第24話 印象派 モネ「日傘を差す女」
青年武将は井伊直虎であり、井伊直盛の「娘」であることが義元の口から明かされるが、恵はその時、気を失って、肝心の「直虎が女」であることは聞いていなかった…
意識を失った恵は夢の中で、黄色い花が咲き乱れるなだらかな芝生の丘に立っている。風が草花を揺らす。恵の眼下には夕日を反射してキラキラと光る浜名湖が広がる。
背後から高い声で「メグミさん、そろそろお茶にしましょう」と声がかかる。恵が振り返ると、そこにはまるで絵画から抜け出したような光景が広がっている。
白い雲が流れる青空の下、黄色い花たちが風にそよぐ緑の丘の背に、純白のドレスをまとった女性が緑の日傘を差して優雅に立っている。
ドレスの裾がふわりと舞い、緑の日傘は夕日を柔らかく遮る。ヴェールが顔を隠し、束ねた髪を上品に揺らす姿は、まるでヨーロッパの貴族の娘のような気品を放つ。女性の隣の奥には、麦わら帽子をかぶった少年がちょこんと立っている。
野原を渡る風と陽光のきらめく空気がまるで時間が止まったように印象的だ。光と色が細かい粒や筆触分割で描かれたかのような光景に、恵は目を輝かせ、「モネの『日傘を差す女』みたい!」と感嘆の声をあげる。
女性が手招きをし、恵は近づいていく。恵はヴェールで秘された顔を見て少しだけ驚く。
「井伊直虎…」
直虎は微笑むと「メグミさん、冷める前にこちらへ」と手を差し伸べる。
夢の中で違和感を抱かない恵は「お茶いいね! 抹茶かな?」と聞くと、直虎は「美味しいダージリンティーとスコーンをご用意してますわ」とニッコリする。恵は「紅茶もいいね!」と差し伸べられた手を握る。
手をつないだ2人が白亜のヨーロッパ風の邸宅へ歩いていくと、空いていた恵の左手を、小さな手がそっと握ってくる。
恵は「日傘を差す女」の左下に描かれていた麦わら帽子の少年のことを思い出す。
恵は手を優しく握り返して、左を向く。そこには、麦わら帽子の少年ではなく、信長と一緒に居たぎこちなく黒甲冑を着ていた少年の顔があった。
だが、夢の中で、この少年は、メイクをして、可愛らしいフリル付きワンピースをまとい、ロングヘアーのウィッグの上には白いベレー帽をちょんと乗っけて、モジモジしている。
恵は「あっ、それ、ワタシのベレー帽…」と言ったところで、遠くから「姫ー!姫ー!」と呼びかける声が聞こえてくる。
次回第25話「目覚めは姫のキス?」5月6日夜公開します!




