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クローン人間

(23)クローン人間


武はやっと米沢戦争の原因を理解した。

米沢牛の脅威となり得るシン米沢牛の存在は、米沢派にとって好ましくはないだろう。それでも、シン米沢派の中に大量のスパイを送り込んだりするのはおかしいと思っていた。


人間のクローン技術となれば別次元の話になる。古くから権力者は不老不死を欲しているし、拒絶反応の起こらない臓器移植にも利用できる。

倫理的に問題のある危険な技術であることは確かだが、その技術を欲しい国家、企業、個人は無数に存在するだろうことは、小学生の武にでも理解できた。


武にはいくつかの疑問があったので、クマさんに質問した。


「人間のクローンって、本当にできるの?」


「ああ、できる。ここだけの話だが、既に米沢市南部にはクローン人間がいる」


「え?僕の周りにもいるってこと?」武は驚いてクマさんに聞いた。


「そうだ。体細胞クローン技術を人に応用したのは、米沢市南部にあった農業生物研究所の竹村という研究者だ。黒毛和牛のクローンができるんだったら人のクローンもできるだろう、という興味本位だったらしい」


「マッドサイエンティストだね」


「ああ、狂ってる。竹村がクローン人間を最初に作ったのは、第二次世界大戦の始まる前だ。当時の日本は日独伊三国同盟をドイツ・イタリアと締結していていたのは知ってるよな?」とクマさんは武に言った。


「もちろん」


「戦時中の大日本帝国は軍事力を高めるために、質の高い兵士の数を増やす必要があった。同盟国のナチスドイツも同じで、質の高い兵士の数を増やそうと考えていた。当時は『竹村のクローン技術は戦争を左右する』とまで言われていたんだ」


「クローン戦争か・・・」武は呟いた。


「実際にはクローン戦争は起きなかったけどな」


「どうして?」


「大日本帝国とナチスドイツは竹村の研究に巨額の資金をつぎ込んだが、クローン人間の量産が開始した頃には戦争は終結に向かっていた。クローン人間は兵士として育てるまで年数が掛かるから、終戦に間に合わなかったんだ」とクマさんは言った。


「時間切れか」


「でも、日本政府はクローン技術を独占したかったから、竹村の研究をGHQから隠したんだ。この施設に。だから、竹村の研究はこの施設で今も続いている」


「え?でも、ここには牛舎しかないよね」


「お前にはあれが牛舎に見えるか?」とクマさんは武に聞いた。


「うん。見えるよ」


「じゃあ、カモフラージュは成功だな。研究施設はもう1階下にある。牛舎の中に入り口があって、そこから出入りできるようになっている」


「二重底みたいだ」


「まさに二重底だ。侵入者は地下に降りてきたら『牛舎しかない』と思うよな。さらに下があるとは思わない」


「へー。クローン人間は米沢市南部にいるって言ったよね。誰がクローン人間か見分ける方法はあるの?」


「あるにはあるが、それを知ってどうする?」


「僕の周りの誰がクローン人間か分かるかな、と思って」と武は言った。


「興味本位なら教えない。お前は自分がクローン人間だと知らされたらどう思う?」とクマさんは武を諭すように言った。


「僕がクローン人間だと知ったら、ショックを受けると思う。クローン人間が周りにいても言わない方がいいよね」


「そうだな。クローン人間の足の裏には印が付いているけど、普段は他の人が見ることはない。クローン人間かどうかは調べない限りは分からないから、気にしなくてもいい」とクマさんは言った。


「足の裏に印?」


そう言うと、武は履いていた靴を脱いで足の裏をクマさんに見せた。


クマさんは驚いた表情で「その印だ・・・」と小さく言った。


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