第26話 夜伽命令と男の娘大告白
意識を失った恵だが、四郎の適確な処置で、直虎のマウスツーマウスの直前で目を覚ます。君は誰とキスをする?
恵と井伊直虎の甘々なやり取りを見て、静粛に整列していた遠江軍団から「クスクス」「プッ」という笑い声がところどころで起きる。
今川義元も閉じた扇を口に当て、「クククッ」と笑いを漏らす。それを見た朝比奈と直虎の父直盛も釣られて追従笑いをする。
緩んだ空気が軍団に広がり、笑いの中心にいる恵は「アハハ、なんだかわからないけど」とウィッグの頭をポリポリとかく。ただ一人、直虎だけが顔を真っ赤にして背を丸めている。
義元の目がキラリと怪しく光り、薄ら笑いをしながら「戦場をこれだけ甘口にされるのも、兵に死ねと命令する立場としては困ったものよの〜。のぉ、直盛」と扇をビシッと向ける。
髭だらけの直盛はハッとして「はっ、申し訳ありません」とシャキっと姿勢を正し、「お前たちなにを笑っているのだ!」と遠江軍団を一喝する。軍団は水を打ったように静まり返る。
義元は不気味なまでの笑顔で「いいんじゃ、いいんじゃ、みなのものも楽しむが良い」と朗らかに言うと、くるっと蛇のような顔つきになり、「…殺し合いを!」と冷酷に告げる。
遠江軍団5000人の体温が1度ずつ下がったかのように、大高城の門前は突然寒さを感じるようになる。
義元はパッと扇を開いて、「ワシも楽しむことにしようぞ。城に入ったら、軽〜く軍議を済ませて、夜のお楽しみじゃ」と言い、上半身を起こしたセーラー服の恵にツカツカと近づくと、扇で透けて見えるブラジャーの線をツツツッとなぞり、満面の笑みで言う。
「メグミよ。夜伽を命じる」
◇
夜伽を命じる、夜伽を命じるーー。5000人の甲冑に反響したかのように、直虎の耳には何度も義元の命令が繰り返し聞こえる。
プチンと頭の中でなにかが切れた音が聞こえると、直虎は屈めていた身体を山猫のようにバッと伸ばし、義元に飛びかかる。
「て、てめぇ!姫になんて言った!」
直虎の手が義元の首に伸びる寸前、父の直盛がザザっと踏み込んで、義元の前で立ちはだかると、「フンッ」と気合一発、素手で直虎の手を払う。
その直後に鈴木四郎が後ろからひしっと直虎の顔に腕を回して口を塞ぐ。
「んーんー!」
直虎は暴れるが、鬼の形相の直盛は拳骨を握り、「この愚か者め!」と叫んで、拳を腹巻草摺の腹にそのまま叩き込む。拳の力が鎧を突き抜け、直虎の内臓を抉る。衝撃は肺にまで達し、息が一気に抜けていく。「グフッ」と身体を曲げる直虎に、周りの兵たちがワラワラとのしかかる。
義元は「キャハハハ。想像通りの見事な動きじゃのぅ、遠江のものたちは」と嘲るように笑う。兵たちがサーッと引くと、猿轡をされた直虎が転がされて「うーうー」と唸ってる。四郎は申し訳なさそうに少し離れたところでそれを見る。
老参謀の朝比奈が眉をひそめて「僭越ながら、義元様。『白き女軍師』は大功労者ですぞ」と忠言する。
義元は機嫌良さそうに「甘い、甘いぞ、朝比奈、老いたか? よく考えてみろ。メグミは別に今川に忠義があるわけでは無い。たまたま今川の本陣に現れただけじゃ。織田に捕まれば、ホイホイと信長に尻尾を振るだろうよ」と言う。
朝比奈は「確かに、それはごもっともでござる。この女を信用するのは危険です」と言い、「しかし、なぜそれが夜伽に?」と問う。
義元はそんなことも分からないのかと言わんばかりに片眉を上げて言う。「さっき、井伊谷とかいうちんけな国衆ごときに、メグミが壊されそうになったじゃろ」と直虎に視線を送る。直虎は「クッ」と目を伏せる。
義元は開いた扇を高く上げてから、パッと離す。扇が花びらのようにひらひらと地面に落ちる。
義元はそれを右足でグリグリと踏みつけ、光悦とした表情になり、「壊される前にワシが先に縊らんといかんじゃろ」と言い放つ。
義元は再び恵の前に歩き、手を伸ばすと恵の顎をくいと上げ、目が顔から落ちそうなくらいの笑みを浮かべて、「メグミ、そなたに夜伽を命じる!」と告げる。
間髪を入れずに恵が答える。
「うん、いいよ。オッケー」
「な、なんと言った?夜伽を命じたのじゃぞ!そうか、夜伽の意味がわからんのか?」
恵は「分かりますよ。エッチするってことでしょ。もともと今夜、発展場で誰かとハッテンするつもりだったし」とケロッと言う。
義元が逆に動揺して「ワ、ワシの夜伽は普通じゃないぞ!縄で縛ったり、普通は使わない穴を責めたり」とアタフタと説明しだす。
恵は「ワタシは全然大丈夫ですよ。でも、義元様はいいんですか?」と聞く。
義元は「な、なにがじゃ?」と緊張する。猿轡をされた直虎もゴクリとつばを飲み込む。
恵は「ワタシ、男の娘ですけど」とあっさり告白する。
遠江軍団5000人が一斉に同じセリフを言う。
「えーっ?! オトコー?!」
次回、恵の反撃のターン!第27話 女装蜂のヒト刺し。5月8日夜公開します。絶対読んでね!




