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〇第24話『信頼を得る方法』


「紹介状を確認しました。こちらのベンチで少しお待ちください」

「ふぅ~、何とか無事ギルドに入れたな」

「そうですね。ひとまず尾行も無いようでしたし……」


 無事にギルドに入れた俺とレミリアは時間までギルド内で時間を潰そうと思ったら入り口前で作業していた受付嬢さんに声を掛けられ、再試験の事を話すとギルド内の通路にあるベンチまで案内された。

 ひとまず案内されたベンチで休息を取り、案内されるまで待つことに。


「やっぱりリーシャを連れてこなくて正解だったな」

「それにしても奴隷商達(れんちゅう)はどこでユウヤさんの情報を知ったんでしょう」

「前にこのギルドで腕相撲をして相手の腕を折った話をしたよな。多分あの騒ぎが原因だと思うんだ。あの騒ぎで俺に注目した住民もいるだろうし、街の人たちに聞き込みして特定したんだろうなぁ。まさかこの街にまで連中が来てたなんて……油断してたわ」


「ユウヤさんのような青肌の魔族はかなり珍しいですからね。他の魔族にはない特徴ですから見つけるのは容易いでしょう」


「やっぱり俺のこの青い肌って珍しいのか?」

「いない……ってわけじゃないですけど、かなり希少な魔族なのは確かですね。魔族は頭の角と細い尻尾が特徴ですが、その中でも肌の色が違うっていうのは中々珍しくて青肌は上位魔族の存在と言われています。それに加えてユウヤさんは白髪ですし、かなり目立つかと……」


「上位魔族? 普通の魔族と違うのか?」

「全然違いますよ。他とは違う性質の魔力を持っていて一個体で巨人とも互角に戦える戦闘能力を持つほどと言われています。でも、ユウヤさんの青肌は……ちょっと違うような……」


「違う?」

「ええ、ワタシの知っている青肌の魔族の肌は青紫色と言うか……ユウヤさんの肌はそれこそ青い肌と言うには薄すぎるんです。それこそ失礼ながら死人のような肌色というか白よりの薄い青色というか……」


 まぁ、自分でも死人みたいな色とは思ってたけどやっぱ第三者からもそう見えるよな。


 死人ように青白い肌か……。


 俺も最初自身の肌を見た時、確かにそういう印象を持った。

 でもこの肌はどういう原理で青白いんだろうか……。

 何らかの青白い理由はあるんだろうけどその理由が全く検討もつかない。


「最近は色々なことが分かってきたけどこの身体はまだ謎が多のよな。魔魂喰の身体っていうのは分かったけど……どんな身体の仕組みなのか、どんな過去があったのか、何で俺みたいな人間が魔魂喰になってるのか……。能力(スキル)の性能にもまだまだ謎が多いし、魂ってものに関しても理解もまだまだ分かんない所が多いんだよなぁ」


 考えれば考える程謎は深まっていく。

 ここ最近ようやくこの身体の持つ能力や魔法を理解して使いこなせるようになったけどこの身体はホントに謎が多すぎる。


 特に一番の謎は奈良藤勇也(おれ)という人間が何で魔魂喰なんて魔族の身体になっているか。


 そこが一番の謎だ。

 これからそれをフィーリア達と協力して調べていくつもりではあるけど……。

 でもまぁ、この身体のおかけでケモ耳っ()達や銀髪角美少女達に囲まれて暮らせているわけで……。しばらくはこの状況を楽しむつもりではいる。

 人生で異世界に来て美少女の異種族に囲まれるなんて経験まず出来ないしな。


「あと、ユウヤさんどうするんですか?」

「どうするって、何を?」

「ユウヤさん自身の素性ですよ。フィーリア様は自分の遠い親戚てことでギルド長には話してあるようですが、面談の時に素性や出生とか聞かれたら危ないんじゃあ……」


(あらかじ)め説明されてるんなら問題ないだろ? フィーリアとここのギルド長って古い友人関係みたいだし。とりあえず俺はダンタリオス家の遠い親戚って事になってるらしいからその事を話せばフィーリアは問題ないってさ」


「だと良いんですけど……」


 え、なにその不安そうな顔は。

 まさかギルド長ってそんなに怖い人なのか?

 フィーリア曰く、エルトワールの冒険者ギルドのギルド長はもう十数年の長い付き合いらしく、仲のいい友人関係にあるらしい。

 ただ、俺はどんな人物なのかはまったく聞かされていない。

 今回、フィーリアのその伝手で再試験までこじつけたらしいけど……。

 レミリアの不安そうな表情を見て怖くなる。


「お待たせしました。準備ができましたのでこちらへ」


 そうこうしてると受付嬢さんから面談の準備完了のお声が掛かり、俺とレミリアは面談を行う執務室へと案内された。


「どうぞ、中でギルド長がお待ちです」


 両開きの大きな扉の執務室。

 この部屋の中にギルドの長であるギルド長がいるらしいけど一体どんな人なんだろ。

 いや、そもそも人間なのか?

 エルフ、獣人、もしくはドワーフ……フィーリアと同じ魔族ってことも……。

 何か色々と緊張してきた。ドキドキしながら俺はドアをノックした。


「入ってくれ」


 扉の向こうから声が聞こえた。

 片方の扉を開けて部屋に入ると目に入って来たのは窓の外を眺める長身の高い女性の姿。

 彼女がまさかのこの冒険者ギルドの責任者……?


「来たか。お前が今回の冒険者希望の魔族だな」

「そうだけど、アンタがここのギルド長?」

「あぁ、吾輩がここのギルド長を務めている『アルテシア・グランゾール』だ」


 これはまた、今まで会った系統とはまた一味違う美少女が現れたな。

 そこにいたのはボサボサの黒髪を靡かせた "熊" の獣人だった。

 フィーリアやメリス、リーシャみたいな美少女は真逆に野性的な美しさだ。

 見事に割れた腹筋に太い上腕二頭筋。

 そして凛々しくも逞しさを感じる顔立ち。

 左目に眼帯、タンクトップの上から半袖の上着を羽織り。

 頭には黒い熊耳、お尻の付け根からは細長い尻尾。

 歴戦の戦士感を漂わせるも何所か温和な感じを醸し出している。


「いやぁ~、待たせてすまないな。魔物の処理で色々とごたついててね、ここ最近ようやくその業務処理が落ち着いた所なんだ」


 魔物っていうのは俺が助けたあの(ドラゴン)の事を言ってるんだろうな。

 でもまぁ、ひとまず街に被害が出なくて一安心だ。


「ちなみに、その接近してた魔物(ドラゴン)はどうなったんですか?」

「…………それがな、調査班の報告による急に居なくなったらしいんだ。激しい戦闘の跡は確認したんだがその魔物がどこに消えたのかはまだ不明なんだ」


「そ、そうなんですね……(汗)」


 何だ? 最初の意味深の間は……?

 ギルド長の何かを怪しむような視線。その視線は間違いなく俺に送られていた。

 何で? 何で怪しまれてるんだ俺は……?

 

「にしても、よく接近していた魔物が(ドラゴン)と分かったな。接近していた魔物の情報に関しては一般には伏せていたはずなんだが?」


「あっ……それはですね……えーーーーっと……」


 ヤッバい!?

 これはまずい! 迂闊なこと言っちまった!!

 確かにそれは魔物と直接対峙してないと知りえない情報だ。

 とりあえず何とか誤魔化さないと――。


「ま、街の商人達が噂しているのを聞いたんですよ。その噂を聞いて俺達もすぐに街を出たんです。流石に危ない目に合うのは嫌ですし……」

「ふむ、なるほどな……」


 う、嘘は言ってないぞ。

 商人らしき人たちがコソコソと噂しているのを聞いて魔物(ドラゴン)に会いに行ったんだ。

 そう、嘘は言ってない。嘘は……。


「あの、それで今日は冒険者試験の再試験ってことで来たんですが……」

「もちろん。受付嬢から実技試験の結果は聞いているぞ。ドルクを相手に一撃も受けることなく、圧倒的な実力差で合格したらしいな」


 ドルク? あぁ、あの実技試験の時の筋肉(マッチョ)ドワーフの事か。


「ドルクはうちのギルドに所属する冒険者の中でも上位に位置する強さだ。そのドルクに文句ない一撃を入れるとは……聞けばフィーリアの遠い親戚という話だがお前は何所の魔族だ?」


「じ、実はここ最近フィーリア……さまにはお世話になってまして」

「フィーリアとはどういう関係なんだ? 吾輩はフイーリアとは長い付き合いにはなるがお前のような魔族が知り合いにいるとは聞いた事がなくてな」


「え、えーーっと、その辺はちょっと言えない事情がありまして。とにかく親戚っては嘘じゃないですよ。今はフィーリア様の元で色々と修行させて貰ってるんです……」


「修行? 戦闘(たたかい)のか?」

「はい。あと宮廷魔術師のリズさんにも魔術や魔法のことを学ばせて貰ってます」

「戦いの修行中ということはダンタリオス家お抱えの兵士希望か?」

「まぁ、そんなとこです。俺なんてまだまだ何もできない新米、ひよっこもいいとこなんでね。今はダンタリオス家で色々と学ばせて貰ってますよ」

「ほう、ならあの能力(ちから)もダンタリオス家の修行の成果なのかな?」

「はい……? あの力ってなんの事を……?」



「最近のダンタリオス家の兵士は凄いな。なんせ魔道具もなしで魔物化した(ドラゴン)を元に戻してしまうんだからな」



「――――ッ!!!?」


「何で知っている、という顔だな。本当だったんだな、君が街に迫る魔物を止めたという事実は」


 え……? え? どぅえぇえええええッ!!?


 何で!? どうしてバレてんだよ!?

 あの場には俺とリーシャとフィーリアとメリスの四人しかいなかったはずなのに!

 それ以外はいなかった筈。どうして……? なんで!?

 何であの場にいないこのギルド長(この人)は知ってんだ!?


「魔物化した竜を、戻す……? いやいや、俺にそんな大それた事できるわけ……」

「惚けても無駄だ。確かな筋からの情報だからな。と言っても、吾輩様が直にその現場を見たわけじゃないんだがな」


「んじゃあどうしてそんなピンポイントで指摘するような事を……」

「お前、あの現場に魔物調査の先遣隊の死体があったのは覚えてるな?」

「いや、ですから知らないですってば……」

「あの死体の中にな、一人虫の息だったが生存者がいたんだ。その生存者がお前と魔物のやり取りをバッチリ見ていてな、その場にフィーリアも現れてお前と空に消えていった。そういう目撃情報がこちらには届いているんだよ」


 言われてみれば確かに。

 あの周囲にはその先遣隊らしき人たちの死体があった。

 原型を留めていない死体ばっかりだったけど、あの中に生存者いたのかよ……。

 まさかその生存者に見られてたなんて……。

 くっそぉ~、まさかのミス。

 っていうかあの死体の中に生存者がいるとか誰も思わねーだろ。


「さぁ、どうする? 目撃情報からその魔物化した竜鱗族を元に戻した魔族の特徴もこちらでは既に掴んでいる。魔族にしては小さい額の角に青白い肌。まずお前で間違いない、これ以上嘘を重ねても仕方ないと思うが?」


「ユウヤさん……」


 ハラハラと心配した表情をするレミリア。

 下手な事は言えない。でももうこれ以上惚けるも無理っぽいな……。

 どうする。魔魂喰の事を正直に話すか……?

 いや、魔魂喰はもはや存在していたのかも分からない架空の存在。

 実在はしていたらしいけど、そんな魔族の名前を出したところで信じてくれるか怪しいところ。

 そもそも、このギルド長は俺の事をどこまで知ってるんだ?

 生存者から口伝えに聞いたってことは俺が魔物を元の竜に戻した事は知られてる。

 俺が魂神(スキル)を使う場面を見られてる事は確定だろう。

 ならどうするか、このまま無理無理惚け通すか。


「ふふ、何か色々と考えているみたいだが、お前は何か勘違いをしている」

「勘違い?」

「吾輩は別に魔物の件について咎めるつもりはない。むしろ感謝しているくらいだ、この街を救ってくれたことにな。ただお前はフィーリアと一体どんな関係なのかを知りたかっただけなんだ。フィーリアは吾輩の古き友人、吾輩はフィーリアには恩返しきれないがある。その恩人が得体の知れない魔族とつるんでるとなると親友としては心配でな」


「ギルド長、ユウヤさんは――」

「お前には聞いていないレミリア。吾輩はそこの魔族に聞いているんだ」


 一括されてしまったレミリアの弁明。

 これじゃあ正直に話さないと先には進まなさそうだな。


「確かナラフジ・ユウヤ……と言ったな。ユウヤが名前でいいのか?」

「は、はい……」

「では改めて聞こう。ユウヤ、お前は何者だ? フィーリアとはどういった関係なんだ?」

「どういった関係って……単なる協力関係の中ですよ」

「協力関係?」

「まぁ色々と経緯(いきさつ)は省きますけど、今の俺はフィーリアに雇われている感じなんです。フィーリアは平和的に他種族との同盟を望んでいるし、もう既に友好関係にある種族も多い。でもそれを面白く思わない種族も多く、特に魔族の間ではそれを良しとしない者達が多いみたいなんです」


「確かに魔族は実力主義の種族、フィーリアが魔族の間では蔑まされているという話も聞いた。しかし、それがお前にどう関わってくるんだ」


「フィーリアをそんな外敵から守るため、そしてフィーリアがより他種族と友好関係を結びダンタリオス家を発展させるために俺が雇われたんです」


 協力関係というのは嘘じゃない。

 俺はフィーリアに協力する代わりに寝床や仕事を与えてもらい、魔魂喰の情報も教えてもらう約束になっている。そういう意味で俺はギルド長アルテシアには『協力関係』と説明した。

 しかし、アルテシアの表情を見るとまだ疑いは晴れていないように見えた。


「しかし、幾つか解せない事がある。お前は魔物化した(ドラゴン)を魔道具も使わず元に戻しそうだな」

「は、はい……」

「吾輩はそんな事を出来る魔族など聞いた事が無い。希少な魔道具を使ったんならまだしもお前はそれを能力(スキル)で治したそうだな」


「た、確かに竜を元に戻したのは俺の能力です。でもそんな危ないもんじゃあ――」

「それに装備も武器も使わずお前は素の肉体で竜をねじ伏せた。肉体強化の魔法も使わずそんなことを出来るのは英雄級の戦士、またはXランクの冒険者と限られる。そんな能力と肉体、お前は一体何所で手に入れた? お前は何所から来た魔族なんだ?」


「それは……。すいません、お答えすることはできません」

「ほう?」

「で、でも俺はフィーリアの味方です! それに俺には俺の目的がある、その目的を果たすためにも今はダンタリオス家の力が必要なんです。だから別に無償で手を貸してるとかボランティアで働いてるとかじゃないですから。お互いの利害の一致の上で手を結んでるんです」


「ふむ…………」


 しばらく考え込むアルテシアさん。

 ひとまず真実は濁し、嘘は言わないように話したけどアルテシアさんは腑に落ちないみたいだ。

 とりあえず、これ以上は下手な発言はやめておこう。


「しかし、こちらとしてはお前が何者なのか分からない以上、冒険者試験の合格を出すわけにはいかん。冒険者とは実力と信用で成り立つ職業だ。いくら実力が優れているとはいえ信用が無い者を冒険者にするわけにはいかない。このギルドの顔にもなるんでな」


 素性を明かさない事にアルテシアさんは納得いかないようだ。

 こちらも素性を明かせるなら明かしたい。

 でも実際、それは無理な相談なんよな。

 俺が魔魂喰である事はダンタリオス家だけの極秘情報。

 いくらフィーリアの長い付き合いの親友とは言え、この情報(こと)は絶対に教えられない。

 でも素性を明かさないと冒険者試験の合格は貰えない。

 さて、どうしたもんか……。

 ここで危険なリスクを負うぐらいなら、冒険者はいっそ諦めてしまうか……?

 憧れの職業になれないのは残念だけど仕事の食い扶持はフィーリアが用意してくれるし。

 現状、フィーリアの元で働いて鍛えた方が効率はいいもんな。


「はぁ、分かりました。今回は諦めますよ」

「ほう、諦めるのか?」

「ユウヤさん……。いいんですか? せっかくここまで来たのに……」

「しょうがないだろ、実力は大事かもしれないけど確かに信頼も大事だ。ギルド長の言う事ももっともだし、何事信頼は絶対不可欠だからな」


「でも……。そんなの私は納得いきません。ユウヤさんは私みたいな獣人でも対等に扱ってくれたし、それに病も治してもらいました。そんな優しい魔族(ひと)なのにただ素性が明かせないってだけでこんな……」


「病を、治した……? レミリア、お前患っていた病が治ったのか……? どんな医者も薬師も匙を投げたあの難病が……」


「はい、こちらのユウヤさんに助けてもらいました」

「バ、バカなッ!? あのレミリアの難病を治しただと……?」

「え、えぇ。レミリアの病気は俺が治しました。そんなに難しい病気じゃなかったですけど」

「レミリアの”無音病(むおんびょう)”はどんな医学を持ってしても治せなかった難病だぞ。現にダンタリオス家の魔法技術や医学を持ってしても完全に治せなかった。お前はそれをどうやって……」


 レミリアが患っていた『無音病(むおんびょう)』。


 それは音が聞こえなくなる病の事らしい。

 発症原因は不明、霊獣族の一万人に一人が発症すると言われている難病だ。

 無音病は単なる音が聞こえなくなる病じゃない。

 最初は聞こえる音が限定されていき、徐々に徐々に難聴が始まる。

 そしてやがて耳から音は完全に消え、内耳が腐敗していき、その腐敗は脳にまで侵攻。

 脳内にまで腐敗は侵攻し、思考がまともにできなくなり、いずれは死に至る。

 一度腐敗が侵攻すれば治すことは適わず、現医療技術では治す術は見つかっていない。

 幸い、ダンタリオス家の医療技術で腐敗の侵攻は止めれていたらしい。

 それでもまたいつ侵攻が始まるか分からない。

 レミリアはその侵攻に毎日怯えて過ごしていたんだそうだ。


 でも俺の魂神(スキル)にはそんな難病関係ない。

 何故なら俺が治すのは耳じゃなく魂だ。肉体と連動している魂を治せば万事解決なのだ。

 現にレミリアの魂の一部に腐敗が侵攻している部分があった。

 その部分に魂神を使えば身体の難病も綺麗に治るというわけだ。

 腐敗が心核まで侵攻していなかったのが何よりの幸いだった。

 心核にまで到達していたら俺でも治せていたかどうか……。


能力(スキル)を使ったんですよ、ぶっちゃけると魔物化した竜を元に戻した能力(スキル)と同じ能力(スキル)を使ったんです」


「し、信じられん……。そんな能力聞いた事が無いぞ」

「どうでもいいじゃないですか。俺がレミリアを治した所でアナタには関係ない事ですし」

「ユウヤさん、そんな言い方……」

「なるほど、信頼が得られぬから冒険者を諦めるか……。随分容易く諦めるんだな」

「アンタがそれを言いますか? アンタから信頼を得られなきゃ今の俺には冒険者は無理なんでしょ。現状、アンタから信頼を得る方法はないし、今回は大人しく諦め――」



「その信頼を得られる方法があると言ったら?」



「は……?」

「なるほど……。素性が不明な所が難点(ネック)だが実力と人間性は合格点を上げてもいいだろう。ユウヤ、一つ提案があるのだが聞く気はないか?」

「提案、ですか?」

「この提案を受けてくれるならこのギルドの冒険者になる事を無条件で認めよう。なんなら飛び級でCランク冒険者の称号を認めてやってもいい」

「Cランクって……ベテラン冒険者のランクですよね? そんな開始早々飛び級の昇級いいのか?」

「今から言う提案はそれぐらいの価値があると言うことだ。お前がこの提案を受けてくれるなら吾輩は面倒事を一つ解決できるし、お前は吾輩から信頼を勝ち取り、飛び級でCランクの冒険者になることができる。悪い話ではないと思うが?」


 思わぬ方向に話が転がったな。

 まさかこんな形でレミリアの難病を治した事が良い方向に転がるとは……。

 にしてもなんでアルテシアは急に信用する気になったんだろう。

 それに提案ってなんだろ。問題はそこだ。

 面倒事って言ってたけど、何か嫌な予感はするな……。


「その提案ってのは?」

「提案を聞く前に返事を聞こう。提案に乗るか、否か」


 どうやっても俺に提案を受けさせたいみたいだな。

 でもまぁ、ここまで来て冒険者の話はなしってのも勿体ないしな。

 素性がバレず冒険者になれるならそれはそれでありだ

 問題は提案がなんなのか……だ。

 さらに言えばギルド長の思考がまったく読めない。

 さっきは素性が分からないなら冒険者にはさせられないの一点張りだったのに。

 何故か今は提案を受ければ飛び級でCランクから始められるとまで言ってきてる。

 一体、何をさせるつもりなんだ……。


「ユウヤさん、ここは提案を受けましょう」

「でも信用していいのか? 相手はフィーリアの古い親友らしいけどこっちの素性を探ってきてる。提案ってのも無いようによっては面倒な事になるかも――」

「まさか。アルテシアさんはそこまで策士じゃないですよ、私が保証します。警戒心は強いですがそれもこの街のため、このギルドの冒険者のためでもあるんです。ユウヤさんが思うほど悪い方ではないです」


 自信満々にレミリアが答える。

 相当にレミリアは相手を信用しているようだ。

 相手はフィーリアの古い友人。

 それならフィーリアとかなりの絆があるはず。

 仮に俺の正体がバレたとしても悪い方向には転がらない……はずだ。

 なら俺がとる行動は一つしかないか。


「提案を受ければ冒険者になさせてくれるんだな?」

「もちろん、吾輩は契約も約束も破らないがモットーだからな。ユウヤ(お前)の冒険者の合格は約束しよう」

「はぁ、分かった分かりましたよ。んで、その提案ってのは?」

「ちなみに今から言う事は他言無用でお願いしたい。情報がまだ確定していなくてな、下手に街の住民たちに情報が洩れて、魔物の時みたいに不安にしたくない」


 唐突に真剣な表情になるギルド長(アルテシア)

 多々事ではなさそうな表情に俺は息を飲んだ。


「分かりましたけど。それで、俺に何を頼みたいんですか?」

「調査だよ。数日前あった竜鱗族の魔物化についてな……」


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