第23話 俺は井伊直虎です!
ついに青年武将は井伊直虎であることが明かされる。戦国オタクの恵は…
今川義元から「井伊家では子にそんな教育をしておるのか?」と嫌味を言われた井伊直盛は髭を震わせ、青年武将と鈴木四郎に対して「直虎! 四郎! この面妖で無礼な女はなんじゃ?!」と声を荒げる。
恵は「このイケメン男子が井伊直虎?!やっぱそうだよね!直虎が女城主なわけないじゃん!」と興奮気味に言うが、直虎の手で口を塞がれているため、周りには「フガフガッ!フガフガァ!」としか聞こえない。
恵は思い出す。MHK(みんなの放送協会)の連続テレビ大河「女領主!井伊直虎」の放送時に、「直虎は女じゃない」と歴史研究者からの大ブーイングはもちろん、週刊誌でも取り上げられる社会問題となったことを。
戦国オタク脳センサーを動かすまでもなく、歴史クラスタでは疑いの余地なく直虎=男である。
しかし「あれっ?女説だと井伊直盛には息子がいなくて、娘が直虎って設定だったっけ、直虎が男だったら…」と引っかかりがあり、戦国オタク脳センサーを動かそうとする。
だが、センサーは動かない。なぜか? 窒息状態で脳に酸素が巡らなくなっているからだ。恵は「フガフガ!(苦しい!)」と手足をジタバタさせる。
◇
井伊直虎は恵の口を慌てて押さえていた。駿河、遠江、三河の今川領国において、義元の倒錯的残虐さは有名だ。
「白き女軍師」と持ち上げている一方で、そもそも小幡が直虎と鈴木四兄弟を護衛につけなければ、恵は雨中を重い荷物を持って一人で歩き、信長軍の落ち武者狩りに襲われていたはずだ。
今、義元が恵に好きなことを言わせているのも、倒錯を楽しみ、もてあそんでいるに過ぎない。その後の「刈り取り」に向けて…
直虎はゾゾゾっとうなじの後ろ髪が逆立つのを覚え、「姫は、俺が護る!この井伊直虎が!」と決意を新たにし、さらに力を込める。
◇
義元が笑いを堪えるように扇で口元を隠しながら、直虎に告げる。
「おい!井伊直盛の娘、直虎よ!」
「はい、なんでしょうか?義元様」と目を合わさずに答える。
「白き女軍師が落ちてるぞ」
「はっ?」と慌てて恵を見る。
恵はセーラー服から伸びた細い手足をピクピクさせて、目は白目を剥いている。口と鼻は直虎の手がすっぽりと覆っている。
「いけない!メグミ姫!しっかりしてください!」と叫び、ひしっと抱きかかえる。
朦朧とした恵が「おおー、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」とうわ言を言うと、直虎は「しっかりして!俺はロミ夫じゃありません!井伊直虎です!」と耳元で大声でがなる。
ロミオとロミ夫は第12話「リアル「花鳥図襖」老木の迷路」の伏線回収でした。ぜひ第12話も読んでください!
次回第24話 印象派 モネ「日傘を差す女」は5月5日夜公開です!




