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74.さすがはイモ。良いところに気がついたものだ。

5月下旬。


自宅ダンジョン地下3階。


「ホブゴブー!」


ガキーン


強烈なパワーでもってゴブリン獣チーフが振るう剣を、俺はゴブリン王の盾でもって受け止める。


「弾き返せ! 暗黒リフレクト!」


瞬間。盾を発した暗黒デバフは、ゴブリン獣チーフが握る剣を通して相手の体内に流れ込む。


デバフ発動:ゴブリン獣チーフは麻痺


「ゴ、ゴブぶ……」


動きを止めるチーフの首筋へと、俺は包丁を振り下ろした。


ズバーン


牛パワーで持って振るう斬撃が肉厚の首を両断。

ゴロリ。身体を別れたチーフの頭が地に落ちる。


よし。もはやチーフ相手にも遅れはとらない。


地下3階。相変わらず集団で押し寄せるゴブリン獣を相手に、まずは暗黒の霧で雑魚どもをデバフ漬けにして動きを止める。


デバフに抵抗するチーフに対しては、直接体内にデバフを流し込み始末する。この流れでもって戦うなら、いくらゲートからゴブリン獣が溢れようが危なげなく制圧可能である。後は麻痺や恐怖、睡眠で動きを止めるゴブリン獣どもを始末するだけ。


「ごぶっごぶっ」


いや……まだ暗黒の霧に抵抗するやつが居たか。


ゴブリン獣ヒーラー。

いっちょまえに暗黒の霧に抵抗するウザイやつ。自前の回復魔法で付近のゴブリン獣を必死に回復させているが……


「イモにー。イモに任せてー」


そういうが早いか、イモは剣を片手に走っていく。


いや。わざわざ近づかなくても……遠くから電撃を放てば一撃だろうに。


最近のイモは電撃を控えるようになっていた。

相手の数が多い時こそ初手に電撃や雷撃を使いはするが、それ以降は──


「とー! 電撃ライジング斬りー」


ズバーン バリバリバリー


一刀で斬り落とされるゴブリン獣。

その身体に電気が走り黒焦げの炭と化していた。


どうやら斬りつける刀身に電撃をまとわせることで、いわゆる魔法剣的な使い方をしているようである。


「でへへー。どや? おにいちゃん」


斬り落としたゴブリン獣の頭を片手にニコニコ持ち上げる。


首を掲げて笑みを浮かべるとか、普通なら近寄りたくないヤバイやつであるが……


「うおー凄いぞ。イモは最高やー」


美少女は何をやっても絵になるもの。イモが行うなら可憐であり芸術である。


「しかし、わざわざ近づかなくても良いのでは? 危ないぞ」


イモに何かあっては、玉のお肌に傷でも付こうものなら、ショックで俺が死ぬというのに危険である。


「でへへ。前におにいちゃんが言ってたもん。イモの弱点は接近戦だって」


イモは後衛の魔法使い。確かに敵に接近されては危険であるが、それを克服するために?


「そうだよ。おにいちゃんと2人だもん。弱点をなくさないとね」


確かに。他の探索者のように6人パーティを組むのであれば、互いの弱点をカバーすることも可能。しかし、自宅ダンジョンでは俺とイモの2人きり。俺が盾を持つとはいえ、前後同時に挟撃されては防ぐ事は叶わない。


「それにね。この剣。なんだか魔法の通りが良いんだー」


イモが持つのはゴブリン王の剣。俺が持つ盾のように、魔法を増幅する効果でも付いているのだろう。同じ電撃でも剣を通して放つ方が、より威力が上がるというわけか。



■ゴブリン王の剣(SR)

魔法ダメージを10パーセント増加。消費魔力を10パーセント軽減する。



「お? 動き出しそうなのがいるよ? やっつけるぞー」


言うが早いか、イモはゴブリン王の剣を嬉々として振り回し突進して行った。


うーむ……何だかんだ言ってはいるが、新しいおもちゃを手に入れて振り回したいだけな気がしないでもないような……


「にゃーん」


俺の足元で暇そうにするニャンちゃん。接近戦をカバーするだけならニャンちゃんが4匹もいるわけで……


ま、まあ、デバフで動きを止めるゴブリン獣の止めをイモに任せて、俺はドロップ品の回収に動く。


キラリ。地面に輝く黄金肉。


これは黄金ゴブリン獣の肉か。モンスターとはいえ人型をしていた相手の肉は微妙に食べづらいが……これも強くなるため。それに料理してしまえば元の見た目など関係はない。


地下3階。ゲートを湧き出したゴブリン軍団を全滅させたところ、俺のレベルがアップしていた。



■SSR+ 暗黒魔導士改 LV30 1↑UP


・スキル:暗黒の霧+(五感異常、全能力減少、毒、腐食、魔力減少蒸発、恐怖、麻痺、睡眠、混乱、放心、封印、全属性耐性減少、猛毒、呪い)


・スキル:暗黒抵抗:暗黒強化:暗黒打撃:暗黒熟練

・EXスキル:プリンボディ:鋭利歯:偽装:牛パワー:赤外線感知



ついにLV30の大台。

国内でLV30に到達したというニュースはないため、俺が国内ナンバー1となった瞬間である。


「お? イモは35だぞーおにいちゃん」


……国内ナンバー2となった瞬間である。

ついでに言うならば、現在、発表されている限りの最高LVは米国の探索者。そのLVは33である。


「やったー! もしかしてイモが世界チャンピオン?」


可能性はある。が、発表されている情報が全てではない。


特に軍隊が絡むならそれは国防に関する機密情報。自衛隊にしろ米軍にしろ、連日ダンジョンに籠っているのだ。その内情が明かされるはずもない。


「それじゃイモ。無敵要塞へ戻ろう」


地下2階。無敵要塞へ戻るその前に、俺は同じ草原広場にあるモンスタゲートへ足を運ぶ。


「ん? どーするの?」


「まあ見てなって」


LV30になったということは、地下2階のモンスターゲートを掌握可能となったわけで。


─黄金ダンジョン地下2階その2

─LV30登録済み:城

─現在のステータス:停止中


草原広場。そのモンスターゲートの自動転送を停止した。


「よし。これでこのゲートからモンスターは現れない」


「おー。それじゃ夜も見張りは必要なしの眠り放題?」


「いや。草原広場以外のゲートはそのままだから、外から入って来る可能性はある。見張りは必要だ」


「なんだー」


それでも今までより安全性が増したのは間違いない。


「次はモンスター召喚を行うぞ」


「召喚? なになに? モンスターを仲間にするの?」


残念ながら、そういうソシャゲのガチャな召喚ではない。

召喚で現れるモンスターは普通に敵対的。倒すしかない。


……いや。もしかしたら交渉次第では……?

まあ、どちらにせよ今から召喚する相手に交渉は無理だろう。


・召喚転送を実行


─召喚する対象を選んでください


 現在のダンジョン魔力:7026


・黄金ウシ獣  :4000

・黄金ヘビ獣  :4000

・黄金バッタ獣 :4000

・黄金イノシシ獣:4000

・黄金ハイエナ獣:4000


よし。魔力は溜まっているな。


ここ地下2階は無敵要塞のあるニャンちゃんたちの本拠地。24時間休みなくモンスターを退治しているのだから、この程度は溜まって当然。


しかし地下1階の黄金モンスター召喚に魔力が2000必要だったことを思えば、倍の4000が必要になるのか。


相手モンスターの強さに応じて必要魔力が上がると考えて良いのだろう。


俺はリストから黄金イノシシ獣を選択して召喚する。


モンスターゲートが輝き、その渦の中から黄金イノシシ獣が飛び出した。


「イノー!」


「暗黒の霧」


デバフ発動:イノシシ獣は麻痺


「イ、イノー?!」


ゲートを出ていきなりで申し訳ないが……


「イモ。頼む」


「おー。電撃ライトニングスラッーシュ!」


ズンバラリン。ただの一撃で黄金イノシシ獣は黄金肉を落として消えた。

さっきはライジング斬りだったような気もするが……どちらでも良いか。


■SSR+ 暗黒魔導士改 LV31(1↑UP)


黄金ゴブリン肉と黄金イノシシ肉を手に俺たちは帰宅する。


「それじゃイモは肉を切り分けるねー」


うむ。やはり肉といえば焼くに限る。

イモが準備する間、俺はホットプレートを机にドン置きしてコンセントに差し込んだ。


「そーいえば、この黄金肉って1個で何人までスキルを習得できるのかな? ニャンちゃんたちにもスキルを分けて上げたいよねー」


なるほど。さすがはイモ。良いところに気がついたものだ。


今までは肉を3等分。俺、イモ、母の3人で食べていた。

ということは、1個で3人まで習得できるのは確実。


「よし。少しづつ肉を食べながら、どの時点で習得できるか試してみるか」


「おー。それじゃおにいちゃん。これをどぞー」


イモが切り分けた肉をホットプレートに投入。

パクパク食べるうちに……


・EXスキル【猪アサルト】を習得

説明:強烈な体当たりを食らわせる。


「む! 来たな……食べた分量は」


「んー。2人あわせて半分。お肉の4分の1を食べれば覚えられるってことだねー」


黄金肉1個で4人がEXスキルを習得できるわけか。今までは1人分を無駄にしていたわけだ。


いや。それを言うなら母の分もか?

ギフトを持たない母にEXスキルの意味はないが……


「お肉の残り半分はどーするの?」


「母の分を残して。あと1人分はニャン太郎にでも食わせてやってくれ」


一家三人。生み育ててくれた母を除け者に、俺たちだけが旨い物を食べるなど出来ようはずがない。


「うん。それじゃ次はゴブリン肉だねー。楽しみー」


あまり進んで食べたくはないが……これも強さを得るため。


・EXスキル【全武器熟練】を習得

説明:全ての武器の取り扱いに上達する。


「ほう……これは便利なスキルだな」


「やったー。イモの剣の腕が上がったってことだよね?」


全ての武器の取り扱いが上達するわけだから、俺の包丁や盾の扱いも上手くなるわけだ。ゴブリン獣は剣に槍に斧。弓や杖など、とにかくいろいろな武器を持って襲って来る。それもこのスキルの影響というわけだ。


ゴブリンお肉の残りは2人分。母の分は残すとして残り1人分だが、これはニャンちゃんにもハトさんにも食べさせる意味がない。


「えー? ニャン太郎は手先が器用だよ? 窓だって勝手に開けるもんねー」


確かにあのネコ太郎……いつの間にかフラフラ家の外に出ているからな。

といっても、さすがに武器を持つのは無理だろう。

いずれ来る時に備えて、黄金ゴブリン肉1人分は冷蔵庫に保管とする。


しかしネコ太郎にも困ったものだ。

仮にもオスの三毛猫。高額で取引されているため、もしも見つかれば捕まるというのに……いったい外で何をやっているのやら。まあぱっと見でオスメスの区別はつかないから大丈夫だろうが。


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