表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/111

約束

「よぉ、昨晩ハーレム野郎じゃん」

「誰の事だ」

「お前以外誰がいんだよ」

「いや、俺夜逃げして一人部屋で寝たから違うけど」

「一緒に遊んだ時点で同じようなもんだろ」


 俺は、一人トレーニングをするシンヤの隣に座った。


「お前も来ればいいだろ、俺はバカラでチート使ったって恨まれてたんだぞ」

「おめぇはなんでもかんでも勝ちすぎなんだよ、ちょっとは譲ってやれ」

「バカ言え、負けたら何要求されるか分からない状況だったんだぞ」

「みんなはお前のそういうとこを見たいんだよ、分かってねぇな~」


 トレーニングの区切りを付けたシンヤが横に座る。


「んで、さっきから大事そうに持ってるその"カレイドクレープ"って書いてある箱はなんだ?」

「食うか? さっき買ってきたんだよ。30食限定、20種ぶどうのドーナツクレープ」

「おぉ! 俺の分があるのか!?」

「ちゃんとあるぞ。俺はユキみたいに"シン虐"しないから」

「んだよ"シン虐"って、シンヤ虐待の略か? 変な造語作んな」

「よく気付いたな」

「へっ、舐めんなよ」

「そんなあなたには、はい、ご褒美です」


 ドーナツクレープの入った箱を渡す。

 シンヤはすぐに中身を見た。


「おぉ~! クッソ美味そうじゃん! 真ん中にドーナツがくっ付いてんのか!」

「さっきニイナとノノと買いに行ったんだよ。二人は一瞬で完食してた」

「だろうな! こりゃすげぇや! 中は、クリームとぶどうがぎっちぎちだぜ! ⋯ほんとに食っていいのか?」

「気にせず食え、何も変な事しねぇよ」

「そんじゃ、いっただき~!」


 シンヤが頬張ると、中からクリームが溢れた。

 

「クソ美味ぇや! ぶどうとドーナツとクレープってこんな合うんだな! またこのドーナツとクレープがもっちもちなのがいいわ!」

「良かったな、これでまた明日から頑張れそうか?」

「んなもん言われなくても当然よ! こうしてお前も無事帰って来た事だしな、俺たちで総理も真犯人もぶっ飛ばして、また楽しく生きて行こうぜ!」

「ふっ、そうだな」

「なんで一瞬笑ったんだよ」

「いや、お前の明るさは健在だなって」

「やっぱ俺がいねぇとダメだろ? そんでさ、全部終わったらまた俺と勝負してくれよ」

「へぇ~、まだ諦めてないのか」

「俺はな、人生が終わるまでお前に挑み続けるんだ。"成功者"のお前にな! んで、勝って俺が"成功者"になってやる!」

「まるでどっかの主人公みたいな事言うな。でも俺思うんだよ、最後に負けるならシンヤ、お前がいいって」

「急にらしくねぇ事言うなぁ、新崎さんやアスタだっていんだろ?」

「いいや、最後の最後で納得出来そうなのがシンヤだな。他は想像出来ない」

「ふーん、意外だな」

「そんな事無いと思うけどな。いっつも決勝でやり合ってた時、お前は俺の想像をいつも超えてきた。今だってプロでそうやってるじゃねぇか」

「よく見てんな! さすが出禁社長~!」

「誰が出禁社長だ。だから頼むわ、"本当の意味での負け"を付けるのは、お前であってくれよ」

「⋯任せろ、俺は研鑽をやめねぇ! 約束だ!」


 俺とシンヤの拳がぶつかる。

 そこに嘘など一つも無い。


 その後は、シンヤのトレーニングに少し付き合った。

 面白い手法が何個かあって、俺も取り入れてみようと思った。

 これをヒナのトレーニングにも取り入れても良さそう。


「⋯ふぅ、こんなもんか」

「それじゃ、そろそろ俺はユキのとこ行くわ。これ渡さねぇと」


 俺はドーナツクレープの箱を持ち、立ち上がる。


「新崎さん喜ぶだろうぜ。またイチャイチャが始まるか?」

「うっせぇ、んじゃ後でな」


 GPSでユキの位置を確認すると、部屋に戻っているようだった。

 ただGPSの様子が最近おかしく、長い時間表示されない時がある。

 人工衛星に何か悪影響が出ているんだろうか⋯?


 考えていると、突然通話が来た。

 ユキからだ。


「ルイ? シンヤ君と一緒にいるよね? 位置近いし」

「さっきまでいたけど、今一人でそっちに向かってる」

「あ、こっち戻ってくる?」

「うん、ちょっと渡したい物があって」


 俺とシンヤの位置をGPSで見たのか。

 なんか用があるって事か。


「こっちも"ちょうど渡したい物"があるの、ヒナと一緒にいるわ」

「お、そうなのか。ヒナにも渡したかったから都合がいいな」

「なになに? 何を渡そうとしてるの?」

「まぁ一言言うと、"美味い物"ってだけ」

「もしかして、今日売ってる限定ドーナツクレープだったり?」

「⋯」

「⋯え、当たった?」

「⋯さぁな」

「だったら凄い嬉しいんだけど、私たち間に合わなかったから」

「それなら、楽しみにしておいて損は無いかもな」

「ふ~ん⋯じゃ、あえて何も言わずに楽しみに待ってよっかな~。こっちにある物も楽しみにしてて!」

「おう。すぐ行くわ」

「はーい」


 "渡したい物"ってなんだ?

 ヒナと一緒にいる⋯限定クレープ間に合わなかったって言ってたし、何か作ってたとか⋯?

 期待を胸に、俺は金星ドーナツ四人部屋へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ