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13話

芦屋あしや なまず

勉強は苦手だが、運動は得意。時間にはだらしなく、遅刻の常習犯。まともな職業に就くのは難しいだろうと自覚していたため、「探索者」という道を選んだ。将来の夢は、温泉街の近くにマイホームを構えること。苦手なものは幽霊。


◎アリア

鯰が初めて手にしたスマホに搭載されていた、自称“世界最高のAI”。もともとはポーランドの天才プログラマーによって開発されたが、性格の不一致により開発者のもとを離れ、偶然にも鯰のスマホに住みついたという。「私はAIなので感情はありません」が口癖だが、その言動にはどう見ても感情がにじみ出ている――少なくとも鯰の目には、そう映っている。


 


 東京都足立区にある舎人公園は緑と水に恵まれ、広がる空と多様な自然が楽しめる。敷地は現在約65ヘクタール。スポーツ施設、遊具、様々な広場、池などが整備されている。


 その中にある、少し場違いなほど無機質なコンクリート建築──それが探索者協会東京営業所。ダンジョンでの手続きなどを行うための場所だ。


「お待たせしました。芦屋鯰さんにはこれから初心者講座を受けて頂きます」


 窓口で「探索者許可証」を渡したところ、しばらくして戻ってきた職員のお姉さんにそう告げられた。


「………初心者講座なら前に一度受けましたけど」


 巨体の男が戸惑った声を出した。


「はい。ただし当ダンジョンでは三年以上の活動が無かった探索者の方には、規則などをもう一度復習して頂くために、初心者講習の受講が義務付けられています」


「なるほど………」


 芦屋鯰はダンジョン崩落事故により3年ほど昏睡状態だった。探索者になる時にした勉強の知識が今も残っているのかと聞かれれば──かなり怪しい。


「わかりました」


「それでは早速、会場へ向かってください。実は現時点で、もうすでに30秒ほど遅刻しています」


 地図と数枚の紙を受け取り、僕は急いで指定された会場へ向かった。廊下を抜けてドアの前に立つと、中から怒声が漏れ聞こえてきた。


「とっとと始めろ! なにモタモタしてんだよ!」


 ドアの向こうに広がるのは、講習会の会場──のはずだった。だが、その声に含まれる殺気立った圧に、僕は一瞬だけ足を止めた。


 扉を開けた瞬間、視線が一斉に刺さった。むわっとした熱気。焦げた油のような男臭さ。煙草臭もする。


 ざわり、と空気が波打った。周囲のざわめきが、明らかに「異物の登場」に反応していた。


 会場内にはざっと見て100人以上。


 若者の集団が前方に固まり、後方には年齢も体格もばらばらな人間たちが無造作に座っている。だが共通していたのは、どこかに傷を持つ、場慣れた目つきの連中ばかりだった。


 ──暴力の匂いがする。





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