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50.草原広場

4/29(月)祝日


「ごめんねー。せっかくGWなのに母さん今日も仕事で」


「いやいや。俺たちは良いけど、母さんあまり無理しないでね」


「おにいちゃんと遊ぶからだいじょうぶだよー。いってらっしゃーい」


日祝も仕事というのだから、デパート勤務は大変そうである。

母さんが楽できるよう、今日もいっちょ稼ぐとするか。


「イモ。ニャンちゃんたちの所まで案内してくれるか?」


「おっけー。行くよー」


パーティを組んでいないニャンちゃんたちが暗黒の霧に巻き込まれては危険であるため、昨晩はダンジョンに暗黒の霧を満たすことは中断している。


そのため、ゲートを湧き出したモンスターがそこかしこを徘徊しているが──


バリバリバリー


電撃バリバリ。先頭になってズンズン進むイモ。

現れるモンスターを蹴散らし一直線に地下2階である。


地下1階にニャンちゃんたちは来ていないか……それなら。


「発動。暗黒の霧。地下1階を暗黒で満たしたまえ」


自宅ダンジョン地下1階は狭いこともあって、魔力を半分ほど消費しただけで暗黒の霧を満たし終えていた。


これで放っておいても地下1階のモンスターは全滅か……他のSSRギフトがどの程度かは知らないが、確かに暗黒魔法の使い勝手の良さは格別。アメフト親父がURに匹敵すると言うにも納得である。


地下2階に降りてすぐ。

この前は直進した通路をイモは脇道へと入って行く。


「こっちだよー」


そのまましばらく進むうちに、足元はゴツゴツした岩場から草の生えた柔らかい地面へ変わり、さらには水の流れるせせらぎが聞こえてきた。


「おお。凄いな」


ついには一面に芝生の生えた草原広場へと辿り着いた。

天井は高く眩しいほどに白く輝き、隅には小さな川が流れる。


なるほど。ここなら野良猫が住むのに不足はないが……


「にゃん!」


イモの姿を見た1匹の猫が芝生をゴロゴロ転がり寄って来た。

残る2匹の猫は周囲を警戒するよう座り込んだまま。


「あー! ニャン太郎、その怪我どうしたの?」


それぞれの身体には大小さまざまな傷。


確かにこの草原広場は身体を休めるのにピッタリである。

が、それはモンスターにとっても同じ。


草原広場の中央に見えるモンスターゲート。

その周囲に多くのウシ獣やイノシシ獣が座り2匹のニャンちゃんと睨み合っていた。


「むー。昨日イモが全部倒したのにー」


いくら倒しても草原広場にモンスターゲートがある限り、モンスターが途絶えることはない。


「ニャンちゃんたちがここで休むのは無理だな……」


ニャンちゃんたちの強さならウシ獣イノシシ獣に後れをとることはないが……それは元気な間の話。24時間、休む暇なく襲われては無傷ですまない。


「休めるもん。イモが一緒に住んでモンスターを退治するもん!」


言うが早いか、イモはモンスターを目指して走って行ってしまった。


やれやれ……無断外泊は認められないというのに。


傷だらけでうずくまるニャンちゃん3匹の身体へと、買ったばかりのD級ポーションを振りかける。


「ニャンちゃんたち。今日はイモの部屋に戻って休め。うちはペット禁止だが、今日だけは母さんに黙っていてやる」


D級ポーションで裂傷は癒えるだろうが、不眠不休の疲れまでは癒せない。


「にゃん……」「にゃー……」「なー……」


野良ネコとはいえ一応は礼儀を知っているのか。

申し訳なさそうに下げられる3匹の頭に触れると、手早くパーティに組み込み草原広場を追い出した。


パーティメンバーは暗黒の霧への耐性を得る。

地下1階に満たした暗黒の霧にも、影響なく帰れるだろう。


これは多分だが……ニャンちゃんたちへここに住むよう言ったのはイモだな。


猫は気まぐれではあるが、決して恩知らずではない。

特にリーダー格であるニャン太郎はイモに懐いている。


だからニャンちゃんたちは、イモから言われた場所を離れず、逃げ帰ることなく、イモが来るのを待っていたというわけか……


バリバリバリー


広場の中では、すでにイモの電撃が渦巻きモンスターは全滅。


だからといって、ニャンちゃんたちがここに住むのは難しい。


モンスターゲートがある限りモンスターは無限に湧き続ける。

暗黒の霧で満たそうにも地下2階のモンスターはタフである。

毒と腐食により、いずれは倒れるだろうが、そう簡単には倒れない。草原広場を暴れ回りニャンちゃんたちの安眠を妨害する位は出来るだろう。


確かにモンスターゲートさえなければ良い場所なのだが……


眩しく輝く天井は太陽の日光にも引けは取らない。足元の芝生は青々と生えそろい、小川を流れる水は冷たく澄みわたる。


噂に聞く屋外そっくりなダンジョンを、小さく1部屋に押し込めたような不思議な広間。

その中央に位置するモンスターゲートの傍で、モンスターが出るのを今か今かと待つイモの元へと向かう。


「イモ。ちょっと離れていてくれ」


「ん? おにいちゃん。どうするの?」


右手を伸ばした俺は、そのままモンスターゲートに触れた。


「あー! 絶対に触れたらダメだって! おにいちゃん自分で言ったのにー!」



─暗黒門:LV30

─現在、自動転送モードで運転中

─現在のステータス:転送中

─対象数:2(ハイエナ獣2)

─転送完了まで:あと200秒



やはり……

昨日、品川ダンジョンでの感覚は間違いではなかった。


─暗黒門の操作には暗黒熟練が不足しています─


エラー音とともに俺の左手が渦から弾かれる。


「イモも。イモもさわってみるー」


ウキウキで手を伸ばすイモの腕をつかんで制止する。


「ダメだ。これは俺のギフトが関係しているから無事なだけだ」


LV20となった際に獲得したスキル。暗黒熟練。

暗黒門のLVが30ということは、おそらく俺のLVが30あれば操作可能となるのだろうが……今の俺のLVは21。操作可能となるにはまだ時間がかかるだろう。

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