二話 勇者の弟というなの冒険者3
僕たちはギルドから出て、王都の外へと向かった。理由はもちろん依頼のため。
「はぐれゴブリンの討伐、ねえ」
リオンさんは依頼内容が書かれた紙を片手に呟く。
「ゴブリンなんて僕、見たことないよ」
というより魔物自体、戦ったことも見たこともない。
「不安なの?」
「べ、別にそんなことないよ!」
悪戯っぽくいうリオンさんに少し反抗する。いや、図星なんだけどさ。
「ごめんごめん。でも、大丈夫よ。一匹くらいならどうとでもなるし、剣も貸してもらったんでしょ?」
「うん」
僕は背中に背負った青銅の剣の柄に触れる。流石に僕の魔法ではゴブリンも倒せない、という事でギルドから貸してもらった剣だ。
「お兄さんから剣を教えてもらったりとか、してないの?」
「ううん。教えてもらったよ。少しだけだけど」
本当に少しだけ。多分一ヶ月もなかったと思う。
「なら、少しは期待してるからね」
「が、頑張ります」
話をしている内に、王都の出入り口まで到着していた。昨日と同じように長い門をくぐり、見張りの兵隊さん達に挨拶をする。
「えっと、王都から見て東方面にある村、と」
リオンさんが紙を見ながら呟く。
「東ってどっち?」
「こっち。付いてきて」
「はーい」
言われたとおり、後ろについて行く。
王都に来る途中にも思っていたことなんだけど、この周りには本当に何もない。あるとし
てもちょくちょく木が生えてる位でその他は何も見当たらない。
「どうして、こんなに何もないの?」
「危険だからよ」
リオンさんに聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
「危険だから?」
「ええ。王都の北側はほとんど戦場みたいな所だからね」
リオンさんは続ける。
「そこに行けるのはBランク以上の冒険者か一部の偉い人だけ。それ以外の人は危険過ぎるから近寄る事も禁止されてるの」「へー」
感心する僕に「それから」と付け加える。
「Bランクの仕事はAランクの人たちが逃した魔物を倒すこと。それでも逃しちゃった魔物を倒すのがCランクの仕事なの」
・・・・・・・ん?
「じゃあ、このあたりは危険じゃなくない?みんなが襲われる前に倒しちゃえば良いんだから」
「言うだけなら簡単よ。でも現実はそうはならないわ。大体、討伐依頼が出てる時点でノエムくんが言うようにはなってないでしょ」
「だから、誰も王都の近くに住もうとはしないの?」
「そういう事。王都の中だと話は別だけどね」
「はへー」
リオンさんは物知りだなあ。
「ま、そんな事考えたって仕方ないわ。とにかく今は依頼をこなして行けば良いだけなのだし」
「そうだね」
確かに考えたって仕方がない。考えたところで、それが出来る程の力を持ってないんだから。
「期待してるわよ?勇者の弟くん?」
「うん!頑張るよ!」
そう答えると、リオンさんは何故か苦笑いをした。
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