61.クラスメイトと共に来たのは地下1階の狩場。
クラスメイトと共に来たのは地下1階の狩場。
主に出現するのはアメーバ獣とネズミ獣、イモムシ獣。
品川ダンジョンではゴキブリ獣とコウモリ獣の出現頻度は低いとされており、安全に狩れるとあって今日も人でにぎわっていた。
「うし。んじゃお前らモンスター釣って来てや」
助田の号令に従い、男子2名は石ころを手に周囲に散らばっていく。
その間にどこから持って来たのか。
助田は右手に木刀。左手に鍋の蓋を装備していた。
マジかよ……鍋の蓋とか実際に持ってくる奴を初めて見たぞ。
「助田さん。はぁはぁ。連れてきましたっす」
男子生徒の1人がアメーバ獣に石を投げ当て、助田の元まで走り逃げて来た。
「うし。只野さん。お願いやで」
「うん。攻撃防御上昇」
SR強化魔導士の只野さんが魔法を唱えると同時、俺の身体に力がみなぎり肌が硬化するのを感じる。
これが強化魔法か。
SR強化魔導士。その代名詞たるパーティ全体を対象とする強化魔法。総合評価8点にも納得の効果である。
ポヨンとアメーバ獣が助田の顔を目がけて飛びかかる。
「おっしゃ。いくでー。聖なる鎧や」
助田はアメーバ獣の体当たりを受け止めるべく、左手の鍋の蓋を突き出した。
いや。無理だろう。
最弱とはいえ仮にも相手はモンスター。
その全体重を乗せたジャンプ体当たりは、プロレスラーのフライングボディアタックにも相当する破壊力。
やれやれ……やはり俺が助けるしかないか。
できれば秘密にしておきたかったのだが……と思いきや。
ガイーン
鍋の蓋にぶつかった瞬間。
重い音と共にアメーバ獣の身体が跳ね返される。
ぽよぽよ地面に落ちたところを。
「今ですわよ」
「ちょーチャンスって感じ?」
佐迫さん賀志古さんの2人が包丁を突き刺した。
「おっら。潰れんかーい!」
止めとばかりに振り下ろされた助田の木刀により、アメーバ獣は紫煙へと還っていった。
マジかよ……みんなけっこう強い上に連携が上手い。
ペラリ。攻略読本をあらためて眺め見る。
■聖騎士
希少評価:SSR
個人評価:9.8/10点
集団評価:9.8/10点
総合評価:10/10点
・聖なる鎧:自身のみ
防御力大上昇。魔法防御力大上昇。弱体耐性大上昇。
効果中は継続して小威力の治療効果が発動し続ける。
効果中は魔力を消費し続ける。
・聖なる盾:LV5:パーティ対象
短時間、受けるダメージを6割無効にする。
短時間、受ける弱体効果を無効にする。
・聖なる気:LV10:パーティ対象
防御力小上昇、魔法防御力小上昇、弱体耐性小上昇。
効果中は継続して小威力の治療効果が発動し続ける。
効果中は魔力を消費し続ける。
・聖なる反撃:LV15:パーティ対象
短時間、受けるダメージの3割を無効にして反射する。
・聖なる回復:LV20:パーティ対象
中威力の治療魔法+弱体効果を1つ回復
助田が鍋の蓋でモンスターを弾き返せた理由。
それが聖なる鎧の効果。防御力が大幅に上昇する。か。
「おっしゃ。お前らどんどん連れてこいやー」
その後も、アメーバ獣、ネズミ獣、イモムシ獣と男子生徒が連れて来るモンスターを、只野さんの魔法で強化された助田が受け止め、佐迫さん賀志古さんが包丁で突き刺す見事なパーティプレイにより、狩りはとどこおりなく終了した。
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「助田くん。怪我は大丈夫?」
「平気や。勝手に治りよるからな」
狩りの途中。イモムシ獣の酸などにより受けた助田の怪我は、いつの間にか癒えていた。
これが継続回復効果か。
「せやけどさあ。城。経験者のわりには微妙やな」
「せやせや。こいつからっきしっすよ」
「城っちにはガッカリって感じぃ?」
いや。言い訳をさせてもらうなら。
6人のチームワークが良かったため、危機らしい危機もない上に、俺の入り込む隙間がなかったという。
それでも、俺も何匹かは石を投げてモンスターを釣ったのだが……
「……あまり役に立たず申し訳ないです」
ここは謝るほかにない。
朝から夕方まで7人で狩りをした結果。
モンスターを30匹。魔石を30個売却、1万5000円の7等分で俺は2000円を手に入れた。
「城くん。気にしないで。いきなり私たち6人と合わせるって難しいから仕方ないよ」
「そうですわよ。城さんも彼なりに頑張りましたわ」
そんな俺をフォローするのは只野さんと賀志古さん。
優しい……惚れそうである。惚れた。
「まあ、言うたら賀志古さんもあんまり役に立ってへんけどな」
それが悪かったのか。俺を庇った賀志古さんにまで、とばっちりがいっていた。
「うっ……そ、それはそうですけど」
「賀志子ちゃん頑張ってるのにその言い方はないよ」
うつむく賀志子さんを只野さんが慰める。
「悪い悪い。まあ聖騎士のワイがおるさかい。足手まといの1人や2人。どうってことないで」
確かに聖騎士の助田が盾となるなら余裕で行けるだろう。
つまるところ俺はただ取り分を減らすだけの邪魔者なわけで。
「今日はありがとう。どうも俺は1人でボチボチ稼ぐのが向いているみたいだから1人でやってみるよ」
自分から引くのが正解。
「そうか? まあ困ったらワイに言ってくれよ。ほなワイはワンさんから誘われてるさかい。さいならや」
1階ロビーで俺たち7人は別れ、それぞれの帰路についた。




