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半信半疑

(7)半信半疑


武は母親に事件の内容について説明を続けた。


「主税は殺されたんだ。犯人は主税を殺した後、家に放火した。死体を燃やして証拠を隠滅するために」


「何を言ってるの?事故だったんでしょ?」


「事故じゃない、殺人だよ。今日の放課後、警察が僕たちに会いにきて、その時に警察官が言っていた。確か、米沢南警察署の加藤と羽賀という警察官だ」


「警察が会いに来たって、あなた何かしたの?」


「火事が起きた日、僕と同級生4人は主税の家にいたんだ。殺人と放火は僕たちが主税の家から帰った後に起きた」


「じゃあ、主税くん以外は無事だったのね?」


「どうかな?警察によれば、犯人は家の暖炉に灯油をまいて放火したらしい。警察と消防が調べたら、焼け跡から死体が2人分出てきた」


「ご家族も亡くなったの?」


「家族は死んでないよ。主税の家族は事件の時外出していたから無事だったんだ。もう一つの死体は強盗のだ」


「強盗?話が分からないんだけど」母親は混乱している。


「あの日、僕たちは主税の家でテレビを見ていたんだ。そうしたら、包丁を持った強盗が入ってきた。強盗が『金を出せ!』って暴れだしたから、びっくりしたよ」


「それ本当?」母親は武の話に半信半疑のようだ。


「本当の話だよ。強盗のすきを見て、同級生の中村昭が暖炉に置いてあった火かき棒で強盗を殴ったんだ。そしたら、強盗の後頭部に刺さって動かなくなった」


母親はさすがに動揺しているようだ。武は話を続ける。


「死んだの?」


「多分ね。僕は確認してない。死んだかどうかを確認するのは怖かったし。それに、後頭部に刺さった火かき棒を抜いたら、血が出てきそうで気持ち悪かったんだ」


「警察には連絡しなかったの?」


「しなかった。主税の両親が警察に連絡してくれると思ってた」


「そうね。子供だけで警察の対応するのは難しいかもしれないね」

母親は息子を正当化する発言をした。息子を守るためだろう。


「だから、僕たちは動かなくなった強盗をそのままにして、主税の家から帰った。僕は今でも強盗が死んでいたかどうか分からない。主税が殺されたのは僕たちが帰った後に起こった」


「強盗がその時生きていたとしても、発見時には焼死体・・・」


「焼け跡から死体が2人分出てきたけど、警察は死体が主税と誰なのか知らない。だって、警察は強盗の件を知らないから。だから、僕が警察に行って説明する必要があるんだ」と武は母親の目を見て言った。


「この話、本当?」母親はまだ武を疑っている。


「本当だよ。僕の心配はここからなんだけど・・・」


「話してみて」


「なぜ主税を殺害する必要があったのかは分からないけど、犯人は強盗の死体を処分したかったと考えるのが自然だよね。タイミングが良すぎる。犯人は暖炉まで強盗の死体を運んで、灯油をかけて燃やしたと思うんだ。燃やしてしまえば、証拠隠滅できるから」


「主税くんは犯人の証拠隠滅に巻き込まれた?」


「僕はそう思ってる。強盗の殺害を知っているのは、僕以外には中村昭、井上聡、堤博、安部茂の4人。僕は主税殺害の犯人じゃないから、犯人はこの4人のうちの誰かだと僕は考えている」


「犯人は武も狙っているの?」


「それは分からない。でも僕を殺害する動機はある。僕が強盗の件を警察に話したら、犯人にとってまずいからね」


「サスペンス映画みたいね」母親は呑気に言った。まだ武の話を信じてないようだ。


「だから早く警察に強盗の件を伝えて、容疑者として同級生4人を調べてもらう必要があるんだ。僕が殺される前に」


「話は分かった。もう一度聞くけど、この話は本当の話なの?」と母親は改めて武に確認した。


もし武の話が虚偽だったら、山田家は町で『虚言癖のある家族』と認定されてしまうだろう。

狭いコミュニティなので生きづらくなる。

父親が旧制中学校(今の高等学校)だから特に気を付けないといけない。

母親の気持ちは理解できる。


「本当の話。だから、警察に信じてもらうために父さんと一緒に行かないといけない」


「分かった。一緒に父さんにお願いしてあげる。それと、お父さんが帰ってくる前に、今の内容を簡単でいいから、紙に書いてくれない?」


「なんで?」と武は聞いた。


「警察に行っても、緊張して話せなかったらどうするの?」


「ああ、そういうこと。分かった」


武は父親を待つ間、事件の概要を紙に書くことにした。


母親には文章は箇条書きで書くように言われた。

小学生の文章は支離滅裂で読みにくいと思っているのだろう。


大人でも読みやすい日本語を書ける奴は少ない。

母親も文章を上手く書けるとは思えないし、武の文章力と変わらないんじゃないかと思っている。

でも、反抗すると父親に説明する時に手伝ってくれないかもしれないから黙って従うことにした。


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