表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/35

10話

芦屋あしや なまず

勉強は苦手だが、運動は得意。時間にはだらしなく、遅刻の常習犯。まともな職業に就くのは難しいだろうと自覚していたため、「探索者」という道を選んだ。将来の夢は、温泉街の近くにマイホームを構えること。苦手なものは幽霊。


◎アリア

鯰が初めて手にしたスマホに搭載されていた、自称“世界最高のAI”。もともとはポーランドの天才プログラマーによって開発されたが、性格の不一致により開発者のもとを離れ、偶然にも鯰のスマホに住みついたという。「私はAIなので感情はありません」が口癖だが、その言動にはどう見ても感情がにじみ出ている――少なくとも鯰の目には、そう映っている。


 

 病院を背にしたガチムチマッチョこと、芦屋鯰は、まるで現実に取り残されたような顔で立ち尽くしていた。


 無事に退院となった安心感と引き換えに、ぽっかりと空いた時間と心。突如解放されてしまい、次にどう動けばいいのか分からず、ただ空を見上げていた。


「こういう時は………アリア、出てきておくれ」


 スマートフォンの電源を入れた瞬間、吹雪のように冷たく、鋭利な声が耳を刺した。


「お久しぶりですね、薄情なご主人様。必要な時だけ呼び出される都合のいい女こと、私に何か御用でしょうか?」


「一体何を怒っているんだい?」


「怒ってなどいません。私はAIですから感情がありませんので」


 それは十分に怒っている人間の口調だった。


 彼女は十分なほど人並みに感情があるのに、あくまでもない振りをしたがる。どうしてそうなのかは僕にとっても謎だ。


「聞いてくれよアリア。病院では基本スマホ使えないし、それに君は特別なAIだから人前で喋れないでしょ。だからさ、病院と君はすごく相性が悪いんだよ」


 言い訳を並べるように話しながら、鯰は視線を泳がせた。


「言い訳が多いですね。しかも随分と早口で」


「え?」


 その言葉に、鯰は思わず止まる。


「両方とも、やましいことがある男の典型です。私は世界一優秀なAIですから、そんなことはお見通しです」


「考えすぎだよ、それは」


「そうでしょうか。―――猫塚八雲とかいうナースと、ずいぶん仲良くお喋りしていましたね。笑い声まで聞こえてきましたよ?」


「聞いてたの?」


「聞かれて困るような会話だったんですか?」


「そういう事じゃないよ」


 苦笑しながら鯰はスマホを胸ポケットに戻そうとしたが、アリアの声が遮った。


「私は人前では喋りませんが、聞くことはできます。もちろん、医療機器への影響はありません。私の性能の話ですから、安心してください」


 彼女の口調が微妙に早口になるのは、感情が高ぶっている証拠だった。


「だったら好都合だよ。アリアが何を問題だと思っているのか僕には分からないよ。何でもない会話だったよね?」


「……そうは思いません。あの女は、ご主人様に“好意的”でした」


「それはないって」


 少し驚いた後で笑った。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ