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新機

 毎回ここだけ雰囲気が違いすぎだろ。

 "金のウロボロスドーナツのドア"、こいつがボス部屋すぎる。

 ⋯でもあの女子4人の部屋だし、あながち間違ってないか


 そんなボス部屋前に立つと、自動でドアが開いた。

 そこには⋯


「じゃーん、どう?」


 ユキとヒナが突然見せてきたもの。

 右耳上部辺りに"虹から蝶の羽根が生えた何か?"がくっ付いている。


「⋯なんだそれ?」

「"彼ら"が作ってくれたの。これを付けている人同士の視点や声や音もすぐ共有できて、一時的に身体能力を上げる事なんかもできるんだって。しかも、ズノウみたいに脳内の指示で」


 そんな凄いものを⋯?

 

『こちらで出来る限界を尽くして作らせて頂きました。"UnRuleシステム"を一部奪取出来たので、それらをこの"トゥウェルバー"に詰め込みました。L.S.との親和性も高く、他にもいろんな使い方が出来るはずです。デザインは、ユキ様に助言頂きました』


 "赤いロア?"が俺へと手渡してくる。

 後ろには、青いプロトロアが2体。


 こんなやついたっけ⋯?

 青いのはいたが、赤いのは知らないぞ⋯?


 まぁそれは後にして⋯

 よく見ると、俺の銃剣がモチーフになっているのか、十二色で彩られた新デバイスだ。


 白黒で包まれた虹には、金銀銅の蝶羽根が仕舞われている。

 なんだこれ、柔らかい。


『触る時は柔らかくなり、装着時はダイアのように頑丈になるのです。場に応じて形状変化するため、人体に影響も無いようになっています』

「へぇ~」


 俺も右耳上部辺りへと付けてみると、なんと接触せずに真横に浮いた。

 そして、蝶の羽根が小さく展開した。


「どう? ルイ」

「うん、いい。装着感無いのがさらにいいな」

「人体の静電気と血流発電で"ここ"に浮かしてるらしいわよ」


 なんかまた凄い事やってるな。


『L.S.を付けているからこそ出来る事です。L.S.は血流発電を行って無限に使えていますので、その発電原理を耳上へと静電気によって加速移動させたのです』


 静電気は2つの物がぶつかる時、プラスとマイナスの電気移動で起こる事だったはず。

 それを手の方からも無理やり起こしてる感じか、説明するのは難しそう。

 一般的には、静電気が放電して俺たち人間に痛みが発生してるが、その放電の痛みもないように抑えてるのか。


「でも静電気って、あのバチッて痛いやつだよね? なんでそれにならないのかなぁ?」


 まさに今俺が思っていた事を、ヒナがぼそっと呟いた。


『それがこの"トゥウェルバー"の新しいところです。その静電気で起こる放電を吸収して増幅しているのです。L.S.は血流発電による充電のみでしたが、こっちはそれプラス静電気を増幅した充電です。これらの動きで発生した強磁力によって、安定した横浮遊と推移を得ているのです』

「??? はい???」


 ヒナの頭上には何個も"?"が浮かび、考えるのをやめそうになっている。

 あ、やめて座った。


「なぁ、これって人体への影響は無いのか? 静電気を無理やり引き出すような方法と加速移動、何も無いようには見えないけど」

『大丈夫です。実は、人間の筋肉は使われない部分が多くあるため、それを介しています。つまり、軽い筋トレを自然としていると考えてください』

「え、それって逆に身体にいい⋯?」


 ユキが驚愕した表情で"赤いロア?"を見つめる。


『はい、身体にも健康に良いです。痩せます、体脂肪減ります、美肌にも良いです』


 ユキは"赤いロア?"の手を握ると、ありえない勢いでブンブンと握手した。

 聞いた限りだと、マジでヤバいなこれ。

 L.S.があるからこそ出来る技術ってわけか。


 まるでユエさんとロアの意志を引き継いでいるようだった。

 こいつらが味方にいてくれてよかった。

 敵だと最悪だ。


『人数分はギリギリ用意できました。これ以上は部品の関係上、今は作れないと思われます』

「⋯了解、これだけあれば充分だ」


 後でみんなに渡さないとだな。

 トゥウェルバーのヤバさばかりに目が行き、右手に持つ"これ"の存在が薄らいでいた。


「あ、それでこれ」

「やっぱり限定ドーナツクレープ! 食べたかったのよね~」

「わ~い! ありがとうございます!」


 二人はよっぽど食べたかったのか、すぐに口にした。

 溢れるクリームとぶどうたち。


「さっき間に合わなかったって言ってたけど、"これ"を試してたのか?」


 トゥウェルバーを指差す。


「動作テストに付き合ってた。即席だったから、ちゃんと使えるか不安だって言われたから」

「それでヒナと二人で試してたって事か」

「二人じゃないわ、彼らも含めてね」


 プロトロアたちを見ると、軽くお辞儀をされた。

 そうだったな、こいつらも大事な仲間だ。


「ありがとう、これからもよろしく」

『最後までお供します。これからもAI視点で、役に立てればと思います』


 また軽くお辞儀をするプロトロアたち。

 そういえば、この"赤いロア?"はどこから来たんだろうか?


「ところで、この"赤いの"は?」

「この"赤ちゃん"はですね~、なんと車内に隠されていた"ロアスリーさん"です!」

「え、"ロアスリー"?」


 すると、"ロアスリー"が一歩前へと出る。


『申し遅れました、"ロアスリー"です。飯塚ユエ様とアオ様がいなくなった後の一定時間後、全ての私物管理を任されるはずでしたが、どうやらそれよりも深刻な事態である事が判明したため、今は新たな後継者のユキ様のお力となるべく行動しています』


 また変わったのが出てきたな。

 ロアツーの後だからロアスリーって事か。

 ユエさんらしい。


「"新たな後継者のユキ様"、ねぇ」

「⋯私にもよく分かってないから。勝手に選ばれたから」

「いいじゃねぇか。こんなにいいAIなんて、そうそう手に入るもんじゃない」

「そうだよ~! こんなに可愛い子たち、私が欲しかった!」


 ドーナツクレープを食べながら、ロアスリーのもふもふの赤毛に抱き着くヒナ。

 こいつらみんな毛がもっふもふしてるからか、とうとう我慢出来なくなったらしい。

 ロアスリーはなんか"まったりした目"をしてる。


「そういや、ロアツーは?」

『最近車上荒らしも多いため、見張っています。透明化も可能ですが、長くはもたないため、念のため監視しています』


 あの車って、透明化なんてできたのか。

 多機能すぎて、こいつらに任せた方が賢明だ。


 ♢


 そしてしばらくして、ここでの最後の夜を迎えた。

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