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幸福

 ヤツらの背中に"笑顔の麒麟"がそれぞれ浮かび始め、それが俺の中で決定打となった。

 ユエさんと裏部さんが殺されたあの日、下に小さく"同じ麒麟のサイン"があったからだ。


「うぜぇな、誰だよ勝手に戻しやがったのは」


 一番奥に隠れていた図体の大きい男が出てきた。


「キモい事しやがって、死ぬだけのカスが」


 俺は"白いフード"を被り、顔を隠して前に出る。

 身体は勝手にヤツへと進んでいた。


「ん? なんかバカが一人来てるぞ、お前らやれッ!!」


 何人来ようが、どんなズノウを使われようが、関係無い。

 俺はもう、戻レナイ。


「(三船君⋯)」

 

 一瞬、もう聞けなくなった声が脳裏に響いた気がした。

 ⋯俺ガ理不尽ヲ壊ス


「支配人ッ! 剣が⋯剣が急に消えてッ!?」

「はぁ? うるせぇッ! いいからやれッ!!」


 あの大クズに従う事しか出来ないクズ共。

 素手で迫ってくるクズ共の心臓を、"激しい虹光"が通り過ぎる。


「おいッ!! だらしねぇ事してんじゃねぇッ!! 囲んじまえばいいだろうがッ!!」


 残った8人ほどが一気に俺を囲み、隠し持っていたハンドガンを向けてきた。


「⋯」

「いらねぇ事しなきゃ良かったのになぁ!? 七色蝶さんよぉ!? そこでさっさと死んどけッ!!」


 向けられた銃は突如全て消えた。

 シンズノウ〈虹女神の一喝〉は、向けられた"EL基準未満の装備"を全てアイテム欄へ格納し、1時間使えない制限を与える。


「な、銃がッ!? どこいったッ!?」


 俺は身体を捻ってジャンプし、回転中に一人ずつ確実に脳を貫いた。

 撃つ度、∞模様と0模様の粒子が散らばる。


「鬱陶しい野郎が⋯!! おいタクッ!! 後はお前がやれッ!!」

「⋯任せてください」


 一人の男が支配人と呼ばれる男の後ろから現れた。

 そいつが黄色いフードを取り、マスクを取る。


「よぉ」

「⋯」


 目の前にいる。 


 あの時、ユキやヒナを襲って逃げた"一番のクズ"。

 ユエさんや裏部さんを殺して逃げた"一番のクズ"。


 目の前にいる。


 メ ノ マ エ ニ イ ル


「【人殺しへの幸せな仕返し】はどうだった? 嬉しかったか?」

「⋯」

「喋れよ、人殺しのゴミ。あ、ゴミだから喋れないのか、すまんすまん」


 ヤツが笑いを浮かべる。


 ⋯死ネ

 ⋯死ネ

 ⋯死ネ


 死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ


 俺が撃とうとした刹那、誰かが先に攻撃した。


「アンタは⋯許さないッ!!」

「ちっ、邪魔すんなッ!」

「⋯っ!?」


 なんと、ヤツはユキの大鎌を跳ね返した。

 "右手に持つ謎のカプセル?"を使って。


「また後で犯してやるよ。ほんとはまたして欲しいんだろ?」

「⋯殺スッ!!」


 何もかも怒りに支配され、〈インフィニット・ネオシンギュラリティ・ドライブ〉を選ぼうとした瞬間、


「俺には"コレ"がある。勝てるわけないだろ?」


 アイツは持っている"謎のカプセル?"を強調してきた。




 ⋯




 !?


 突然フラッシュバックが起きた。

 "アレ"を俺は⋯見た事があった。


 夢で見た。

 何回も"アレ"を見たはずだ。


 "ヤバそうな機械"と俺は呼んでいた。

 5年後の俺が"アレ"に乗るという意味不明の夢。

 それが"片手に収まるほど小型化された物"を、なぜかヤツが持っている。


 なんでヤツが⋯

 どういう事だ⋯?


 ⋯だとしても、今の俺には何も関係無い

 冷静にコイツを殺す事だけ考えればいい。


 疑念を振り払うように発動した〈インフィニット・ネオシンギュラリティ・ドライブ〉は、もう止める事は出来なかった。

 ヤツか俺が倒れるまで、無限に放ち続ける。


 "不可解な点滅光"を左右から噴射させ、全体をグリッチ状にしながら銃剣が振り回されようとした瞬間、


「⋯本当の幸せを見せてやるよ」


 ヤツが呟くと、なんとヤツの身体がバラバラに飛び散り、俺の初撃が"見えない何か"に防がれていた。

 こんな事ありえない⋯なにが⋯!?


 その"見えない何か"は、徐々に姿を見せ始めた。

 激しい発光が目に刺さる。


 ― 0形状の銃口、無限模様の蝶の羽根、激しい光の噴射


 俺の銃剣を防いでいたのは⋯全く同じ"虚無限蝶の銃剣"だった。


 ― お互いの銃剣から0と∞の粒子が散乱する


「なに⋯が⋯」


 これまで感じた事無いほどの悪寒が走った。

 全身から異常な量の汗が噴き出る。

 お前は確実に死ぬ、身体の全てがそう訴えてくるように。


 ⋯次第に全身が現れ、そこには夢の存在のはずの"白いアイツ"が立ち塞がっていた

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