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59.朝食

その晩。自宅でご飯を食べお風呂を終えた俺は、再び自宅ダンジョン地下2階。草原広場の無敵要塞を訪れていた。


完成した無敵要塞。

その初お泊りである。


それは良いのだが……


「イモもー。イモもお泊りするー」


俺にくっつきイモまでもが無敵要塞に来ていた。


「イモは駄目だぞ?」


ここはダンジョン。一寸先には死が待ち受ける危険地帯。

このような場所で可愛い妹を寝泊りさせるわけにはいかない。


「えー? でも無敵要塞だよ?」


むう……確かに無敵要塞は無敵である。

しかしだな……常識から考えていくら装飾を加えようがこのような薄汚いダンボールハウスが無敵のはずはなくてだな。


「おにいちゃんはイモに嘘つかないもん。そうだよね?」


う、うむ……


「それとも……もしかしてイモに嘘ついた?」


見上げるイモの目は純真無垢。

俺を信頼しきったその目を裏切るなど、出来ようはずがない。


「いや……無敵要塞は無敵。今晩は一緒に泊まるか」


草原広場は再び暗黒の霧で閉ざしている。

昼間にあれだけ痛い目にあわせたのだから近づくモンスターは居ないだろうし、居たとしても俺のソナーが感知、ニャンちゃんが迎撃する。99.9パーセントの確率で危険はない。


「うん。イモは毛布持って来たんだ。寝るぞー」


5月。夜の草原は肌寒く昨晩は寝るのに苦労したが、今晩はイモと2人。毛布にくるまり暖かいまま眠りに着いた。





5/2(木)祝日



朝。無敵要塞での目覚めの時間。


■SSR+ 暗黒魔導士改 LV26 1↑UP


・スキル:暗黒の霧+(五感異常、全能力減少、毒、腐食、魔力減少蒸発、恐怖、麻痺、睡眠、混乱、放心、封印、闇耐性減少、光耐性減少、火耐性減少、水耐性減少、風耐性減少)


風耐性減少(New)風属性の攻撃に弱くなる


・スキル:暗黒抵抗:暗黒強化:暗黒打撃:暗黒熟練

・EXスキル:プリンボディ:鋭利歯:偽装:牛パワー



夜の間にばら撒いた暗黒の霧がモンスターを退治したのだろう。通常、LV20を超えたならそう簡単にはLVは上がらないはずが、あっさり上がるのが自宅ダンジョン。黄金モンスター。


俺に覆いかぶさるよう眠るイモの身体を何とか動かして、這いずるように要塞の外へ出てみれば。


草原にキラリ輝く黄金肉。これはヘビ獣の肉。

バッタ獣と同じくまんまヘビの死骸であるから分かりやすい。


見張り番をしていたのだろう。

隣に座るニャンちゃんが食べたそうに見ているが、駄目である。


ニャンちゃんに食べられる前に、黄金ヘビ肉を拾い上げる。


しかし、ニャンちゃん。よく食べずに我慢したな……

落ちた肉はポイポイ食べるのに、黄金肉だけは食べずに残していたのか。


ニャンちゃんにしろハトさんにしろ。

動物にしては頭が良すぎるきらいがある。

ギフトを獲得した動物は、知能が上がるのだろうか?


日本では禁止されているが、海外では狩猟犬を連れて入る国もあるという。


ギフトを獲得して強化されたペットが飼い主の意に反して暴れでもしては一大事であるため、日本でペット禁止となるのは仕方のない措置であるが……本当に知能が上がるのであればうまく使えば貴重な戦力となる。


反面。知能をもったペットが人間に反抗しようものなら、それはモンスターと同様、人類にとって非常に危険な相手となるだろう。


「うにゃー。おにいちゃん。おはやー」


無敵要塞からイモが起き出し顔を出した。


「イモ。おはよう。起きたなら自宅へ帰るぞ」


「ふへ?」


朝ご飯となっても俺とイモが顔を出さないなら、母が心配から部屋を見に来るだろう。


その時、部屋がもぬけの殻であればどうなる?

110番。警察襲来。ダンジョン見つかるの3連コンボ完成。


あえなく俺はお縄となり高校退学。

中卒にして前科1犯の履歴でもって以降の人生を送らねばならなくなる。


半分寝ぼけるイモを引っ張りイモの部屋へ。

イモを残して俺はドアを開け部屋を出ると。


「あら。弾正おはよう」


母とばったり出くわした。


「お、おはよう」


母は俺の出て来たドアを見ると。


「うんうん。兄妹なかよくていいわねぇ。ご飯これから準備するから、まだ寝てもいいわよ」


そう歩き去って行った。


……のんきすぎるだろう。

仮にも高校生と中学生。兄妹とはいえ同じ部屋で寝るなど普通は心配するだろうに。


その鈍感さが原因で父の虐待にも気づかなかったわけだが……今ダンジョンが見つからないのも、そのおかげである。


俺は台所に向かう母を追いかける。


「母さん。今日は俺が朝ごはんを用意するよ」


「まあ。本当?」


いつ前科1犯となるか分からないこの身。

愛想つかされ放り出されないよう、できるだけ親孝行しておくべきである。


「ふわー。おはよー」


母もイモも食卓にそろったところで朝ごはん。

ドンと今日の料理を机に並べる。


「弾正。これなに?」


「ダンジョン産黄金ヘビ獣の丸焼き。きちんと3等分にしてあるから、頭の部分は母さんがどうぞ」


鯛のかぶと煮などは頭の部分が一番おいしいと聞く。

であれば、我が家の家長である母に譲るのは当然の選択。


「イモのは胴体の部分だー。おにいちゃんは尻尾で良いのー?」


良いのである。

仮にも黄金肉。食べないという選択肢はないにしろ、さすがにヘビの頭を丸かじりは嫌である。

よって、俺は一番食べやすそうな尻尾を選択する。


「まぁ豪華ね。でも母さんが尻尾で良いわぁ。はい。弾正。若いんだから頭を食べて精気をつけなさい」


いつの間にか俺の目の前からヘビ獣の尻尾はいなくなり、代わりにヘビ獣の頭が置かれていた。


いや……これは無理ではないだろうか?

……そもそも誰が料理したのだこれは?

普通は皮を剥くとか頭を落とすとかあるだろう?

なぜに頭丸ごとなのか?


「うーん。おいしーよー」

「ほんとぉ。ヘビもいけるわねぇ」


しかし今さら交換しようにも、すでに母とイモはヘビにかじりついていた。無念である。


パクリ


・EXスキル「赤外線感知」を習得した。


マジかよ……これは凄いスキルが手に入った……


ヘビはピット器官と呼ばれる部分で周囲の赤外線を感知。獲物となるネズミの体温を探知するという。つまりは、サーモグラフィーにしてナイトビジョン。

ヘビ獣の能力を手に入れた俺は、暗闇の中であっても周囲の温度を探知。識別することが可能となったわけだ。


「イモ知ってるよ。赤外線カメラって水着とか盗撮するやつだー」


違う。違わないが……そういう用途も可能かもしれないが、俺が凄いといったのはそういう意味ではない。


俺の主力スキルは、もちろん暗黒の霧。


暗黒の霧の強みはデバフ能力だけではない。

単純に黒い霧が辺りを覆うという、ただそれだけで相手の視界を悪化させる効果がある。


その反面。俺たち自身の視界も霧で遮られる。


暗黒の霧の中でも俺やパーティメンバーはデバフの影響を受けないが、単純に霧で視界が遮られるのはどうしようもない問題。


そのためイモやニャンちゃんたちが動けるよう、これまでは暗黒の霧の濃度を調整しながら戦ってきたわけだが……


もはやその手加減は必要なくなった。

これからは全力である。


「イモの学校はね、水着の下に盗撮防止ショーツを着けるから全力でも無理だよ。おにいちゃん」


いや。そのような真似はしないが……貴重な情報ありがとう。


よく考えれば赤外線感知を習得したのは俺とイモだけ。夜目の効くニャンちゃんはともかく、ハトさんが見えないのでは全力は無理であった。


「案外ヘビもいけるものねぇ。ごちそうさま」


一足早く食べ終えた母が席を立ち上がる。


そういえば……黄金肉を食べて俺とイモはEXスキルを習得したが……母はどうなのだろう?


ギフトを持たない母。当然スキルは使えないわけだが、EXスキルはどうなっているのだろうか?

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