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東京Re-survive  作者: 櫻木 いづる
終章 彼方からの文
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第2章 銘と名の調べ2

「……。大丈夫? 僕らも行こうか」

「ひゃう……! は、はいです……!」

 緊張していたのだろう。

 秋葉さんは甲高い悲鳴のような返事をすると、僕の後ろに着いてくる形で歩き出す。

 けれど、その足取りは重かった。

「……もしかして、暗いところ苦手?」

「そ、そうじゃないんです……。入学式も自己紹介とかの時間も何もなくて。クラスに知ってる人、誰もいないなぁって改めて思ったら友達ができるかなぁとか、クラスに馴染めるかなぁとか不安になっちゃったんです」

「……。その気持ち、僕も解るよ」

 普通の学校とは違う。

 その理由は前もって聞いていた。

 けれど現実は想像とあまりにも乖離しすぎていて、正直戸惑いしかなかった。

「とにかく、急ごう。遅れないように」

「うん……」

 辿々しく言葉を交わしながら、昇降口へと向かう。

 外靴へと履き替えると、一足先に校庭に立っていた目黒先生のもとへと急いで駆け寄った。

「さっき引いたクジの紙は持ってきたな。その紙は三人一組になるようになっている。同じ番号どうしでチームを組め」

 三人一組になることにどんな意味があるのだろうか。

 けれど、質問することすら許さないと言わんばかりの口調に、クラスメイト達は黙って従う他なかった。

【れんよ。おまえさんのクジの番号はなんじゃ?】

(四番だけど……?)

【なんじゃ。随分と縁起の悪そうな数字よのう。おまえさん、クジ運まで悪かったのか】

(まるで人が不幸体質みたいに言わないでよ)

 リツの言葉に気が重くなる。

 それでも他の二人を探さなければ何も始まらない。

「四番の人、何処ですか?」

「――え? あっ、はいです! わたし、四番です!」

 そう言って駆け寄ってきたのは、まさかの秋葉さんだった。

【クカカッ、ことごとくこの女子と縁があるようだのう】

 リツがそういうのも無理はない。

 内心僕も驚きながら、互いにクジの番号を見せ合った。

「じゃあ、あと一人ですね。どなたでしょう……」

 不安そうな眼差しで、キョロキョロと辺りを見回す秋葉さん。その時、


「クジ番号……四番、ってアンタら?」


 酷く気怠そうな声が耳朶を打った。

「は、はい。そうですけ……ど」

 反射的に答えようとして、思わず言葉が固まった。

 初めてその人物の容姿を目にした瞬間、真っ先に目に付いたのはその髪色だった。

 ブリーチしたモノとは違う、深紅の髪を無造作に掻き上げている。

 そしてその肌は病的までに白く、瞳は血のような紅い色を宿していた。

 特徴のある、整った容姿。それはどこか非現実的でもあり……同時にある種との〝混血児〟であることが予想できた。

(まさか、そんなこと……)

 それは屋敷にいた頃のこと。

 遙か昔に、祖母が話していたのを辛うじて記憶している程度だ。

 けれども目の前の存在が、祖母の話していた〝混血児〟である可能性があることに、変に胸が高鳴った。

「はぁ、アンタらが俺のチームメンバーねぇ……」

 頼りなさそうだ、と呟く。

「俺の名は千石夏生。一応あの先公が『入学式らしいこと』を何もしない以上は、自己紹介くらいはしておかねぇとな」

 よほど目黒先生が嫌いなのだろう。

 遠くにいる目黒先生を親指で指し示しながら、少年――千石夏生は自ら名乗りを上げた。

「あっ秋葉原秋葉、です」

「僕は、日暮れん」

「秋葉に……れん、ね。ふぅん……」

 ジロリと睨め付けるような視線が痛い。

 けれど、それ以上は何も言ってこなかった。

「同じチームになった以上、仕方ねぇから付き合ってやる。けど、俺の足を引っ張るのはやめろよ。色々と面倒くさいのは嫌ェなんだ」

 酷く気怠げに、けれど一方的に拒絶の感情を突きつけられ、どう返すべきか戸惑いを覚える。

「は、はいです……。頑張ります」

 けれど秋葉さんは律儀にも返事をしては、ペコリと頭を下げた。

【なんじゃ此奴は。随分と不躾な輩じゃのう】

 念話で飛んできたリツの言葉に苦笑しながらも、僕は当たり障りない程度の挨拶と言葉を交わそうとしたその時だった。

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