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67.……せめて誰か協力者が必要。

5/4(土)祝日


今日は品川ダンジョンの日。

そして今日の目的。それはモンスターゲートの調査にある。


暗黒熟練により、俺はモンスターゲートを掌握できることが判明した。といっても、まだ地下1階のゲートのみであるが。


とにかく自宅ダンジョン地下1階。登録済みモンスターゲート同士で転送可能となることを確認している。


となれば、気になるのは異なるダンジョン間。自宅ダンジョンと品川ダンジョンの間でも転送が可能かどうかにある。


これは今後の俺の行動における大きな転換点。

何としても調べる必要がある。


そのためには、品川ダンジョン地下1階のモンスターゲートに触れる必要があるわけだが……


うむむ……地下1階。監視カメラのカバー率は100パーセント。特にいつモンスターゲートが暴走するかも分からないとあって、ゲート周辺は入念に監視カメラが設置されている。


以前ヤリチン探索者が言っていたように、監視カメラといっても常時貼り付き監視しているわけではないだろうが……いつ目を離しているか分からないのであれば、下手なギャンブルを打つのは危険というもの。


……せめて誰か協力者が必要。


一瞬で良い。協力者がカメラの盾となってくれれば……

その一瞬でゲート登録は完了するのだ。


問題は協力してくれる人間だが……年齢制限に引っかかるため、品川ダンジョンでイモは使えない。


となると……賀志子さんか?


俺は賀志子さんにメッセージを送ってみる。


─どうも。城です。

─今日あたりダンジョン行きませんか?


─賀志子です。

─昼以降なら行けます。


そんなわけで品川ダンジョン。


「お待たせですわ」


俺は賀志子さんと合流した。


「あれからみんなとダンジョンは行った?」


「いえ。助田さんの都合が合わずに行ってませんわ」


助田。あれだけダンジョンが好きそうだったのに、もう飽きたのか?


「じゃあ、まあ、適当に2人で戦いますか」


地下1階。探索者でにぎわう狩場に到着する。


「今日の賀志子さん。良い装備を持ってますね」


「ええ。父に交渉しましたもの」


前までは普通の私服に包丁1本だったものが。

今は両手に槍を握り、胸当てを身に着けていた。


「先日、わたくしが他の探索者に絡まれたことを話したら、融通してくれましたわ。最初は自分の力でやれ。1円も助けてやらんと言ってましたのに」


さすがに娘が襲われそうになったと聞けば、助けもするだろう。しかし、親父さん。もしかして厳しい人なのか?


議員なぞ裏金ズブズブ。金なぞ有り余っていると思ったが。


「そんなわけありませんわ。給料のほとんどを視察に使って、ロクに自宅にも居ませんもの」


正直、それは困る。

俺が望むのは札束ビンタでコロリ転がる汚職大好き議員。真面目に仕事をされては、議員とコネを作って悪さし放題作戦が失敗する。


「城さん。これまであまり話したことありませんが、冗談がお好きなようですわね」


冗談ではないのだが……まあ良い。

視界にはちょうどゲートを飛び出たイモムシ獣の姿。


「魔弾。発射」


俺の左手を離れた暗黒水球がイモムシ獣を直撃する。


「イモー!」


怒り心頭。ノタノタ這い寄るイモムシ獣。


「賀志子さん。お願い」


モンスターを無事に釣りだした俺は、後を賀志子さんにお任せする。


「分かりましたわ。ってイモムシ獣? ちょ、ちょっと危なくありませんこと?」


弾力あるボディは打撃を弾き、口を吐き出す強酸液は人体を溶かし尽くす。地下1階の中でも強敵に位置するモンスター。


本来ならまだまだ素人である賀志子さんには厳しい相手であるが……


「大丈夫。正面を避けて突きまくってください」


「か、簡単に言いますわね」


おっかなびっくり。

へっぴり腰でイモムシ獣を相手取る賀志子さん。


弾力あるゴムボディには、突き刺す槍が効果的。

空を飛び回るコウモリ獣などより、今の賀志子さんにとってよほど戦いやすい相手といえよう。


何せ一番の脅威である強酸液は封じてあるのだ。


暗黒熟練の習得により、俺は暗黒の霧に込めるデバフの種類をコントロール可能となっていた。


今、暗黒水球によりイモムシ獣に与えたデバフは、五感阻害、全能力弱体。魔力減少蒸発。封印。全耐性減少。


封印は相手のスキルを使用不能とする凶悪なデバフ。スキルの恩恵を失ったイモムシ獣は、ただの肉達磨でしかない。


ズブリ ズブリ


10分におよぶ死闘の結果。


ズブリ ズブリ


賀志子さんの突き出す槍により、イモムシ獣は紫煙と消え去った。


「やりましたわ! イモムシ獣を相手に無傷ですわよ。わたくし強くなったんじゃありませんこと?」


イモムシ相手に10分か……残念ながら弱い。


連休中、クラスメイトとパーティに籠っていたことから、おそらくLV2はあると思うのだが……失礼ながらNギフトとはこんなに弱いものだろうか?


確か賀志子さんのギフトはNの学徒と言っていたな?


パラリ。俺は攻略読本から学徒を探し見る。


■学徒

希少評価:ノーマル

個人評価: 5/10点

集団評価: 5/10点

総合評価: 5/10点


■スキル

LV1:経験上昇  :獲得する経験が上昇する

LV5:全能力小上昇:全能力が少し上昇


うーむ。弱いのも無理はない。

はっきりいって雑魚である。


といっても、LVの上昇に伴い身体能力も上昇する。

これでもギフトを持たない一般人に比べれば十分に超人。


幸いにもLVは上がりやすいわけで、LV5スキルの全能力上昇。そこまで上がれば、地下1階で苦戦することはなくなるだろう。


もっとも、それ以降。地下奥深くまで潜るのは無理だろうが……自衛する程度にまでなれば十分か。


その後もボチボチとモンスターを倒し続ける賀志子さん。


監視カメラの位置は……あれか。

ゲート近く。ネズミ獣とたわむれる賀志子さんの陰に隠れるタイミングで俺はモンスターゲートに触れた。


─暗黒門品川ダンジョン地下1階その1

─LV20登録済み:王、城

─現在、自動転送モードで運転中

─現在のステータス:転送中

─対象数:コウモリ獣12

─転送完了まで:あと120秒


登録完了。

後は自宅ダンジョンの転送先に品川ダンジョンが追加されていれば成功なわけだが……ひとつ気になるのは登録済みの欄に俺以外の名前があること。


暗黒魔導士はURではないため他に登録できる者が存在するのも当然だが……おうか。

暗黒魔導士がモンスターゲート間を転移できるというのは世間に公表されていない情報。この王という奴も世間に内緒でゲート転移を利用している。つまりは何か後ろめたい存在であるわけだが……っと。これ以上にゲート付近でウロウロしては怪しまれる。


「はあ、ネズミ獣の相手は……苦手ですわ」


攻撃防御とも大したことはないが動きが速く、賀志子さんの槍はなかなか当たらない。


あまり助け過ぎては練習にならないのだが……


「魔弾。発射」


暗黒水球に五感阻害、全能力減少、封印を乗せてネズミ獣を狙い撃つ。


「ネズー?!」


暗黒の水にまみれ、途端に動きの鈍るネズミ獣。


「チャンスですわ!」


ズブリ。賀志子さんが槍で突きさし止めを差した。


「……城さんのそれ。魔弾でしたかしら? 随分と便利なスキルですわね」


「魔法だからね。超常能力って感じで良いでしょう?」


実際には魔弾ではなく暗黒水球ではあるが。


「はあ。わたくしも、もっと良いギフトが欲しかったですわ」


不満に思う気持ちは分かる。


いきなり君はSSR、君はNと強制的に与えられたギフト。

幸いにして俺は当たりを引いたが、外れを引いた者が不満に思うのは当然。


仮にギフトが奴隷となれば、一生が奴隷のまま。

夢も希望もない。神様がいるとするなら残酷な話である。


だが……もしも夢も希望もあるとするならば?


「賀志子さんは、新しいスキルが欲しいですか?」

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