胸を、心を刺してくるなんてリアは知らなかった。
メイリの肩は細くて、でもリアを抱きしめる腕はとてもあたたかかった。
◇
「午後から研究室で打ち合わせだけど、そんなんでいける? 大丈夫?」
リアがやっと落ち着いたころ、腕を解いてメイリは言った。
「ああ……」
リアはうつろに答えた。
そういえばそんな予定があった。
ドライツェンの魔法ババアの調査結果だってまだまとめられていない。
昨日からまるで時空がゆがんでしまったように現実感がない。
頭のなかに霧がかかっているみたいにはっきりしなくて、思考が全然つながらない。
浮かんでくるのはルロイのことばっかりで、そしてルロイの記憶は容赦なくリアを苦しめる。
いったいどうすればいいんだ。
こんなに苦しくて、苦しくて、叫び出したいほどなのに、なんでルロイのことを考えてしまうんだろう。
「しんどそうだし、他の日に変えてもらおうか?」
メイリの言葉にリアは首を横に振る。
「大丈夫、行けるよ」
「本当に大丈夫?」
心配そうに言うメイリにリアは頷く。
「来週にはブラスに中間報告しないとだめだし、それに……」
リアはぎゅっとこぶしを握りしめる。
「勉強くらいはしっかりやらないと、私、何しに学園に来たのかわからないから」
言った瞬間また涙がこぼれた。
◇
本当になんのために魔法学園に来たんだろう。
ただ地元を出たかっただけで、メイリみたいに魔法を使うことの意味を真剣に考えてたわけではないし、エーミール先輩みたいに魔学を研究して新しいものを生み出すことなんてできそうにない。
魔法の力を世の中に役立てたいとか、リチョウやクラムが言ってたような高い志があるわけでもない。
何もないな。
それは別にルロイがどうとかは関係ないはずなんだけど、ルロイと一緒にいる間は嬉しくて嬉しくて嬉しくてそれどころじゃなかったというか、こうやってルロイとの未来が断たれたいま改めて身につまされるような気がした。
ルロイは自分の魔法に降りかかった問題をちゃんと解決して、冒険の暮らしにもどっていくんだろう。
そのとき、ルロイの横にリアはいない。
あ、ダメだ。
ルロイのことを思い出してまた、空虚な苦しみにおそわれる。
喪失感と少しの後悔がまざったような空白が心に広がって身動きがとれなくなってしまう。
まるで抜け殻みたいだ。
こんな中身がない自分には、家のための道具みたいな、愛のない結婚がぴったりな気がした。
「お昼ごはん行くよ!」
部屋の隅で天井を見つめていたリアにメイリが大声で言った。
◇
チキン南蛮カレーは1、2を争うくらい好きなメニューだったのに、見るだけでうんざりした。
揚げ鶏の上にたっぷり乗ったタルタルソースがやけにグロテスクに見える。
「ひと口だけでもいいから、食べるんだよ」
メイリが心配そうに声をかける。
「この鶏とタルタルソースのゆで卵は親子だったかもしれない……」
「気持ち悪いこと言ってないでさっさと食べな」
殺されるために育てられた鶏と、殻の外を見る前にわけもわからず茹でられた卵。
哀れな運命のもとに生まれたこの生き物たちと自分がどれだけ違うというんだろうか。
ほかの生物の命を奪ってまで生きる意味が果たして自分にあるんだろうか。
朝ごはんもほとんど食べてないし、本当におなかが空いて仕方がないのに結局半分も食べられなかった。
膳を下げていたら回復魔法科の学生達に混ざってルロイが食堂に入ってきた。
ルロイはリアに気づくと少し気まずそうな顔をした。
リアは目をそらして急いで食堂を出た。
「大丈夫?」
追いかけてきたメイリの声にリアは頷く。
一体ルロイにどんな顔をしてほしかったのかわからない。
でも、あの表情を見るとやっぱりもう、答えは出てしまったという事実を改めて突き付けられた気がしてつらくなる。
何よりも、こんな状態なのにルロイの顔が見られて少し嬉しかった自分が本当に情けなくて仕方がなかった。
◇
もし、やり直しができたとして、どこからやり直せばこの未来を回避できたんだろう。
あのとき、より道せずにまっすぐ学園に帰ればよかった?
魔法ババアからコスモスを貰わなければよかった?
ふたりで出かけたとき、野盗を怖がらないでもっと戦ったほうがよかった?
エーミール先輩にフラフラしないで、ずっとルロイだけを見ていればよかった?
いや、どうしたってルロイはリアを連れて行く気なんてなかったのかもしれない。
最初から詰んでいたのかもしれない。
それなら、いっそ出会わなければ……地元を出ないで、外の世界なんて知らなければ、ルロイのことなんて知らなければ、こんなにつらい思いをすることなんてなかった。
でも
「リア!」
メイリの声でリアの意識は魔法理学研究室に戻ってきた。
「あ、ごめん、何?」
リアは机に向かい合って座っている魔法理学科の男子学生を見る。
「このグロスヒューゲル軍が村に来たのって、だいたい何年くらい前の出来事かわかる?」
リアのノートを写しながら彼が言った。
「ええっと、ババアがまだ少女だった頃って言ってたから……50年くらい前だと思う」
リアは深い木々に包まれた村を思い出した。
あの村でリチョウとワインを飲んだのがものすごく遠い日のように感じる。
「ドライツェンの戦いの10年前か……」
「ふもとの街の酒場で魔法の話をしたから、その時に誰かに聞かれてたんじゃないかって言ってた」
そう言ってリアはノートを指さす。
「いや、これって本当にグロスヒューゲル軍だったのかな?」
「あ、私もそれ思った」
メイリが同調する。
「どういうこと?」
リアの問いに彼が答える。
「このときのグロスヒューゲルはまだ小国だったし、軍備増強するにしてもそんな山奥までわざわざいるのかもわからない魔法使いを訪ねて行くのかなと思って」
「偽物だったってこと?」
彼は頷きながら言った。
「魔女狩り事件と手口が似てるんだ。時代はだいぶ古いけど」
魔女狩り事件──少年魔法使い略取誘拐事件の通称だ。
30年ほど前に発覚した事件で、魔法の知識がない辺境で子供の魔法使いを「魔法使い達で集まって新しい国を作ろう」等の言葉で連れ出して戦争中の地域などに売り飛ばしていた。
同じような事件は昔からあったけど、犯行が計画的かつ組織的に行われていたので話題になった。
連れ去られた魔法使いのほとんどは今でも行方がわからないという。
リアは横目でメイリを見た。
魔法使いがこのような事件の被害にあわないよう、情報が少ない村落部にも正しい魔法の知識を広めるにはどうすればいいのかがメイリの研究テーマだ。
すんでのところで助けられたとはいえ、似たような事件の被害者であるメイリはこの話を聞いてつらくならないんだろうか。
「それはないんじゃないかなあ……結局、ババアのことはあきらめて帰ったわけだし」
「まあ、それもそうか」
彼は視線をノートに戻した。
◇
窓の外は夕焼け空が広がっている。
昨日、ルロイと話をしてから、冒険に連れてはいけないと言われてからもう1日以上経ってしまったのか。
このままもっと時間が経てばルロイに拒絶されたことがどんどん現実になってしまう。
わかっている。
夢でもなんでもない、まぎれもない現実なことはもうわかっている。
違う道を、ルロイのいない世界を行かなくてはいけないことはわかっている。
そのことを思うと苦しくて、息が止まりそうになる。
この苦しみの正体は何なんだろう。
親の言いつけで結婚することが嫌なのか?
でもそれなら冒険に出る必要はない。
親とはぶつかるだろうけど、結婚は断ればいい。
万が一勘当されたとしても、地元はともかくドライツェンやグロスヒューゲルなら働き口はいくらでもあるだろう。
世界が広いことを知ってしまったのに、狭くて閉鎖的な田舎町に帰るのが嫌なのか?
別にルロイがいなくても世界を見て回ることはできる。
それこそエルフィ先輩みたいにひとりでも旅にでたらいい。
ルロイだって別に死んだわけじゃないし、今だってきっと同じ建物にいる。
卒業したあとも一緒にいることはできなくったって、同じ空の下にルロイがいることは変わらない。
じゃあ、何がこんなに苦しいんだろう。
ルロイに、もう会えなくなってもいいと、隣にいなくてもいいと思われたこと、ルロイの世界にリアは必要ないと切り捨てられた事実がリアを鋭く刺す。
たとえ昨日のことが夢だったとしても、ファンタジーな奇跡が起こって違う世界線に飛べたとしても、時間を巻き戻せたとしても、出会い方が違ったとしても、きっとルロイと一緒に行くことはできないんだろう。
夜が来るのが恐ろしい。
一昨日までどうやって眠っていたのか思い出せない。
目を閉じると勝手に頭がルロイのことを考えてしまって苦しくてのたうちまわりたくなる。
ルロイと出会うまえの自分に戻ることなんてもうできない。
心の中にルロイのための場所ができてしまっていて、昨日から埋まることのない空白がリアから楽しさとか嬉しさとかの感情を奪っていく。
いつのまにかあふれていた涙で窓の外の景色は見えなくなっていた。
◇
暗闇でリアは目を開けた。
やっぱり、眠ることができない。
目を閉じるとルロイとの思い出がエンドレスで浮かんできて叫び出しそうになる。
思い出すのは他愛もないことばっかりだ。
山で日々のことを話したり、森を歩きながら退屈しのぎのゲームをしたり、馬車に乗り込むときに足で踏段を作ってくれたり、人混みではぐれないように手をつないだり……リアはたまらなくなって両手で顔を覆う。
ルロイ名場面集が終わって珍プレー好プレー集にさしかかった時だった。
ベッドの中に何者かが入ってきた。
「きゃあ! 誰?」
「私しかいないでしょ」
そう言ってリアを後ろから抱きしめたのはメイリだった。
「メイリ……どうしたの?」
メイリは優しくリアの頭を撫でる。
「また、泣いてるんじゃないかと思って」
その通りだった。
昨日から、本当にどれだけ泣いたんだろう。
メイリは両腕で柔らかくリアを包むと話しはじめた。
「はじめてこの部屋に来たときのこと、覚えてる?」
腕の中でリアは小さく頷く。
クソ重い荷物を背負いながら、緊張してなかなかドアが開けられなかった。
「最初はさ、全然うまくやっていける気がしなかったんだ」
「ええ……なんで?」
「だって、強烈だったもん」
メイリはくすくす笑う。
「山を歩くのだってわかってただろうにヒラヒラのワンピースで来るし、なんかやけに渋いお土産を出してくるし……ガイダンスから戻ってきたと思ったらかっこいい先輩がどうのとか言い出すし、もうなんだコイツって感じだった」
優しくなぐさめてくれるのをちょっと期待してたけど、どうやら違うらしい。
「勉強もさ、できないできない言ってるわりには夜はすぐに寝ちゃうし、本当にこの子大丈夫かなって思ってた」
そんなふうに思われてたのか……確かにリアの一年次の成績は壊滅的だった。
リアの今があるのはカール先生のおかげだ。
「言ってるうちにルロイに出会って、恋してるところはすごく可愛かった。もう何も隠さないでただまっすぐ『好き』って感じで」
ルロイと聞いて少し身を固くしたリアをメイリは思いっきり抱きしめる。
「泣くなよお」
メイリの声がくすぐったい。
やわらかい腕から伝わってくる体温が、冷えた心を温めてくれるみたいだ。
「そういえば一緒に温泉にも行ったね。冒険の中でいろんな街に行ったけど、あんなふうに友達の家に泊まることってなかったから、すごく嬉しかったんだよ」
リアもメイリが地元に遊びにきてくれて本当に嬉しかった。
メイリも同じように思ってくれてたんだ。
また、涙が出そうになる。
「昼間に『何しに学園に来たのかわからない』って言ってたじゃん。私はさ、魔法の正しい知識をつけたいとか、卒研を通して過去にケリをつけたいとかそういうのもあるけど、学園に来ていちばんよかったのはリアと友達になれたことだと思ってるよ」
リアも、メイリと同室でよかった、友達になってくれてありがとうって伝えたかったけど、泣いてしまって言葉にならなかった。
メイリはずっと頭を撫でてくれた。
「ねえ、ルロイに会うまえのさ、小さい頃とかの、お気に入りだったものとか、好きなものって何だった?」
メイリが言った。
ルロイに会うまえに、好きだったもの?
リアの毎日はルロイに出会ってからすべてが変わった。
歴史学だったらきっとルロイ前とルロイ後で分けられるだろう。
雨が降る直前の少し湿った空気の匂い、温泉から上がったらいつも飲んでたフルーツ牛乳、お父様が仕事から帰ったときに買ってきてくれる知らない街のお菓子……あと、なんだっけ、確か、キラキラして、憧れが全部詰まってるみたいで、とっても素敵だった。
「ドライツェン……」
そうだ、オシャレで新しくて、それでいてどこか懐かしくて、素敵がいっぱいのドライツェンの街がリアは大好きだった。
「うん、じゃあ、もうすぐ屋台が出るから一緒に遊びに行こう」
リアが頷くと、メイリはもう一度リアをぎゅっと抱きしめた。
やわらかくて温かい腕に包まれて、いつしかリアは眠っていた。