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86.「俺の代わりに、ある物を国際探索オークションに出品してもらいたい」

「つまりハンナさんはこの俺の。超天才イケメン暗黒魔導士様の力を借りたいと。そう言いたいわけか?」


「超天才? 誰が、いえ……はい。お願いするわ。します」


「なるほどなあ。俺としても力になりたいのは山々であるが……」


チラリ。


「山々であるが……何よ?」


「しかしだな。俺のギフトは、たかがSSR。ゴミである」


「ゴミであるって何よ……白々しい。そんなこと欠片も思ってないでしょうに……あーもう。SSRは最高レア。わずか3パーセントの選ばれた存在。ダンジョーは凄い。天才っ!」


「そうか? しかしだな。ダンジョンでは凄いかもしれないが……ダンジョンを出た俺はゴミである」


「まだ続くの? えー。近いうちに魔素でどこもかしこもダンジョンになるんだから関係ない。ゴミどころか金品。ダンジョーはダイヤモンド。みんなの憧れだわっ!」


「そうか……俺はダイヤモンドでみんなの憧れだったのか……ということはだ。もしかするとハンナさんも俺に憧れていたりするのだろうか?」


「ファック! じゃなくて。えー。はい。はじめて見た時からイケメンだなーって思ってました」


若干、棒読みな気がしないではないが。


「そうだったのか……やれやれ。国際結婚は面倒なのだがな……ハンナさん。いや、ハンナにそうまで迫られては仕方がない」


ハンナの手を取り口づける……その寸前にイモが割って入っていた。


「お兄様。そこまでです」


いだだ。イモ。俺の頭をつかむのはやめてくれ。ハゲる。


「ハンナさん。いくらお兄様が魅力的だからといって、せっそうなく発情されては困ります」


「いえ。どこをどう見ればアタシが迫ってるように……むしろアタシは被害者で……」」


「とにかく。お兄様も冗談はやめてあげてください。お兄様がハンナさんを相手にするはずないでしょうに……本気にしては可哀そうです」


まあ、俺の偉大さも十分に分かっただろうから、このあたりにしておくとしよう。


「冗談はここまでだ。友人が困っているのに聖人君主を自称するこの俺が見過ごそうはずがない。喜んで協力する。が……」


「……何が条件? 言ってみなさいよ?」


「俺の代わりに、ある物を国際探索オークションに出品してもらいたい」


国際探索オークション。

ダンジョンで発掘されたアイテムを出品。インターネットを通じての入札で、最も高額な値段を付けた者が落札できる競売である。


億を超える値がつくことも日常とあっては、トラブルを避けるため参加するにも権限が必要であり、無名の探索者個人が参加できるものではない。


「日本からでは出品できないアイテムってわけ?」


日本ではドロップ品の全ては日本探索者協会の買い取り。買い取り価格に不満の場合、はじめてオークションとなる。


その場合は日本探索者協会が代理として出品。落札後に金額を受け取る仕組みとなる。


もちろん出品するからには、ドロップした場所、相手、アイテムに関する説明などを探索者協会に申告する必要があるわけだが……自宅ダンジョンが秘密であるため説明は無理である。


「それで、出品するアイテムって何よ?」


「これだ。黄金モンスターの肉。食べることで新たなスキルを習得できる」


俺は自宅から持ち出した黄金アメーバ肉を掲げて見せる。


「!? ……本当なの?」


「本当だ。ハンナ。試しに俺の腹を殴ってみてくれないか?」


「へー……本気で殴って良いの?」


腕をグルグル回し始めるハンナ。


いや待て。そういえばハンナは接近戦の実力はどうなのだろう? 仮にもURギフトで結構なLVであるのだから弱いはずもなく。


「えーと……軽く。2割くらいの力でお願いします」


そもそもが少し叩くだけで十分に効果は分かるのだから、わざわざ痛い思いをする必要はない。


「そう? それじゃ、いくわよ」


ズドン


軽く引いた後、瞬時に突き出されたハンナの拳が俺の腹肉にめり込み


ポヨン


弾かれる。


「なにこれ? アンタのお腹ぶよぶよじゃない。どうなってるの?」


痛い。軽くって言ったのに……ごほっ。

いや咳き込んでいる場合でない。


「ぐぐ……黄金アメーバ獣の肉を食べて得たEXスキル。プリンボディ。打撃に対する耐性を得る効果がある」


「へー……すべすべぷにぷにしてるわね」


俺のお腹をさするハンナ。少し気持ちよい。


「……ハンナさん。少し触りすぎではないですか?」


「だってぷよぷよ気持ち良いもの。仕方ないじゃない」


「駄目です。そこまでにしてください」


無念。ハンナの手はイモに引きはがされてしまった。


「ふーん。これがアンタのダンジョンでは簡単に手に入るってわけ?」


簡単にではないが。そしてアンタのダンジョンとは何だ?


「アンタさっきダンジョンを往復してきたって言ったわよね? 見たところアンタの飼い猫を連れてきたみたいだけど……日本の普通のダンジョンに飼い猫がいるはずないじゃない」


なかなかにハンナは鋭いな。

それでこそ秘密を見せた甲斐があったというもの。


「往復してきたのは俺の自宅ダンジョン。つい先日に発見したばかりなのだが、それはもうびっくりしたものだ」


「へー。確か日本ではダンジョンを発見したらすぐ報告。民間でダンジョンを保有するには許可が必要だったわよね?」


「忙しくて報告する暇がなかっただけだ。後で時間のある時に報告するから何の問題もない」


「今は無申告の無許可ダンジョンってわけか。イモさんがギフトを獲得したのもそこってわけね」


まあその通りであるが……あくまで日本の話であり、オリジン国籍であるハンナには関係のない話。


「そうでもないわよ? とりあえずは、その子の密入国は関係あるわよね」


ニャーニャー地面を転がるニャン美と、そのお腹を撫でるイモを見たハンナがニヤリ笑う。


「まあ良いわ。で、簡単に手に入るってのはアンタもイモさんもスキルを習得済みだからよ。有用なスキルを自分たちで習得しないはずがないしね」


危険なダンジョンへ入るのにジャージで十分なのも、EXスキル【プリンボディ】を得ているため。


「そして1回オークションに出すだけなら、日本探索者協会に代理出品してもらえば良いだけ。今後も継続して出品するのにアタシというかオリジン国を利用しようと。そういうわけでしょ?」


そのとおりである。

1回だけならドロップ場所をごまかした上で、日本探索者協会に代理出品してもらえば良い。しかし、俺個人が2回3回と繰り返し黄金肉を持ち込むなら明らかに異常事態。疑われるというレベルでない。


だからこその取引。

モンスターゲートを調べるその代わり、黄金肉の出所について秘匿してもらった上でオリジン国から出品する。


「手数料として落札額の3割を支払う。それと、この黄金肉を1個無料で差し上げる」


「ふーん。でも日本とは協定を結んでいるのよ? オリジン国としては、日本探索者協会を裏切るような行動はできないわよ?」


「それなら何の問題もない。黄金肉はここオリジンダンジョンで手に入れたものだからだ」


未知の遺跡であるダンジョンを、はたしてどの国の領土と定義するのか?


基本はダンジョン入口の土地を所有する国に属するとされているが……入口が複数存在するダンジョンも発見されている。


欧州において、仏国と伊国の2カ所に入口の存在するダンジョンがそれであり、どちらの国の探索者も入場が可能。拾得物も両国どちらでも売却が可能となっている。


それにならえば俺の自宅ダンジョン。

正規の入口は日本にあるが、モンスターゲートを利用すればオリジン国から入ることも可能である。


つまりは自宅ダンジョンのドロップ品を、オリジン国で売却しても何の問題もないわけだ。


「モンスターゲートを移動できるという理屈をしらなければね」


ハンナは俺が差し出す黄金アメーバ肉を手に取ると、バリバリ謎ラップを剥がして、その場で口におさめていた。


「モグモグ。ふーん。ゼリーみたいで美味しいわね」


食べたということは、契約成立ということ。

そして、そうだろうそうだろう。黄金アメーバ肉の味は、普通のアメーバ肉とは比較にならない旨さである。


ゴクン


ハンナはEXスキル【プリンボディ】を習得した。


「確認したわ。アンタの言うことが本当だって」


ハンナは自分の身体をさわり、ぷよぷよ具合を確かめる。


「パパに話してアンタの代わりに黄金肉をオークションに出してあげる。オリジン国はあくまでオリジンダンジョンを出て来たアンタから黄金肉を受け取るだけ。黄金肉がどこでドロップしたかは関与しない。それで良いわね?」


ことは国防に関する問題。オリジン国の存亡がかかっているのだから、無茶な理屈だろうが押し通せるわけだ。

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