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〇第25話『緊急任務』


「えぇえ!? またこの街に魔物が攻めに来るかもしれないぃい!?」

「シィッ! さっき情報漏洩は気を付けろと言ったばかりだろ!」

「あ、あぁ……すいません。でも、本当なんですか?」

「まず間違いない。もっとも次の接近が何日(いつ)なのかは定かじゃないが」

「とりあえず詳しく教えて貰えませんか?」


「お前があの(ドラゴン)の魔物化を解いたその(あと)、あの森をこちらで調査したんだ。(ドラゴン)の魔物がどうしてこの街を襲おうとしたのか原因が分かると思ってな。その調査班からの情報によるとその森にある洞窟で黒装束(くろしょうぞく)を身に纏った一団を見かけたらしいんだ」


黒装束(くろしょうぞく)の集団?」


 そう言えばあの竜、ヴェルデもそんなこと言ってたな。

 確かヴェルデを魔物にしたのもそんな集団って言ってたような……。


「今回の魔物襲来事件は間違いなくその集団が絡んでいる。その集団は現在ベルガ大森林にある洞窟の中を根城にしているらしいんだが、再び調査をしようにも余りに危険な調査のためそのランクに相応しい冒険者が今はいないんだ」


「そ、そんなヤバい集団なんですか……」


「恐らくその集団はあの『ヒューマラルド』の可能性が高い。奴らが今回の魔物接近の黒幕なら一匹の(ドラゴン)が魔物化してこの街を襲おうとした事にも十分に納得がいく」


「ひゅーま……らるど?」

「何だ知らんのか? 悪名高くて有名な集団だと思ったが……」

「その辺の知識には無知なもんで。んでヒューマラルドってのは?」


「ヒューマラルドは人間という種を『この世で絶対で純粋な種』として崇める完全人種主義宗教組織だ。他種族の滅亡を謳い、この世を人間だけの世界しようと企む、言わば他種族たちにとって天敵の組織だ。奴らは他種族を滅ぼすためならどんな手段も問わず、その危険性は全国から要注意集団として指名手配されている」


「人間を絶対な種として崇めるって……それ本気(マジ)なんですか?」


「過去に奴らのせいで被害を被った種族達は五万といる。異種族は穢れた種として扱われ『異種族は生きていることすら許しがたい』というのが宗教組織(あちら)の思想だそうだ。その危険思想に各地域何所の国も手を焼いていてな、他種族と友好関係を築いている人間は異端者扱いされ制裁されてしまう」


 完全人種主義“宗教”組織、か……。

 ホント"宗教"ってものには悪い思い出しかないな。

 影も形もないものを崇拝して幸せになれるか?

 腹が膨れるか? 金が貯まるか?

 大体何だよ、完全人間主義宗教組織って……。

 崇めるのが人間そのものってマジで馬鹿げてる。

 人間なんて崇める価値なんてこれっぽっちもないだろうに。


「つまり、今回の魔物騒動はその宗教組織が絡んでいると」


「まず間違いないだろうな。宗教組織(やつら)は異種族を極端に嫌う、何故この街に魔物化した(ドラゴン)が急に接近して来たのかずっと疑問に思ってたが……宗教組織の手で人為的に起こされ、魔物にこの街を襲わせようとしたと考えたら辻褄が合う」


「まさか、襲わせそうとした理由はこの街が異種族で盛んな街だから……」


「そう考えるのが妥当だろうな。今回の魔物化した(ドラゴン)に街を襲わせるのが宗教組織(やつら)の目論見だったんだろう。ただ、それが今回それが失敗したからと言って諦める連中とは思えない。必ずまた何かしらの策を講じてくるはず。保険でまだ街に嗾ける魔物を所持しても不思議じゃないさ」


「だとしたらマズいんじゃないですか? 早く何とかしないと……」


「だが奴らがあの洞窟で何をしているのかはまだ不明だ。調べるにしろ下手に低ランクの冒険者を調査に送り込むわけにもいかないし、運が悪ければ冒険者を死なす可能性もある。さらに運悪くギルドに所属する高ランクの冒険者は全員各地に出払っていてな。連中の調査に見合う冒険者が今このギルドにはいないんだ」


「ならどうするんですか。急がないとそいつ等が――……」


 するとアルテシアが意味深な笑みを浮かべる。


 ……ははーん、なるほどそういうことか。

 色々と察しがついたぞ。


 街の存続に関わる程の高ランクの調査依頼。

 でもこの冒険者ギルドには現在、強い冒険者は全員出払っている。

 だからそれの調査任務を受けれる冒険者はいない。

 そして、俺が冒険者になれるアルテシアの提案。


 ここまで聞いて察しができなければ相当な鈍感だ。


「どうやら察しがついたようだな」

「つまりその調査任務を請け負えば俺が冒険者になる事を認めてくれると、そう事ですよね」


「悪い提案ではないぞ。単騎で(ドラゴン)を捻じ伏せ、ギルドの試験官に無傷で勝利する実力。魔物化した種族を元に戻す能力の持ち主、そしてレミリアを従順にさせるほどの心の誠実さ、お前には冒険者の素質は十分にある。しかし足りないのは信用と実績のみ、今のお前にピッタリの提案だと思うが?」


 でも確かに悪い提案じゃない。

 ここ数週間、フィーリアの元で戦闘や魔法の訓練はかなり積んできた。

 どんな危険がいたとしても乗り切れる自信はある。

 でもそんな重要な任務、こんな冒険者でもない一般素人に任せてもいいのか?

 ギルドのトップの判断にしてはかなり無責任じゃないだろうか。


「正気とは思えませんね、そんな重要な任務(こと)、こんな素人に任せていいんですか?」


「どの口が言うか。魔法も能力も使わないで竜を捻じ伏せる魔族を素人とは言わん。でも確かに、自分でも正気とは思えない提案をしている自覚はあるさ」


「ならどうして――」

「フィーリアが同族である魔族(お前)を信用しているからだよ」

「それって、どういうことですか……」


「フィーリアは他種族にはとても友好的だ。だが身内以外の同族の魔族は一切信用していない。それもそのはず、フィーリアの一族であるダンタリオス家は魔族の中でも戦闘の実力は最弱、そのせいで同族の王族達からは蔑まされ散々な扱いをされてきた。魔族は完全実力主義で血筋を重んじる異種族、王族間となればその扱いも容易に想像がつく」


 フィーリアも言ってたっけか。

 魔族は実力主義の血筋を重んじる種族。

 魔族は戦いにおける勝利以外を功績とは呼ばない。

 だから文明発展や魔物の生態研究成果は功績とは認められず、ダンタリオス家は魔族の王族の中でも最弱とバカにされている。

 それに加えて様々な他種族と共存、同盟関係を築くフィーリアの交友関係。

 そのせいで今のフィーリアが治めるダンタリオス家には同族の敵が多く、文明の豊かさを妬む種族も少なくないんだとか。

 どんな理由であれ、今のダンタリオス家に敵が多いのは確かだ。


「しかし、今までの話を聞くとお前はフィーリアに随分と信用されているようだ。その判断が本当に正しいに値するか、吾輩はそれを見定める義務がある。フィーリアの古くからの親友としてな」


「つまり、この任務を何の問題もなく達成できれば俺を冒険者としてだけじゃなく、フィーリアとの協力関係も認めてくれると」


「もちろん。この任務が成功した暁には高額報酬も約束しよう。Cランクの冒険者開始も変わらず保証する。どうだ?」


 でも、だからって素人にこんな大事な任務を普通任せるか……?

 絶対何か裏があると思う。

 企んでないとは言ってたけど企んでる奴は「企んでる」とは言わないだろ。

 でもどんなに考えてもその企みが分からない……。

 ダメだ。どんなに考えてもアルテシアの考えが読めない。

 ま、そもそも頭の悪い俺が相手の思考を読むなんて無理な話だけど。

 実際、依頼の内容はかなり高難易度(ハードモード)だけどこの調査任務が達成できれば俺は晴れて冒険者になれてアルテシアからも信用を得られる。

 はぁ、なら俺がとる手段は一択しかないか……。


「はぁ……わかりましたよ。その任務、お受けします」

「引き受けてくれるか」

「ユウヤさん、いいんですか? この任務はかなり危険な――」

 

 心配そうに俺を見つめるレミリア。


「しょうがないだろ。フィーリアの親友ならその親友の信頼を得ておくのは大事だし、それにもしかしたら今後、何かしらで協力する機会もあるかもしれないからお互いの不安は取り除いておきたい」


「意外と冷静だな。もっと感情に振り回される性格かと思ったが……」


「考えるのが面倒臭くなっただけですよ。それに疑われるってのはどうにも好きじゃないんでね、とっととその疑いを晴らした方が得策だと思ったまでです」


「だがいいのか? 吾輩が言うのも何だが、これはかなり危険な依頼だ。難易度のランクで言うとAとSの間、本来上級冒険者が引き受ける仕事だ。なんせあの危険な宗教組織(ヒューマラルド)が絡むかもしれないんだ、それでも引き受けてくれるか?」


「自慢じゃないですけど、俺もここ最近はフィーリアの元で結構(かなり)鍛えてきたつもりですよ。魔法や武術の訓練、冒険者に必要な技術も一通り習いましたし、どんな敵が待ち受けてるかは知りませんけど、どんな魔物や異種族でも薙ぎ払って見せますよ」


「凄い自信だな。まぁ魔物化した(ドラゴン)を単騎で捻じ伏せるほどだ、その自信も納得だが……お前の実力にまったく底が見えない。何か不気味な……いや、異常な強さを感じるが」


「とにかく、俺はフィーリアはもちろんアンタとも敵対する気はこれっぽちもない。むしろ味方なんでそこは安心してくれていいですよ」


「本来、(ドラゴン)は国家の一軍に匹敵する戦力。ベテランの戦士や魔術師が数十人がかりで何とか対応できる相手だ。それをお前は単騎で苦戦する様子もなく相手にしたと聞く。そんな実力を持っているとなればどんな素人でも警戒するさ」


 アルテシアはまだ腑に落ちないという顔だ。

 俺でさえ魔魂喰(この身体)の強さはまだまだ計り知れないし謎なことも多い。

 警戒するアルテシアの気持ちは十分に分かる。

 実際、この身体が持つ能力は馬鹿げてる性能のものが多いし、使い様によっては国家転覆を実現できるほどの脅威だ。


 相手の魂を食べることでその能力値と能力を奪い自分のものにする。

 そして相手の魂に触れることで相手の病気や怪我、状態異常を取り除き肉体を正常な状態に戻す。さらには魂に改造を加えることで相手の肉体や能力を強化・向上させる。


 これだけでも反則級だと言うのにな。

 不老不死とか無限魔力とか言う反則能力(チートスキル)、諸々。

 これを言えばまず間違いなく俺は危険人物扱いされるだろうな……。

 でもこのままアルテシアさんに警戒されたままというのも気持ち悪い。

 さて、どうしたもんか……。


「ちなみに聞いていいですか?」

「何だ?」

「この調査で相手がその例の宗教組織だった場合、俺はどうすれば?」


「とにかく今は情報が足りない。今回の魔物の件について宗教組織(やつら)が絡んでいるなら正確な根城を突き止めて、そこで何を企んでいるのか突き止めて欲しい。できれば宗教組織(やつら)を排除してきて欲しい、というのが望ましいが……現状ヒューマラルドが何を企んでいるのかは全くの不明、もしかしたら(ドラゴン)以上に強力な魔物を隠し持ってるかもしれない。そこまでの危険を負わせるほど、吾輩も愚かではないよ」


「でも、そのヒューマラルドが絡んでるのはほぼ間違いないんですよね? 企みが分かっても現状、その宗教組織に対抗できる冒険者もいなくちゃ情報だけ持ち帰ってもしょうがないんじゃないんですか?」


「た、確かにそれはそうだが……」


「…………ギルド長、俺と少し”賭け”をしませんか?」


「賭け?」


「もし、俺がその調査でその宗教組織を殲滅できたら今後俺の素性についての勘ぐりは一切しない。その代わり、情報だけしか持ち帰れなかったら俺の素性と能力の性能を包み隠さず教えるっていうのはどうです?」


「……っ!」


 お、どうやら”賭け”に食いついたな。


「しかし可能なのか? 確かにお前が異常な強さなのは十分に分かった。しかし今回の依頼は普通の冒険者への依頼とはまた異なる。なんせ絡んでるのがあの宗教組織だ、どんな異常(イレギュラー)や危険があるか検討も付かん。最悪本当に死ぬことすらも視野に入れる依頼だ。それでも可能だと言うのか、宗教組織(やつら)の排除が」


「可能です。正直、情報収集より敵の殲滅(そっち)の方が俺にとっては簡単で分かりやすいんですよ。敵を倒す、俺にとってはこれの方が一番(ラク)で分かりやすいんです」


「ふむ……」


 悩んではいるみたいだけどかなり好感触。

 これで宗教組織を倒せれば俺はアルテシアさんから信頼をもぎ取れる。

 これ以上、変な勘ぐりはされないはず。

 我ながら良いアイディアだ。


「……分かった。その賭けに乗ろうじゃないか。この依頼、引き受けてくれるな」

「任せて下さい」


 こうしてギルド長との合意を得て、俺は今回の仕事を引き受けた。

 合意したという契約書にサインを書き、正確な場所を地図で説明される。

 場所は俺とヴェルデが出会ったベルガ大森林、その大森林の北に位置する大洞窟。

 場所の地図を渡され、俺はレミリアと一緒に執務室を後にした。


 窓口である程度の支援物資を受け取り、俺達は街の外へ出ようと出口の門へと向かう。

 その一方で隣で不安な表情を浮かべるレミリア。


「ユウヤさん、大丈夫なんですか?」

「なにが?」


「いえ、今回の仕事……あの宗教組織が絡んでるとなるとかなり危険なものになると思うんです。いくらユウヤさんが強くても何が起こるか……」


 レミリアが不安そうな表情を浮かべ、カタカタと少し身体が震えている。

 レミリアの様子からよほどヤバイ集団というのが伝わってくる。


「さっきも説明がありましたが、奴らは全異種族を穢れた種族として嫌い、人間がこの世で一番優れた種族として崇める危険な組織なんです。『他種族は悪魔によって産み落とされた穢れた種』という信仰があるらしくて、他種族は問答無用で殺されてしまうんです」


「ロクでもねぇな……」


「他種族を滅ぼすことに躊躇(ためら)いもないし手段も選ばない。噂では自らの命を犠牲にしてまで他種族殲滅に命をかけているそうです。ユウヤさんの強さに疑いはありません、それでも相手が相手だけに心配になってしまって……」


「どっちにしろ俺の意思は変わらないって。むしろそんなヤバくて理不尽な組織ならこの街の異種族たちのためにも放っておくわけにはいかないだろ。俺のこの魔魂喰(ちから)でその組織を徹底的に叩き潰す。宗教組織がどんな小細工をしてこようと負けるつもりはない」


「…………」

「ん? 何?」


「いえ、ユウヤさんはどうしてワタシ達異種族にそんなに優しいんですか? 今の時代、異種族の差別や迫害がほぼありません。ですが、ユウヤさんほどワタシ達異種族に一生懸命な魔族は初めて見ました。ユウヤさんは今は魔族ではありますけど元々は異種族のいない世界から来た人間なんですよね? そんな世界の人間ならどうしてワタシ達異種族をすんなり受け入れるんですか? 抵抗とか気味悪いとか思わなかったんですか?」


「んー……抵抗は全然なかったかな。むしろ初めて生の異種族を見て感動を覚えたぐらいだから気味悪いとかは微塵たりとも思わなかったけど」


「自分と姿が違う異種族達を見て何とも思わなかったんですか?」

「なんだ? 俺が異種族を差別する人間にでも見えるってのか?」


「い、いえ! そういうワケではないんです! ただ事実、宗教組織のように異種族の存在を受け入れない人間がいるのも確かです。ユウヤさん程に異種族に寛大な魔族(ひと)は逆に珍しくて……」


「まぁ……俺の場合は"憧れ"って面が一番デカイと思うんよな」

「憧れ、ですか?」


「俺のいた世界って異種族ってのは空想上の存在で実在はしなかったんだよ。漫画(絵本)ゲーム(おとぎ話)の中でしか出てこなくて、子供の時の俺にはとってもワクワクさせられる存在だった。そんな空想上のお話に出てくる異種族はカッコ良くて可愛くて、それぞれ突出した個性や魅力もあって、とにかくそんな異種族が俺は大好きだったんだ」


「そういう、もんなんですか……?」


 レミリアはメチャクチャ頭上に『?』マークを浮かべてる。


 まぁ、この世界の人間や異種族には俺の気持ちは分からんだろうなぁ。

 主に俺のオタク心が勝手にテンション上がってるだけなんだけどな。

 だって空想上のものが実在するってテンション上がるじゃん?

 それが二次元の中だけの存在なら尚更よ。

 その中でも異種族ってのは俺にとって幻想世界には絶対欠かせない存在。

 そんな存在がこの世界では実在してるんだぞ?

 二次元が大好きなオタクならまず間違いなくテンション上がるだろ。

 そして、俺にとってそんな憧れの存在が滅ぼされそうになってる。

 そんなん許されるはずがないでしょうよ。

 俺にとっては人間よりも異種族の方が遥かに価値がある。

 人間そのものを否定するわけじゃないけど……。

 人間の私利私欲で異種族が滅ぼされるなんて絶対あっちゃならない。

 

 異種族は俺にとっては憧れの存在! 全人類(オタクたち)の宝!


 今の俺にはその憧れの存在を守れる魔魂喰(ちから)がある。

 だったら魔魂喰(この力)を存分に使わせてもらうまでだ。


「ま、実際はそれだけが理由じゃないんだけどな(ボソッ)」


「何か言いました?」

「何でもない。レミリアはどうする? 危険な任務だしこの街で待ってるのも――」

「いいえ、ワタシも同行させて貰います」

「って即答かよ……」

「当然ですよ。今回ワタシはユウヤさんの監視役でもあるんですから」


 あー、そう言えばそんなことも言ってたっけ。

 今回レミリアが付き添いで来たのは街の案内役という目的だけじゃない。

 俺が暴走しすぎないように監視する役目も兼ねている。


「でもだ、でもだぞ? 今回の仕事はレミリアみたいなメイドには危険過ぎるんじゃあ……」


「ご心配なく。ワタシも伊達にメリス様の元で鍛えられていませんので。自分の身を守るぐらいのことはできます。むしろユウヤさんが病気を治してくれたことで身体の負担の心配はなくなりまし、お役に立てることをお約束します」


 確かにそうなんだよな。

 レミリアに関係なく、ダンタリオス家に従うメイド達は全体的に戦闘力が高い。

 ダンタリオス家のメイド達は色々なワケありの異種族たちが多い。


 種族の事情により故郷から捨てられた者、

 肉体の一部が欠損し日常生活に支障をきたす者、

 奴隷として売られ、身分を無くした者、

 そしてレミリアみたいに身体に難病を抱えてる異種族も多い。


 各自ワケありとは言え、メイド達は何かしらの護身術や武芸の達人でもあった。

 槍使い、暗器使い、短剣使い、斧使い、銃使い、など。

 裏社会出身の異種族もおり、暗殺を使えるメイドや戦闘に特化したメイドなんてのもいた。

 文武両道、職務も完璧にこなし、それぞれが戦闘の熟練者(スペシャリスト)

 しかし、一部メイド達は肉体の欠損や難病のせいで実力を100%発揮できずにいた。

 でもこれからはもうそんな負担(リスク)を心配する事はない。肉体の欠落と難病持ちのメイド達は俺が今回、能力の検証で治してしまったためその負担が無くなり、存分に実力を振るえるというわけだ。

 ちなみにネミリアは二刀流の短剣使い。

 スピードを活かした近接戦闘はかなりのものでダンタリオス家のメイド達の中でも相当の実力。フィーリアの護衛として働くことも何度かあるそうだ。


「分かったよ、でもレミリアはある意味病み上がりなんだから無茶はすんなよ?」


「大丈夫ですよ、いくら難病の負担があったとは言え、普段から鍛錬は積んでますから。難病を理由に鍛錬を怠ったことなんて一度もありませんよ」


「そ、そうか……」


 ま、本人が大丈夫って言ってるなら大丈夫だろ。

 最悪、俺がフォローしてあげればいいし。

 こうして、俺は魔魂喰としての初仕事『害悪宗教組織の排除』を遂行するために、ヴェルデに会ったベルガ大森林へと向かった。


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