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詩集  作者: 香坂茉音
30/32

プラムと針孔


あれは24のとき 私はお姉さんの家で

日々絶えず 針孔めどに糸を通しました

あなたと結びついたのは 偶然じゃないよね


休みの日は電車に乗って出かけました

増えていく思い出とえびす顔

マメで優しいところ 気丈な働き者

針が刺さったの

あなたの恋人になれてよかったです


私は踊り あなたは歌う

二人だけの織地になる



それは31のとき クスクス笑って驚かす

その優しさに泣きました

一人お皿を洗いながら 涙で顔を濡らしました


休みの日は車に乗って出かけました

あなたの運転と子供たち

こだわりがあるところ ちょっぴり頑固なところ

キライじゃないよ

あなたの隣にいられてよかったです


私が繕い あなたが直す

二人だけの模様になる


小さなケンカを繰り返し

大きな思いやりに気付く

断ち切ろうとしたときも、

二人で泣いた日もあった



過ぎた60年のとき 私はあなたのお名前で

生ている時間の方が長いのよ

呼び方も手を繋ぐのも当たり前になったよね


休みの日は飛行機に乗って出かけました

増えていく写真と綿帽子

なんでもできるところ 記憶力がいいところ

分かっているよ

あなたと添い遂げてられてよかったです


私は踊り あなたは歌う

二人だけの織地になる



あなたの糸端が見えて 私はずっと願いました

解けないでと願いました

一人眠れぬ夜を過ごし あなたにそっと微笑んだ


節くれた手を重ねて語り合いました

大きな傷跡と堅忍さ

弱音を吐かないところ 自力で歩くところ

想っているよ

あなたと仕合せになれてよかったです


私は歌いあなたと踊る

二人だけの模様になる


ひと針ひと針積み重ね

増えゆく折り目を糸惜いとおしむ

あなたの生き方そのものが

全てに結びついているね



庭のプラムが熟す前 あなたは行ってしまいました

最後まで優しさを見せて

子供達にも囲まれて 遠くへ行ってしまいました


記憶力のいいあなただから

きっと私を覚えているよね

こだわりがあるところ ちょっぴり頑固なところ

キライじゃないよ

あなたの恋人になれてよかったです


私は踊り あなたは歌う

二人だけの織地になる


私が繕い あなたが直す

二人だけの模様になる



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