46.SSR+
アメフト親父の持つギフト。
戦闘系ではないと聞いていたが……まさか諜報系ギフトか?
相手のギフト、スキル名称を知るというその能力。
一見脳筋に見えるアメフト親父が大使を任されているのも、諜報系ギフトを持つからだと考えれば納得はいく。
しかし、今の俺はスキル擬態によって自身のギフトを誤魔化している状態……いや。俺が最初にアメフト親父に会ったのは擬態を習得するその前か? だとしても今の俺はRギフトに見えるはずだが……
「諜報系ギフトといってもいろいろでーす。ミーにはボーイのギフトが何か分からないでしょう」
諜報系ギフトといっても看破、鑑定などの種類があるそうだが、悪用を避けるためか攻略読本にも詳しくは書かれていない。
「ミーが見るのはギフトの潜在能力。ボーイのギフトは華にも匹敵するグレートな輝きでしょう」
潜在能力。つまりは、RやSR、SSRといったギフトのグレードを知るということか? 看破できる能力が限定される分、擬態をも貫通するというわけか。
「たぶんだけどアンタ……前衛系のギフトじゃないわね」
前を進む華さんが振り返る。
「仮にLVが低くてもURの前衛系ギフトならもっと戦えるもの」
確かにURギフトのイモは、最初からとんでもない火力を持っていたが、俺のギフトはURではない。こんなものだろう。
「それに。ゴブリン軍団を前にアンタ何かやろうとしていたわよね?」
ギクリ。
「まだ相手と距離のあるあの状態……アンタのギフトは後衛の魔法系だわ」
「イエース。ミーが戦ったゴブリン獣も、不自然に動きを止める者がいました。あれがボーイの魔法でしょう」
「ええまあ……その。いちおうSSRギフトなもので」
諜報系ギフトの前で変に誤魔化す意味はない。
俺が真に隠したいのは自宅ダンジョンの存在だけなのだから。
「ホワット? ノー。たぶん間違いでしょう」
俺の申告にアメフト親父が驚いてみせる。
「華のギフトは一般的にはURと呼ばれるグレードでーす。それに匹敵するボーイもURは間違いないでしょう」
俺のギフト暗黒魔導士はSSR。ギフトを獲得したその際、ギフトの希少性も同時に分かるのだから間違いはない。
何せ攻略読本には暗黒魔導士のデータも乗っているのだ。データの提供者がいるということは、俺の他に暗黒魔導士となった者がいるということで疑問の余地はない。
「オーウ。だとしてもやっぱりボーイのギフトはURに匹敵する潜在能力でしょう」
これは……あれだな。同一グレードであるSSRの中にも、格差が存在するというやつだろう。
探索者カードによれば、俺のランキングは6515万6631位。最初は確か……7900万位くらいだったか?
だいたい全世界で登録されている探索者数を8000万とするなら、うちの1パーセント。80万人がSSRギフトの獲得者となる。
その80万人の内訳が……例えば聖戦士が10万人、聖騎士が1万人、聖魔導士が100人であった場合。同じSSRでも聖戦士に比べて聖騎士の希少性は10倍、聖魔導士であれば1000倍となる。
例え希少性に1000倍の差があろうが、現状、最も高いグレードがSSRである以上、同一グレードでくくられるわけだ。
「つまり、アンタはSSRの中でもかなり貴重なギフトってわけね。URに匹敵するほどの」
「せっかく日本に来たのでーす。URの探索者を見逃す手はないでーす。ぜひお近づきになりましょう」
そう言ってアメフト親父は俺の手を握りしめた。
URギフトはその名のとおり世界に1つのユニークな存在。現代における人間国宝ともいえる存在。
時間を割いても繋がりを作るだけの価値はあるわけで、アメフト親父の行動も理解できるのだが……俺はURではないと言っている上に、なぜに脂ぎった親父と握手しなければならないのか?
「オリジン国に来た時はミーに連絡するでしょう」
なんとかかんとか引き抜いた俺の右手には、1枚の名刺が押し付けられていた。
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URギフトは世界に1つのユニークギフト。
アメフト親父から俺のギフトがURに匹敵するという話が出た時、実は俺には1つ思い当たる節があった。
EXスキル。
黄金モンスターの肉を食することで得られる、ギフトに縛られない新たなる能力。SSRギフトの暗黒魔導士にたいして、本来は習得できないEXスキルを加えたことで、俺のギフトは世界に1つのユニークな存在となったのかもしれない。
SSR 暗黒魔導士 → SSR+ 暗黒魔導士【改】




