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65.「この先の広間。ゴブリンが大量だぞ」

自宅ダンジョン地下2階。

草原広場に建つ無敵要塞。


その前庭とも言うべき草原には、地下3階へ遠征する精鋭が勢ぞろいしていた。


ニャンちゃん部隊のリーダー。ニャン太郎。

その嫁であるニャン美。ニャン子。ニャン香。


治療魔法の使い手。白ハト様。

巻き込まれ連れて来られた普通のハトさん。


そして俺を入れて総勢7名……うむ。1人足りないではないか。


要塞を覗けば、イモムシマットに寝転がるイモの姿。


「イモー。起きろー行くぞー?」


「ん? お、おおー?」


イモはこの弾力あるマットがよほど好きなのだろう。


「眠いなら寝ててもいいぞー?」


「むにゃ。行く。モンスター退治に行くー」


どうやらそれ以上にモンスター退治が好きなようで。


とにかくイモを加えた8人パーティ。

地下3階へ降りる階段前に集合する。


「おそらくだが地下3階にはゴブリン獣が出るだろう」


ダンジョンによって出現するモンスターは異なるが、今のところ品川ダンジョンと自宅ダンジョンに大きな差はない。


「うわー。楽しみだね。ごぶりん」


普通は人型モンスターを相手どるのは嫌がるものだが……まるで恐れる様子のないイモであった。頼もしい。喜ぶべきなのかどうか微妙なところではあるが。


地下3階へ突入するその前に。

俺は地下1階と地下2階に展開していた暗黒の霧を解除して魔力を確保する。その魔力全てをあわせて


「つどいし闇の魔力よ。漆黒の霧となり我らの道を指し示せ。発動。暗黒の霧」


地下3階へ向けて暗黒の霧を全力展開した。


超音波によるソナー機能を得た暗黒の霧は、触れた敵を感知するだけではない。超音波を発して周囲の地形をも探知する。


つまりは地下3階。暗黒の霧が満たされた空間において。

その通路の作りも、行きかうモンスターの数と種類も。

その全てが俺には手に取るように分かるのだ。


ゴブリン獣が700。ゴブリン獣チーフが70。

ゴブリン獣メイジが30。ゴブリン獣ヒーラーが10。

それに一際大柄なこれは……


「ゴブリン獣キングがいるな……しかもこの地下3階。要塞化されているぞ」


地下3階。これまでの鍾乳洞とは異なる石造りの洞窟。

複雑に交差する通路により、迷路のように入り組んでいる。


加えて誰も侵入する者がいなかったため、増えに増えたゴブリン獣たちは、迷宮内各処に建造物を作っているようだ。


普通に攻略するならやっかいなのだろうが……


流し込む暗黒の霧によって、ゴブリン獣700匹の全てが前後不覚の行動不能状態。チーフ、メイジ、ヒーラーは魔法防御が高く、行動不能は半数程度に留まるが、先制攻撃としては十分な戦果。


混乱するモンスターを刈り取れば、地下3階の攻略は終わる。


「それじゃ、みんな行くぞおー」


「にゃん」「にゃー」「なー」「なぉー」


地下3階、暗黒の霧の只中へイモたちは飛び込んでいった。


……いや。2匹がまだ残っている。


「クルッポー」「クゥクゥ」


首をふりふり。何やら訴えているようだが……ふむふむ。これはアレか? 自分らハト目だから暗闇は無理だと。そう言いたいわけか?


なるほど……EXスキル赤外線感知を持つ俺とイモや、元々が夜行性で夜目を持つニャンちゃんたちと異なり、ハトさんは暗闇での行動は難しい。


そういえば、まだ暗黒の霧の全力は控えるべきと言った覚えがあるが……


かといって地下3階。暗黒の霧を手加減したのでは危険がある。今後を考えると何か対策が必要となるが……それは次回の話。


「白ハト様は無敵要塞に戻っていてくれ。もしも怪我人が出たら戻るから治療を頼む」


「クルッポー」


「ハトさんは白ハト様の護衛で」


「クゥクゥ」


地下3階。階段入り口にハト2羽を残して、俺も地下3階へと突入する。


すでに各処で戦闘が始まっており、ゴブリン獣の数は500にまで減少していた。


ひとまず俺は電撃をぶっ放しているイモと合流する。

イモと一緒に行動するのはニャンちゃん2匹。


「ニャン美とニャン香だよ」


広い地下3階。手分けしての探索というわけで、別行動する2匹がニャン太郎とニャン子。あの2匹はニャンちゃんの中でも古参。相応にLVも高いわけで心配はない。


「イモ。この先の広間。ゴブリンが大量だぞ」


「どんと来いだー」


通路を抜けた先。広大な広間の各処には、侵入者を防ぐべく複数のバリケードが築かれる。


その中央には天井まで達する大きな塔が建てられていた。その上階。バルコニーに居並ぶゴブリン獣は全員が弓矢を装備するゴブリン獣アーチャー。


通路を抜けたばかり。密集した状態にある俺たちに矢を射かけるつもりだったのだろうが……


「ゴブ?」「ゴブブ……」「ゴブーゴブー?」


暗黒の霧が地下3階を覆い尽している今。

まともに動けるゴブリン獣は存在しない。


混乱するゴブリン軍団に向けて、天に掲げた指先をイモが振り下ろすと同時。


「落雷直撃。サンダーストライク」


上空に光が走り、巨大な雷が塔へと落ちる。


ゴロゴロ ビシャーン


その衝撃にバルコニーのゴブリン獣。全てが階下へ落下する。


ゴロゴロ ビシャーン


バリケード後方に身を潜めるゴブリンアーチャーに。

盾を構えて整列するゴブリンガードの集団に。

後方で杖を掲げるゴブリンメイジの集団に。


ゴロゴロ ビシャーン


立て続けの落雷が襲い落ちる。

いくら陣地を築こうが上空からの攻撃は防げない。

すでに広間のゴブリン軍団は壊滅寸前。


「ホブゴブー!」


雷を落とし続けるイモを止めようと、複数のゴブリン獣チーフがバリケードを飛び出すが。


「なー」「なぉー」


近づけまいとニャンちゃん2匹が迎え撃つ。


ズンバラリン


デバフにより行動阻害されたチーフたち。

ニャンちゃん2匹に頸動脈を噛み破かれ地面に倒れていった。


これで広場の制圧は完了。

もっともモンスターゲートがあるためゴブリン獣は続々と生まれ続けるわけだが


ゴロゴロ ビシャーン ドカーン


最後の落雷が塔に落ち、ゴブリンの塔は崩れ落ちる。


今後は定期的に地下3階を攻略するのだから、要塞を築くだけの数が増えることはないだろう。


「しかし。イモ。俺が言うのも何だが、この暗闇でよく敵の場所が分かるな」


辺り一面に漂う暗黒の霧により、闇に閉ざされた視界。

EXスキル赤外線感知により敵を見分けることが可能とはいえ、イモは米粒のように遠くの敵にまで正確に電撃を通していた。


「ふふーん。イモ。見なくても敵の場所が分かるもんねー」


ほう? かくいう俺も超音波によるソナー探知でもって、見ずして敵の居場所を知ることができる。


……そういえばイモも超音波を持っているのか。


俺は暗黒の霧に超音波をあわせてのソナー効果だが、イモの超音波はどうなっているのだ?


「うーん。なんか? 電気ビリビリとあわせた感じ?」


電気とあわせるか……もしかして電波探知機、いわゆるレーダーか?


電波を発射、その反射波を測定することで対象までの距離や方向を測るという。雲や霧を通しての探知も可能とあれば、暗黒の霧の中にあっても標的を知ることが可能である。


開けた空間においては無類の探知能力を誇るレーダー。

軍事はもちろん民間にまで幅広く活用されている、あのレーダーか?


「マジかよ……俺のソナーより良いではないか」


「ふんす。まいったか」


イモの活躍にくわえて、別れたニャンちゃん2匹も順調にゴブリン獣を倒している。残すところ敵の総数は


各種ゴブリン獣が30。ゴブリン獣チーフが3。

ゴブリン獣メイジが3。ゴブリン獣ヒーラーが2。

ゴブリン獣キングが1となっていた。


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