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男の娘武将隊〜桶狭間に舞い降りたTS女装軍師メグミ〜  作者: 紫波吉原 ※5000PV超え感謝
第2章 大高城の直虎、義元、そして家康
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第30話 未来の天下人と連れション

なんとか大高城に入城できた恵たち。あてがわれた兵舎で濡れたセーラー服を着替え、まもなく開かれる軍議に備える。

 深い紅色――ワインレッドのボディコンスーツに身を包んだ恵がぷるぷると震えだす。半刻後の軍議を前にして、唐突に襲ってきた内臓の震えに身を(よじ)っているのだ。タイトなスカートが太ももを締め付け、余計に焦燥感を煽っている。

 恐怖で震えてるんじゃなくて、膀胱が震えてるって——どんな戦国よ。


 「姫、どうされました? やはり体調が……」

 心配そうに顔を覗き込む直虎に、恵は半泣きで告白した。


 「……お、おしっこ」

 「……え?」

 「おしっこ! 漏れる! 限界なの!」


 直虎は一瞬きょとんとして、「……この小屋には(かわや)がないので、外の物陰で……四郎、姫を案内しろ!」と答える。


 恵はパッと顔を上げて、「直虎くん、四郎さん、一緒に連れションしよ♡」と提案する。

 「連れ、ション……?」直虎は眉をひそめる。


 恵は「立ちションってことよ。3人で並んで仲良く。男の友情って感じしない?」とニコニコしながら言う。四郎は「承知」とばかりコクリとうなずく。


 直虎は「そ、(それがし)は無理無理……ご遠慮します!」とバッと立ち上がると、ぷりぷりと肩を怒らせ、逃げるように屏風の裏へと消えた。


 恵は「なに、あれ?」と首を傾げたが、四郎は無言で両手を広げ「さあ」と肩をすくめる。


 「ま、とにかく限界。四郎さん、行こ」



 恵と四郎が小屋の戸を開けると、目の前に4人の黒い甲冑を着た若い武者が整列していた。

 4人の先頭――いかにも“リーダー顔”の男が、さっと膝をついた。残りの3人も、まるで稽古の型のように同時に続く。

 「あなたたち……遠江軍団の? どうしたの?」


 「我ら、百人隊の隊長にございます。女軍師様とともに戦えること、光栄の至りに存じます!」

 「隊員一同を代表して、ぜひともご尊顔を拝して、この感謝を伝えたいと……」


 男たちは、セーラー服から一転、艶やかなワインレッドの衣装をまとった恵を、崇めるような目で見つめた。


 「白ではないのですね。深紅の、なんと美しい……」

 「変幻自在の彩。まさに『虹色の女軍師』」

 「それだ!『虹色の女軍師』さまだ!」


 賛辞が、波のように押し寄せるが、恵は嬉しいより先に、焦った。下腹が、容赦なく主張している。

 恵は「……あっ……ありがとう……でも、いまちょっと急いでいて」ともじもじと股を合わせる。


 そのとき、一人が四郎に声をかけた。口調と声色が親しい間柄のそれに変わる。


 「なあ、鈴木。兄上たちはどうした?」

 四郎の瞳が、ほんのわずかだけ曇った。そして、首をゆっくり横に振る。


 男はすべてを読み取り、唇を噛む。

 「……そうか。俺の弟も義元様の馬回りについていたんだが……戻ってこない」


 別の男が沈痛な面持ちで悔しそうに吐き出す。

 「こいつ、本当は義元様の馬回りだったんだ。弟に代わってやったんだぜ。『子が生まれたばかりだ』って」


 弟の話をした男が、拳を握りしめた。

 「俺は……馬回りのほうが安全だと思ったんだ。余計なことを……しちまった」

 言葉が、そこで途切れる。涙を堪える喉が、ごくりと鳴る。


 四郎は何も言わず、ただ、その男の肩を軽く――ぽん、と叩いた。その一回が慰めであり、弔いであり、そして生き残った者の印だった。

 堰を切ったように、今度は別の男が四郎に、遠江軍団が経験したことを語り始める。四郎はうんうんと黙って話を聞いてやる。


 恵は股を押さえながら、もじもじがますます激しくなる。膀胱の限界が近い。


 「あの、四郎さんとお話は続けてかまわないんで……ちょっとワタシ、小屋の裏に失礼しますね!」


 恵は頭を下げると、小走りで駆け出し、小屋の裏側に回ると、壁に向かってスカートとパンティーを一気に膝まで下ろして用を足し始める。


 「はぁ……間に合った……」

 恵の顔は恍惚としている。夕暮れの風が、ほてった肌を心地よく撫でていく。

 その時、隣に誰かが無言で立った。

 恵はちらりと横を見る。さきほど義元に蹴られていた、あの少年兵だ。

 少年兵は水色に染めた直垂(ひたたれ)の裾を器用にずらすと、それを取り出し、恵に挨拶するでもなく用を足し始める。その自然な動きと、恵への無関心さが逆に異様だった。


 恵は「君、さっきの……大丈夫だった?」と声をかける。

 少年兵は恵の方を見もせず、淡々と答える。「さっきは……ありが…とう……僕は三河の松平元康……」


 「えーーー!」

 恵は驚きのあまり、身体がビクッと跳ねる。危うく元康の方に飛沫が飛びそうになる。


 元康は動じない。ただ、じっと恵の下半身を見つめている。瞳の奥はからっぽなのに、底だけが深い。


 「……案外……小さいね」

 恵は「え? ワタシ、君より全然背高いけど……あっ」と言いかけて、元康の視線の先を追い、察する。

 153センチと小柄な元康。しかし「そこ」だけは圧倒的だった。恵は完全に気圧される。

 

 (で、でも、女装子は、そこをいかにコンパクトにまとめるかが美学なのよ……!)

 「ま、まぁ……ナニの大小はさておき」と恵は気を取り直して言う。「連れションしたら友達だから! ね!」

 元康は「……トモダチ……僕と……」と空虚な無表情で壁を見つめながら反芻する。

 恵は戦国オタク脳センサーを回す。——井伊家は後に徳川家康に仕えることになる。だったら、今のうちに顔くらい合わせておいたほうがいいよね。この子、結構問題アリっぽいし。


 恵は用を足し終えると、元康も終わったことを確認して、その腕を軽く引っ張る。

 「ちょっと小屋寄っていかない? 直虎くんたちに会わせてあげるから!」

 元康は無表情のまま、されるがままに恵に引っ張られていく。

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