怖い話(体験談)
以前勤めていた会社での話。
特にオチも無いが、実際に体験した不可思議な話。
当時ブラック企業なんて言葉がなかった時代、俺は同僚(以降はAとする)と二人で残業をこなしていた。
この会社では最後まで残業した人(新入社員に限る)が建物の施錠をするという理不尽な決まりがあり、その日も例に漏れず俺とAは1F、2F、ロッカールームが有る3Fを施錠しセキュリティをロックする手筈だった。
時刻も23時を過ぎたあたりで仕事を切り上げ、終電の心配をしながら帰り支度をして、いざロッカールームの施錠に差し掛かった時に異変が起きた。
………バン!!
突如鳴り響く大きな音。出処を推測するに、さっきまで着替えをしていたロッカールームの中でロッカーのトビラを叩きつけるような大きな音だ。
俺「俺ら以外誰も居なかったよな?」
A「誰かの私物がロッカーの中でバランスでも崩したんじゃね?」
念の為、再度ロッカールームに入り原因を探る。
しかし、それらしき原因も見当たらず面倒だったので、何も聞かなかった事にして帰ろうということになった。
ロッカールームのトビラを閉め、鍵を掛け、一度引っ張って施錠の確認をして
ドアノブから手を離した瞬間
バン!!………バンバン!!!……ドン!!ドンドン!!
叩きつける音はロッカーから、施錠したトビラに場所を変え今まさに目の前でガタガタと振動している。
俺「…ヤバくね?」
A「…ヤバい。逃げよう。」
走って逃げ出した。全力で逃げた。逃げてる最中も後ろからうめき声が聞こえたような気がしたが無視した。最後のセキュリティーも手が震えながらロックした。
俺「何あれ?マジ怖いんですけど明日からどうすんのマジで?もう残業とか無理でしょだってあんな…」
A「俺霊感とか何も無いけど、あんなハッキリ聞こえるもんなの?意味わかんねぇ…」
突然の恐怖と、非現実を体験した興奮が入り混じったような不安定な精神状態でその日は帰宅した。
翌日、上司に報告したが残業をしたくない新人の言い訳と取られ無意味な叱咤を受けた事は言うまでもない。
それ以降も細々とした怪異に見舞われたが実害がないので全て無視して働き続けたが、結局数年後には業績悪化で会社は倒産した。
後日談の様なもの。
倒産時の荷物整理の時に建物のオーナーと話す機会があったので、印象に残っていた異音について聞いてみたところ、以前建物を借り入れた会社で自殺者が出ていたらしい。ロッカールームの有る部屋だったそうだ。