波野雪花はあれこれ考える
換えたばかりの室内灯が煌々と灯る自室に雪花は入った。
「良かった、近所の人ってだけで」
ふいに口をついて零れる。同時に、床に腰を下ろし、洗って乾燥機にかけたサワから借りたティシャツとジャージをたたみ始めた。
サワを謙吾のいい人だと勘違いをした時の鼓動の高まりや、ほっと一安心にクールダウンした感覚が蘇る。集中豪雨を受けたとはいえ、CDは渡せた。明日も洗ってもらった制服を取りに行く&借りた服を返しに行くという口実で、謙吾の家の前を通ることができる。
――もしかしたら、たまたま玄関から出てくるかもしれないし、何か用事をつけて家に行こうかな。けれど、CD渡した昨日の今日で、またってのも怪しく思われるかな
思いがうたかたに浮かんでは消える。手にしたサワのティシャツ。掲げて広げる。首元がいささかよりも緩い感じだと改めて思った。
――もしかして、龍宮くんは、お風呂上りの私を見て……どう思ったかな。ドキドキとか……してたりして。この首元なんかが……
ティシャツを見ただけで想像が頬を熱くしていく。
謙吾の家の前から自転車を滑らせた時、何度も振り向こうとしていた。
――振り向いて龍宮くんがいなかったらさびしいけど、それは無理もない。でも、見送ってくれるくらいは。でも、火照って、何よりうれしくって緩んだ顔になっていたら……そんな表情を見せるわけにはいかなったし
だから、ペダルを漕ぐスピードが尋常でなかった。
――早く明日にならないかな、楽しみだな
たたみ終った衣類を白色のビニル袋に入れ、講習の復習のために机に向かった。