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第12話 リアル「花鳥図襖」老木の迷路

信長は、恵を「白き妖女」としてロックオン。藤吉郎(秀吉)、前田利家、狩野永徳を連れて、その後を追う。恵は今川軍の5人の騎馬武者に護衛されながら義元本隊を追いかけるが、疲労もあり馬上の恵に睡魔が…

 雨は止んだが、霧が白く立ち込める桶狭間の戦場。5騎の馬の蹄に粘っこい泥濘(ぬかるみ)が絡まり、足取りを重くする。先頭の馬では、セーラー服の(めぐみ)が青年武将の腰に腕を回し、コクリコクリとまどろむ。スマートチョーカーがカイロ機能で雨に冷えた体を温め、深い眠りに入っている。


 夢の中、恵は京都国営美術館の「大狩野派展」で、狩野永徳の国宝水墨画「花鳥図襖」をただ一人うっとりと見つめる。巨大な梅の老木の枝に、カワイイ小鳥たちが(さえず)る。

 突然、後ろから女性監視員が、恵の緑色の上品なトップスの肩をトントンと叩く。振り向く恵に、シルエットの顔の見えない監視員が「あなた、男でしょう? なんでそんな格好してるの?」と機械的に言う。恵は持っていないはずのユノロクのリュックを床に落とす。



 「姫、申し訳ありません! 道に迷ったようです!」

 青年武将の丁寧な言葉で、恵はハッと目を覚ます。

 霧は濃く、先行する今川義元の250騎の影はとうに消えている。生い茂る樹木や草に三方を囲まれた5騎の馬が止まり、馬たちは「ブフォン、ブフォン」と休息を喜ぶようにいななく。

 青年武将はサッと馬から降り、横乗りの恵に対して腰を90度折り、「(それがし)が地図を読むのが苦手ゆえに…とんでもないことに」と謝罪する。


 恵は「女は地図を読めん」と言った小幡の顔を一瞬思い出しながら、両手を(くら)に置き「よいしょっと!」と勢いをつけ、パっと飛び降りる。

 フワッとセーラー服のスカートがめくれ、ピンク色のパンティーがチラリと見える。青年武将は上目遣いでそれを見て顔を赤らめ、ますます腰を折る。

 恵は「あわわ!」とスカートを押さえ着地するが、泥に足を取られ、「あれ?あれ?」とふらつき、倒れそうになる。青年武将が「姫!」と叫び、ガシッと体を支える。


 抱きかかえられた形の恵は「おおー、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」と思わず口に出す。青年武将は不思議そうに「某の名は()()()ではござらぬが」と答え、恵の身体を引き起こす。

 「それよりも、某が道を間違えて…」と3度目の謝罪をしようとすると、恵はニコッと笑い、「いいよ、いいよ! こんな霧だもん、GPSも無いし、誰だって迷うよね!」と能天気に慰める。


 4人の護衛騎馬が「なんと責めずにお許しになるのか?」「姫、優しすぎるだろ!」「それより見たか。なんとも薄い布、南蛮の織りか」と感嘆。

 青年武将は感激で震え、左手で目のあたりを押さえる。恵は「あれ、泣いてる? カワイイ〜!」と茶化すと、青年武将は「某は泣いてなんかござらん!」とムキになる。恵は微笑みで返す。


 恵は「さてと…」とつぶやき少し真面目な顔つきになって周りを見渡す。目の前には、幹と枝がうねうねと捻れる樹齢数百年の巨大な梅の木が立ち塞がっている。枝には大小の鳥たちが雨宿りをしており、「ちゅんちゅん」から「ギャーキャー」まで様々な鳴き声を上げている。

 「うわっ、これって狩野永徳の『花鳥図襖』のリアル版?名古屋市内にこんな巨木があったんだぁ」と、恵は圧倒されながら、独り言を言う。

 青年武将がその言葉にピクリと反応したことに、恵は気づかない。

次回、恵のチートスキル「鳥の目」発動する!かも、しないかも。29日朝に公開!

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