プロローグ
死は、生きとし生けるもの全てにとって逃れ得ぬ宿命である。
人間や動物はもちろんのこと、異界の住人である魔族、神族、そして全てを超越し世界を司る存在――主でさえも、その例外ではない。
死者の霊魂は、死後の世界――霊界へと導かれ、生前の行いを母なる霊界主に裁かれ、その後の行く末が定められる。
ある者は霊界に住まうことを許され、安らかに過ごす。
ある者は英霊と認められ、現世の理に直接関わることを許される。
ある者は地獄へ落とされ、過酷な罰を与えられたのち、浄化される。
浄化された魂は、新たに生み出された無垢なる魂とともに、再び現世へと転生していく。
そうした営みが、今もなお数えられぬほど延々と繰り返されているのだ。
しかし、霊界へ還ることを拒み、亡霊として現世に執着し続ける者達もまた、存在する。
人や物に未練を抱く者。
自分が死んだことを認識できない、あるいは信じたくない者。
死してなお生きたいと願う者。
総じて自らの強い執念によって現世に居座り続ける彼らは、その執念をもって人々に害を為すことも珍しくない。
そのように強情な亡霊達を霊界へ送り届けてもらうために、霊界主は現世の住人達に助力を求めた。
すなわち、亡霊と直接的に対話し、場合によっては強制的に霊界送りにするための力を、彼らに与えたのだ。
死者の魂と向き合う力を得た者――霊術士達は各地に散らばり、霊界主から託された使命を全うしていくようになったという。
そのかたわら、ときに人々をも助け続けてきた彼らは、いつしか畏敬の念を込めてこう呼ばれるようになる。
迷える霊魂を救い、霊界へ導く者――【霊導士】と。