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近所の子の話

作者: 久御山ナツ

エッセイというか筆者の思い出話です。

時代背景は数十年前の昭和ですので、現在と常識など違う箇所もありますが、ご理解たまわりますよう。

また関西弁がお嫌いな方、時代背景なんて関係ない!という方はご退席願います。

お互い嫌な気持ちにならないため宜しくお願いいたします。

 私の記憶にある初期の生年月日の記入欄は『明治、大正、昭和』(丸を付けるヤツ)。私は昭和生まれ。


 高度経済成長期の『準工業地帯』で生まれ育った私の思い出には田畑は無く、山も無く、河川とは黒く澱み異臭を発するもの。

 工場跡地やら違法廃車場で遊び、夕方になればサイレンの音に見送られ帰宅するのが日々の過ごし方だった。


 そんな小学生の私ん家がある路地の向かいに引っ越してきた母子がいた。

 小学生男子(A君)とその母で、彼女のアフロヘアが私には衝撃だったと記憶している。

 A君が同じ集団登校班になるだか何だかで挨拶された……のが理由だった気がするが、アフロが強すぎてその辺はあやふやだ。


 いつの間にか班員となっていたA君だったが、周囲に馴染むのは非常に早かった。

 理由はS君宅にファミ〇ンがあったからだ。


 まだまだ高嶺の花であるファミリー〇ンピュータ。

 ゲームといえば駄菓子屋の店先で三十円で遊ぶ高価な遊戯であるが、それを自宅で際限なく出来るとは。

 しかもA君宅はお母さんが不在がちなので用心もあったのか、家で遊んでも良いといわれ、ファミ〇ンで遊ばせてくれた。

 近所の子ばかりで、親も知っているという安心感も強かったのだと思う。

 初期のゴルフ、ドンキー〇ング、マリ△ブラザーズなど……私のファミ〇ン初プレイはA君宅だったし数人はそうだった。


 私はじめ班員たちとA君の関係はファミ〇ンを餌に釣られた形で始まったが、学年が上がるにつれ普通の班員関係となっていった。

 ファミ〇ン普及率が高くなったのもあったが、私達がA君をそんなに羨ましいと思わなくなったのもあったのだと思う。

 またカップ麺、スナック菓子、菓子パン、コーラ……。特にカップ麺は駄菓子屋のブタ□ンのお陰で身近なものとなったのもある(ブタ□ンは五十円、お小遣いが五十円だと中々踏み切れない価格だ)


 そんなこんなで数年経った頃に変化があった。

 A君が集団登校の集合時間に遅れるようになった。元々ギリギリだったが、玄関先に呼びに行っても「先に行って」が増えた。

 幾ら図々しい私含め班員達でも登校班に遅れている子の家に押し掛ける事まではせず。

 

 そんなA君の変化だったが、夏休み前に親から聞いた話で理由がわかった。

 A君母に恋人(彼氏)が出来たらしい。

 しかもその恋人はいい大人なのに子ども(A君)に手を上げているようだと。

 昼間にA君宅からA君の泣き声、成人男性の怒鳴り声がちょくちょく聞こえたが、A君母の声も聞こえる時があるので、近所の人達と「どないしよか」と話していたと。

 私が母に「何で助けてあげへんの?」と憤ったが「A君母がそれでええ思たはるんやったら何も言われへん」と児相とは?な返事。

 私の育ちは所謂下流で、両親も(時代もあるが)中卒のブルーカラーだが、それでも恋人の息子という『他所の子』に罵声や暴力を振るう人=物騒な人という常識はあった。

 結局母からは「A君と同学年の班員の親御さんが、A君について学校の先生に話をした」そうなので、子どもは口を出さないように注意をされ夏休みを迎えた。


 夏休みの七月終りだったと思う。

 学校プール開放から帰宅後に母からA君家が引っ越して行ったと聞いた。

 「結婚しはるらしいで」との言葉の意味がよくわからなかったのだが。

 A君母はアフロヘアと化粧が濃いところ以外はフツーの人だと思っていた。挨拶もするし、A君が持ち帰ったアサガオやヒマワリも大事にしていた人だ。それなのに息子に手を上げる人と恋人関係だけではなく、わざわざ結婚までするとは。


 夏休みの登校日に班内でA君の話は出たが、夏休み明けには誰も触れなかったのを覚えている。

 その後のA君について何も知らない。


 あの町は全く変わり、私の両親は既に鬼籍に入ったが、他所でトタン屋根や大衆風呂の煙突や板塀なんかを見ればふと思い出す。

 A君がもう泣いておらず、ぼちぼちやっていればいいのに。 

読んで下さってありがとうございます。

給食の献立に「関東炊き」や「くじらの甘辛煮」があった年代ですので、色々多目にみていただけると幸いです。

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