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54.お買い物。その3

公園で白ハト1羽を捕まえた、ではなく保護した俺はリュックを揺らさないよう慎重に歩く。公園を出ようとしたところで、3人の男が俺たちに近づいて来た。


「お? 昼間の可愛い子ちゃんやーん」

「マジで? どこどこ?」

「ういーっす。久しぶりやん」


やっかいな時に出くわしたものだ……


背中のリュックに放り込んだハト。リュック内にはハト用エサもあるため、しばらくは大人しくしているだろうが……走るなどの刺激を与えれば別である。


リュックのハトが騒いでは、俺の法令違反が明るみとなっては、お縄を頂戴するのは俺である。


「すみません。もう帰る所なので道を開けてください」


騒動とならないよう、なるべく丁寧に頼んでみるも──


「こんな暗くなった公園にいるってことはー」

「やってもOKってことやん」

「せやな。減るもんじゃねーし」


全く効果はない。


昼間は駅通路という人目の多い場所であったが、今は薄暗い公園。人目がないとなれば大胆になるのが人の性か……


「ぐへへ。揉むぜえ」

「おうよ。揉みまくるぜえ」

「せやな。減るもんじゃねーし」


揉みしだいてやるとばかり両手をにぎにぎ。近寄る3人組。


やれやれ……人目がない分、大胆に行動できるのは俺も同じだというのに……

そして、お前たちを見ているとクソな親父を思い出して無性に腹立たしい。


「どけ。黙って道を開けろ」


俺は3人組の前で、懐から包丁を取り出し突きつける。


「んなっ?」

「な、なんやその包丁は?」

「おまえ銃刀法違反やんけ」


ギフトの力はダンジョン外に影響しない。

しかし、探索者の力は現実にも影響する。


「俺は探索者だ。包丁を持ち歩くのは許可されている」


料理人などと同様、探索者が包丁を持ち歩くのは業務の範囲内。銃刀法には違反しない。


もっとも一般人? を相手に武器で脅したなどダンジョン協会に知られようものならマズイわけだが……誰も目撃者はいないのだからノーカンというもの。


「あかん、あかんて!」

「そんなんおまえ刃物とか卑怯やろ!」

「ひ、人殺し! 刺されたら死ぬやないけ!」


構える包丁に怯えたか、明らかに腰の引ける3人組。


ならばあと一押し。やれやれではあるが……


「おらおらー。ゴミカスどもが分かったら道を開けろや! ぶっ殺すぞ! おらー」


台詞と同時、むやみやたらに包丁を振り回して見せる。


……このように低能丸出しな行動。知能派の俺が演じるのは屈辱であるが……人を脅すに効果的であるのは否めない。


「ひええっ!」

「あかんて! こいつキチやん」

「もう行こうぜ」


刃物を前にしてはさすがのヤリチン大学生も分が悪い。

踵を返して立ち去る3人であったが、高校生に追い返されたのが腹立たしいのか。


「邪魔だ。どけっ」


ドカッ


いまだにエサをついばむハトを1羽。

その足で蹴り飛ばしていた。


「あー! ハトさんが!」


吹き飛ぶハトさんは俺たちの、イモの足元まで転がり動かない。


野郎。抵抗できない弱者を選んで暴力を振るうなど……やはりあのクズそっくり。


「……カスどもが……」


まったくだ。ここがダンジョンなら最強暗黒魔導士様であるこの俺がフルデバフを食らわせた上で動けない所をボコボコにしてやるというのに……


俺はいつの間にが口に出していたか?


「ウンコブリブリのクソバエが……」


いや。この声、俺ではない……イモ?!


気を失ったのかぐったり動かないハトの身体。

そっと撫でたイモが立ち上がり口にする。


「いつもいつも好き放題……やってもいいよね? おにいちゃん」


瞬間。イモの姿はかき消え、チンピラ連中の背後にあった。


ビリビリビリ


薄暗い公園に光が走る。

それは電気の光。電の光。雷轟電撃。


「かはっ……」×3


チンピラ3人はそのまま地面に崩れ落ちていた。


「クソでカスムシの貴方がたに聞こえているか分かりませんが」


倒れて動かない3人の身体をイモが蹴りつける。


俺が親父を思い出すといいうことは、イモも思い出すということ……


「蹴られるというのはとても痛いものです。どうです? チンカスさんたちも痛いですか?」


イモはまだまだ蹴り続ける。


だとしても連中は親父ではないのだ。

さすがに過剰防衛。ここで死者が出ては誤魔化しようもない。


「イモ。ストップ。そこまでにして帰ろう」


俺は背後からイモに抱き付き、3人から引きはがそうと力を込めようとするが──


「はーい」


力を込めるまでもなく、俺の呼びかけにイモはあっさり蹴るのをやめていた。


「おにいちゃん……このハトさんどうしよう?」


先ほどまでの様相から一転、うるうる涙目で俺を見上げるイモの姿。可憐である。


「連れて帰ろう。俺のリュックにそっと入れてくれ」


ハトさんに直接危害を加えたのはヤリチン大学生だが、元はと言えば俺たちの撒いたエサに釣られて集まったのが原因。


見捨てるわけにもいかず、今さら1羽が2羽に増えたとて大して変わりはない。


それどころか怪我した野鳥の保護ならば、仮に見とがめられたとしても鳥獣保護法には反しない。俺はハトを誘拐する極悪犯から、傷つくハトを善意で助ける優しい少年となったのだ。堂々と連れ帰れるというもの。


自宅に帰ればニャンちゃんに使ったD級ポーションがまだ残っている。蹴り飛ばされた打撲にも効果はあるはずだ……内臓に傷がなければだが。


地面に転がる3人組もピクピク動いているなら大丈夫。帰るとするか。


しかし……ダンジョン外ではギフトは能力を失うはずが……イモの能力。これもURの力なのだろうか。


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― 新着の感想 ―
[一言] イモコギフトの外で使えるというのが餅園のようです。 後で外からイモコギフトを使うことがよく出そうな予感
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