第7章 禍津姫
目黒先生に連れられるまま、学園へと戻った僕は数時間の説教と反省文、そして三日間の謹慎を言い渡された。
禁域に這入らなかったとはいえ、今〝黄昏刻〟に這入ることは僕達生徒の命を預かる身としても一番大切なことなのだ、と語った。
「お前が兄貴を捜さなきゃならんことは理解してるつもりだ。だがな、それでお前の身に何かあってみろ。元も子もないだろうが」
「……はい。軽率な行動をして……すみませんでした」
「〝黄昏刻〟の中で出逢った男に助けられたとは言ってたが……本当に怪我はしてないんだろうな」
「はい。……多分、平夜さんは手加減をしてくれてたんだと思います」
それは実際に闘っている最中も感じたことだった。
誰かと何かがあったのか、『憂さ晴らし』だと平夜さんは言っていた。
けれど同時に、僕の力を試していたようにも思えた。
「……。ヘイヤ、だと? もしかして苗字は愛宕か?」
「え? はい……以前、呪術市にみんなと行った時に出逢ったんです」
「…………」
僕の答えの何がまずかったのだろうか。
何故か目黒先生は神妙な顔つきのまま黙りこくってしまった。
「あの、目黒先生?」
「いや、なんでもねぇ。……兎に角、お前は期日までに反省文と三日間の謹慎だ。わかったなら、今日はもう寮に戻って休め。疲れただろう」
「はい、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、僕は席を立ち教室を後にした。
寮へと続く赤レンガの道を一人歩きながら、ポツリとリツに声を掛ける。
「リツ……、平夜さんと闘っている時、変な感じがしたんだ」
【……嗚呼。見ておったよ】
「今まで〝開花〟だってできてなかったのに……闘っている時、凄くゾクゾクしたんだ。〝禍津者〟と対峙した時とは違う感覚で、冥血が……悦んでいるのが感じとれた」
【……。冥血の声が聞こえたのか?】
「うん……」
それは、確信だった。言葉にならない聲。聲にならない感情。
それが掌を中心に、まるで血管を這い上がり心臓へと雪崩れ込んできたような感覚だった。
【そうか……】
それ以上、リツは何も言わなかった。
僕も、何も言えなかった。
ただ平夜さんと闘った時の感覚――それはしばらく忘れられないような気がした。




