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43.その4

品川ダンジョン地下3階。


広場内の4つのモンスターゲート全てが同時に暴走。

現れたゴブリン獣30匹は、他のパーティを無視して俺たち3人を狙い集まって来るという異常事態。


「ゴブリン獣チーフは悪知恵が働くのよ。まずは合流して数の少ないアタシたちを潰そうって手はずね」


俺たちが位置するのは広場中央

ゴブリン軍団は3方向から俺たちを覆いつくすよう向かって来ていた。


……どうりでこのゲートに誰も張り付いていなかったわけだ。


他のパーティが占拠するゲートはいずれも壁沿い。

いざとなれば壁を背にして戦える位置であるのに比べて、ここは広間中央。モンスターゲートが暴走した場合、今のようにモンスターに取り囲まれる位置にある。


もはやドロップを拾い集めている場合ではない。


あまりに急転直下の事態。

慌てて立ち上がろうとした際に少しバランスを崩したか……


とっ? マズイ!


漆黒の空気が渦を巻くモンスターゲートは、その名の通りモンスターの湧き出す門である。

同時に、触れた者を吸い込む危険な門でもあり、ゲート内部に吸い込まれ戻って来た者は誰もいないという。


そんなモンスターゲートの渦に俺の左手が触れていた。


─暗黒門:LV40

─現在、暴走モードで運転中

─現在のステータス:転送中

─対象数:10(ゴブリン獣9、ゴブリン獣チーフ1)

─転送完了まで:あと10秒


なんだ? 頭に浮かぶこの情報……


─暗黒門LV40の操作には暗黒熟練が不足しています─


エラー音とともに俺の左手は渦から弾かれていた。


暗黒門? 暗黒熟練が不足?

確かに俺はLV20で暗黒熟練というスキルを覚えたが……暗黒スキルの消費MPが減るだけではないのか?


「ボーイ。こちらへ来るでしょう」


わずかに呆ける俺をアメフト親父が引き寄せる。


っと。そうだ。まずは今の危機を乗り越えなければならない。


「みんなー! 彼らを援護するぞー」

「おー。なんとか耐えてくれー」

「まずは目の前のゴブリンを片付けよう」

「がんばれー。片付けたらすぐ向かうからなー」


さすがは地下3階で戦う探索者たち。俺たちを助けるべく声を上げ、目の前のゴブリン獣を退治していく。


探索者の絆が身に染みる……ありがたい。

窮地ではあるが、彼ら他パーティと合流できれば活路はある。


ゴブリン軍団が俺たちを包囲しようと迫るなら、その包囲が完成する前にゴブリン軍団の一角を突破、他パーティと合流する。後は中央に集まったゴブリン軍団を、逆に俺たちが包囲すれば良い。


これぞ包囲殲滅陣返し。


「でも……間に合わないわね」


「イエース。彼らが来るより先に取り囲まれるでしょう」


いよいよ俺たちの目の前のゲートからも、ゴブリン獣が湧き出し始めていた。


「ゴブー」「ゴブー」「ゴブー」


「邪魔でしょう!」


ドカーン


現れる端からアメフト親父が大斧を振り回し打ち倒す。


マズイな……他パーティと合流を図ろうにも、今うかつに移動しては無防備な背後から攻撃を受ける羽目となる。


包囲殲滅陣返しを決めるには、誰かがここで囮となって湧き出るゴブリン獣を引き付ける必要があるわけで……


敵を引き付ける。となれば盾役の出番というわけだ。


「俺がこの場で敵を引きつけます。2人は手薄な箇所を突破して他の人たちと合流してください」


そもそもが、この窮地は危険なゲートを占拠した俺の失着。

その俺が真っ先に俺が逃げるわけにもいかない。


「ふーん……アンタ死ぬつもり?」


目の前のゲートから現れるゴブリン獣にナイフを突き刺し、華さんが俺を振り返る。


「いや。死ぬつもりはありません」


そもそもが、俺がイモを残して死ぬはずがない。

活路があるから残るのである。


何といっても俺はSSRにしてうんぬんかんぬん。地下3階の推奨LV10をはるかに超えるLV21の暗黒魔導士。


この場へゴブリン軍団を引き付けたのち暗黒の霧を展開。

ゴブリン軍団まとめてデバフ漬けとする。


俺のデバフ魔法にゴブリン獣がそうそう抵抗できないことは、ここまでの道中で証明済みであり、後はデバフでまともに動けないゴブリン軍団をすり抜け囲いを抜けるだけである。


ただし……問題となるのはゴブリン獣チーフ。


「くっ。ゴブリン獣チーフ!」

「やっぱコイツ強いわ」


援護するべく向かう探索者パーティだが、その前にゴブリン獣チーフが立ちはだかる。


ゴブリン獣より一回り上の力を持つというチーフ。

奴に俺のデバフが通じるかどうか?

例え麻痺はレジストされたとしても、戦闘能力を下げるだけなら問題なく効果を発揮するはずだ。


2人が逃げる退路を確保するべく、俺は南から迫り来るゴブリン軍団8名を狙って左手を向けた。


ここで暗黒の霧を使ったならば悪目立ちするのに間違いはないが……俺の命には代えられない。


「待って」


その左腕を華さんが握り止める。


「アタシ言ったでしょ? 雑魚がいくら集まろうが雑魚だって。アタシたちで全部倒してしまえば問題ないわ。パパ。いいわよね?」


「イエース。許可は取ってありまーす」


ぐっと親指を突き出すアメフト親父。


確かに華さんは強い。が相手の数が多すぎる。

投げナイフだけでは無理があるだろう。


危惧する俺の前で、華さんは背中のリュックを降ろし片手を突っ込むと、中から黒光りする物体を取り出した。


あれは……まさか……銃か?!

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