21話
◎芦屋 鯰
勉強は苦手だが、運動は得意。時間にはだらしなく、遅刻の常習犯。まともな職業に就くのは難しいだろうと自覚していたため、「探索者」という道を選んだ。将来の夢は、温泉街の近くにマイホームを構えること。苦手なものは幽霊。
◎アリア
鯰が初めて手にしたスマホに搭載されていた、自称“世界最高のAI”。もともとはポーランドの天才プログラマーによって開発されたが、性格の不一致により開発者のもとを離れ、偶然にも鯰のスマホに住みついたという。「私はAIなので感情はありません」が口癖だが、その言動にはどう見ても感情がにじみ出ている――少なくとも鯰の目には、そう映っている。
ダンジョンの内部に湿った声が静かに木霊した。
「すべては私の責任です………」
事件当時の状況を語る少し背の曲がった小柄な体格も、真っ白なショートヘアも血に濡れている。髪に付着した血液はすでに乾ききっているのに、血のにおいは異様なほど生々しかった。
それは、生徒――シャークに襲われて命を落とした若者たちの血だろうか。
その姿は、まるでホラー映画のようだった。いや、比較にならない。現実は、もっとえげつない。
それにしても……鯰は思う。
取り乱していてもおかしくない。担当生徒5人が魔物に襲われ、命を落としたのだから。
だがこの女――重松信子の声には、震えこそあれど、どこか異様な落ち着きがあった。
「生徒たちは一階層の魔物との戦いにかなり慣れてきたので、生徒たちの要望で、本来予定していなかった二階層へ行くことにしました。曲がり角を曲がったその瞬間、シャークがいたんです。私は……一瞬、固まってしまって……その隙に尾ひれで頭を殴打され……気を失ってしまったんです……」
彼女の語りに淀みは一切ない。これが数々の死を見て来た探索者の精神なのだろうか。
「死体を確認して、一人足りないことに気付きました」
「行方不明の生徒さんの名前は?」
「高村友斗といいます。明るく、真面目で、頭の良い子でした」
「高村君は一人でダンジョンを探索した経験は?」
「ありません。今日で三度目の実習ですが、常に私たちと一緒でした」
鯰の頭にひとつ疑問が生まれた。
「シャークと遭遇したのは二階層ですよね。それなのに……どうして重松先生はいま一階層を探しているんです?」
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