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69.働きもしねえクズ野郎が借りれるのは闇金しかねーやろ!

ひさびさ更新。人物紹介。あと以前から比べて、自宅に借金が追加されています。


じょう 弾正だんじょう

イケメン主人公 17歳。高校2年生。

ギフト:SSR+暗黒魔導士改 デバフを得意とする後衛魔法職。


じょう 妹子いもこ

美少女妹 14歳。中学3年生。

ギフト:UR雷轟電撃 世界に1人の雷の力を秘めた魔法職。

5/5(日)祝日


朝の食卓。俺はテーブルに着く母の前にトーストを差し出した。


弾正だんじょう。ありがとう。今日は2人とも、どこか行きたい所とかある?」


「お? お母さんどこか連れて行ってくれるのー?」


「そうよぉ。母さんお休みだし子供の日だからね」


子供の日か……そういえばそんな日もあった。


「やったー! イモ遊園地に行きたーい」


「いいわねぇ。遊園地かぁ。弾正だんじょうもそれで良い?」


休みの日こそダンジョン日和。

とはいうものの、これまでの連休ずっとダンジョンに籠っていたのだ。

たまには息抜きも必要。


「もちろん。あ、俺がお金を出すよ。探索者で稼いだから」


俺は20万円入りの封筒を机の上、母の前に差し出した。


「おー。万札がいっぱい! ワンデイパスポートで乗り放題だー!」


「まあ! 弾正ずいぶん稼いだのね。でも遊園地でこれは多すぎるかしら……」


「余った分は自宅の生活費に当ててくれれば大丈夫だから」


借金返済の足しにでも……と言いたいところだが、母は俺たちに借金を隠したいようなので黙って渡すに留めておく。


「良いの? 弾正も買いたいものとかあるんじゃないの?」


「全然大丈夫。何せ俺は天才探索者で、いくらでも稼げるからね」


何せ俺がこれから推し進める黄金肉売却計画。

これを遂行すれば一生お金に困ることはなくなるのだ。


「探索者ってそんなに稼げるものなの? それとも……もしかしたら本当に天才なのかしら?」


もしかしなくても天才。母にはもっと自分の息子を信用してもらいたいものである。


「それで母さん。欲しい物ってわけじゃないけど……少しお金もできたから今度、海外旅行に行こうと思うんだ」


「お?! それならイモもー。イモも行くー!」


「あら。イモちゃんと2人で? でもゴールデンウイークは終わったけど学校は大丈夫なのかしら?」


多少休もうが俺の頭脳をもってすればささいな問題。そして、イモの同行は予定にない。


「今度パスポートを取りに行くから、その時は保護者のサインをお願いしても良いかな?」


「ええ。もちろん。いいわねぇ2人で海外なんて……母さんのハネムーンも海外でね。あの人がお金もスケジュールも全部手配してくれて……」


またか……あのクソ親父が昔はイケメンホストで店ナンバー1の売れっ子だったっというノロケ話。いったい何度聞かされたことか。


「いや。父さんの話より、今日の遊園地の予定を決めよう」


どれだけ過去が凄かったか知らないが、たかが顔に怪我をしたくらいで引きこもり。八つ当たりで子供に暴力を振るうようなクソ親父。元々の性根に問題があったのだ。


ピンポーン


「あら? 誰かしら?」


来客のため母が席を外した隙に、俺はイモに話しかける。


「イモ。海外は危険なんだぞ? だからお兄ちゃん1人で行こうと思うんだが」


「えー? イモも海外旅行に行きたーい。美味しい物がいっぱい。おにいちゃん1人占めはズルイぞー」


いや。母の手前、旅行とは行ったが実は旅行ではない。俺の目的は海外のダンジョンに入ること。つまりは危険があるわけで、可愛い妹を連れ歩くわけにはいかないのが本音である。


「ダンジョンならやっぱりイモの出番だー。イモ。ダンジョン大好きだもんねー」


確かにダンジョンでのイモは無敵。しかしながら問題はダンジョンの外にあるわけで……


「ちょっと。やめてください」


ん? 何やら玄関が騒がしいな。


「ですから今月分は振り込んだはずですって」


「奥さーん。あんたの旦那の借金ですがねえ。ほら。ここ。ここを見てくださいよ? 6ヵ月に1回。ボーナス返済って書いてあるでしょ? それが今月なんですよ」


こっそり覗き見するならば、たたきの上り口にどっかり腰かける黒スーツ姿の男が見えた。


「いえ。普通のローンでしたら毎月の定額で」


「だから普通じゃねーっつてんだよ! お宅のぼんくら亭主によおお。どこの誰が金を貸すっつーんだよお? ああ? 働きもしねえクズ野郎が借りれるのは闇金しかねーやろ!」


「いえ。ですから声が大きいですから」


とうとう借金取りが自宅にまで現れたというわけか。


「子供に聞かれたくないならよお。ボーナス払い10万円。耳を揃えて払ってくれや? な?」


「母さん。さっき渡したお金から払っておけば?」


「弾正?」


俺の耳は地獄耳。話し込む母の背後から2人の会話に割り込んだ。


「お? 息子さんでっか? ははあ。旦那さんに似てえらいイケメンでんなあ。やっぱイケメンは言うことも違うやあね。払っておけだなんて。ねえ。奥さん」


「でも。せっかく弾正が稼いだお金なのに……それにこんな契約は明らかに違法で……しかも5月なんてボーナス月でもないのに」


「違法でも何でも良いよ。もう父さんのことなんて思い出したくもない。全部を払ってスッキリしたいんだ」


黒スーツを着込んだ借金取りの男。

パンチパーマの頭に首には純金ネックレス。さらには高級腕時計とあきらかにヤバイ相手である。ここは素直に支払い、何とか穏便にお引き取り願うに限るというもの。


「良いねえ良いこと言うねえ。クソな旦那の借金は早く返すに限るね。てーわけでほら11万を寄こしな」


「11万円? あの……増えてませんか?」


「手間をかけさせるからやろ。俺の手間賃ってやつよ。へっへっ。何なら奥さんの身体で払ってもらっても構わんのやでえ?」


野郎。言うにことかいて何を?


「まあ奥さんならねえ。前から言うてるように身体で払うって手もあるんやで? うちの事務所で撮影したるさかい。旦那の借金を身体で払う人妻ものや。バカ売れ間違いないで」


野郎。確かに人妻ものは興奮するが……自分の母となれば話は別。許すわけにはいかない。


「ああ? 坊主。なんやその目はあ? ええんか? ワイに逆らうなら事務所総出やで?」


ひええ……たとえ許せなくとも相手の頭はパンチパーマ。怖すぎる。

しかも事務所総出というなら黙らざるをえないのが現実。ここで機嫌を損ねようものなら、若い衆が大挙押し寄せ朝晩かまわずチャイムを連打、玄関ドアを蹴り壊されるはめになる。危険すぎる。


ここは素直に追加で1万円を支払うのが賢明。

お金を取りに戻ろうとするその時──モワリ。俺の肌が粟立つこの感覚。


これは魔素? いったいなぜ自宅の玄関に?


後ろを振り向けば、廊下から顔を覗かせたイモが何やらVサイン。


イモのやつ。自分の部屋のドアを開けたのか?

そのため魔素が玄関にまで流れ込んで……?


「せや。なんなら妹さんもどうでっか? 前にちらっと見たけどえらいべっぴんさんやさかいな。親子もので行こうや。年齢は18って言っておけばバレへんがな」


ダンジョン内。魔素のある空間において、ギフトは効果を発揮する。

だとするなら……今の俺はもうパンチパーマに怯える子羊ではない。


「パンチ野郎。今日のところはボーナス払い10万円で勘弁願いたいのだが?」


俺は母を相手に話し込むパンチ野郎の肩に手をかけた。


「パ、パ、パンチ野郎?! てんめーそりゃ俺のことを言ってやがるのか!」


瞬間湯沸かし器のように激高。俺の襟をつかみ凄んで見せるパンチ野郎。


やれやれ。脅せば、この俺が恐れをなすとでも思ったか?

首を絞めんと力を込めるパンチ野郎の手を握り取り──


「てめーのことに決まってんだろうがああああ! パンチパーマだからって良い気になってんじゃねーぞ!」


デバフ発動:パンチ野郎は恐怖した。


「ひいっ!」


残念だが、今の俺は最強無敵のSSR+暗黒魔導士。

例え事務所総出だろうが俺への脅しにはなりえない。


「はい。10万円。領収書をくださいよ?」


デバフ発動:パンチ野郎は混乱。


「あひ? はいこれが領収書でんがな」


とち狂ったように、すんなり領収書を差し出すパンチ野郎。


「ありがとう。それじゃ用件は終わり。帰ってくださいな」


デバフ発動:パンチ野郎は放心。


「はひふへふー。ぶーん」


俺に背を押されたパンチ野郎は、10万円を手に玄関を出るとフラフラおぼつかない足取りで帰って行った。


「はあ……弾正、凄いわ。まるで若い頃のお父さんみたい。あの人も怖いもの知らずでね。因縁をつけてきた相手を逆に怒鳴り散らしたり、それはもう凄かったわぁ」


いや。もう父さんの話は結構。

というか、相手が誰だろうと怒鳴り散らすなど下品すぎるだろう。それを凄かったって……母さんの好みは謎である。


「母さん。借金ってあといくら残っているの?」


「えーと……250万くらいかしら?」


それだけか。


「それなら心配はいらないかな。俺の天才性を持ってすれば、来月には返せると思うよ」


「そうなの? はぁ探索者って稼げるのねぇ。母さんも探索者やってみようかしら……」


探索者が稼げるのではない。天才暗黒魔導士たる俺だからこそ稼げるのであるが……まあ、親子とはいえ母の人生。好きな仕事をしてくればとは思うが。


「そうだね。もしも母さんが探索者やるつもりなら教えてよ。いろいろ手助けできると思うから」


俺にもイモにも学業があるため、母が探索者になるというなら歓迎である。


いずれ自宅ダンジョンを正式に俺たちのものとした時。母が留守番してくれるなら安心できるというものだ。



その後、家族3人。遊園地を満喫した。


「おにいちゃん。次はあれ。絶叫垂直落下地獄直行コースターにもう1回乗ろーよー」


いや……俺もジェットコースターは好きな方だが……さすがにこれで10回目。うっぷ。なぜにイモは平気なのか謎である。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新待ってました。 主人公達に対する、ツッコミ役の普通の人が欲しい所。 まぁ普通の人を書くって難しいですけどね。どうしても自分視点での主観になってしまうから。
[一言] 再開嬉しいです。
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