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41.その2

華さん。投げナイフの一撃でゴブリン獣を即死させたのか?

LV21の俺が止めを刺すのに2撃を必要としたところを……


「パパもアンタも。敵を引き付けるだけで良いわよ。止めはアタシがするから」


防御は苦手だが攻撃には自信ありといったわけか。

親子そろって似たような特徴。


「イエース。だからでしょう。ボーイにはタンク役を期待しまーす」


タンク。オンラインゲームでいう敵を引き付ける盾の役割。

つまりは一番危険なポジションなわけで……どうりで俺を誘ったわけだ。


ウシ獣を相手に包丁1本で切った張ったの大立ち回り。

タンクを期待されるのも不思議でないが……実際の俺は遠隔系の魔法ギフト。


確かにイモと2人の時は、いつも俺がタンクをやっている。

妹を守るのは兄の義務。そこに何の疑問も恐怖も存在はしないが……今は即席のパーティ。


「えーと。その。地下3階は初めてなもので、あまり自信ないのですが……」


わざわざ俺1人が刃物を前に危険な役割を担うのは、どうかと思われる。


「オウ? マネーか? マネーね! 魔石も武器も。ドロップは全部ボーイにプレゼントでしょう!」


……しょせん世の中お金である。


「オーケー。わかりました。頑張ります」


ゴブリン獣を相手にも戦えることが分かった今、ドロップを独り占めできるというなら、やるだけである。


そんなこんなで、俺、アメフト親父、華さんの隊列で地下3階を進んでいく。


「その先。右の通路から3匹来るわよ」


華さんの指摘どおり。

俺たちが近づくのを待って、右の通路からゴブリン獣が3匹飛び出した。


不意を突こうとしたのだろうが……あらかじめ分かっているなら対処は可能である。


槍を手に飛び出した2匹の喉元に華さんの投げるナイフが突き立ち、残る1匹となったゴブリン獣を俺が迎え撃つ。


ゴブリン獣によって手にする武器は様々で、目の前の相手が持つのは古びた手斧。俺の持つ包丁とリーチは同じとなれば、先ほどの槍使いに比べはるかに戦いやすい相手である。


華さん。やっかいな相手から片付けてくれたのか?

そうであるなら残る1匹。きっちり俺が片付ける。


目前に迫るゴブリン獣。お互いの武器の射程内。

ゴブリン獣が手斧を振りかぶると同時


ズドスッ


俺は包丁を相手の左胸に突き刺していた。


「ゴブギャー!」


曲線より直線。

斧を振り上げ振り下ろすより、包丁を突く方が早いのだから当然である。包丁を抜き取り止めの一刺しでゴブリン獣は息絶えた。


「ハナもボーイもグレートでしょう!」


確かに華さんの動きはグレートである。


自信ありなのも納得。

モンスターの気配を察知したことといい、左右両手で2本のナイフを操ることといい、ただの戦闘系ギフトでない。SR以上のギフトを保有していることは間違いないだろう。


いや、今まで品川ダンジョンで見て来た戦闘系ギフトとは比較にならないその能力……おそらくはSSR。


「ミーも早く暴れたいでーす」


地下3階ではまだ何もしていないアメフト親父。

元々がスポーツ選手。体育会系であれば早く身体を動かしたいのだろうが──


「地図によれば、この先にモンスターゲートのある狩場がありますから、そちらでお願いします」


攻略読本の地図を参照に2人を案内する。


通路を抜けた先にある大きな広場。

ここが地下3階中央に位置するモンスター狩場で、複数のモンスターゲートが存在する。


「へー。ジャパンにも思ったより探索者がいるわね」


すでに広場では複数の探索者がモンスター狩りを行っていた。


「もっとこう、争いなんてしない温和な人ばかり。危険な探索者は少ないと思っていたけど、そうでもないのね。食堂なんて満員だったし」


当然であるが自宅の経済事情から俺に海外旅行の経験はない。

そのため、他国の人間と比べてどうかは分からないが、確かにどちらかといえば温和な人が多いのだろう。


しかし、探索者となれば事情は異なる。


ギフトといいスキルといい、探索者にはゲーム的要素が感じられるのだ。ご存じのとおり日本はゲーム文化が盛んである結果、探索者に興味を持つ者は多い。


人と争うわけでない。

アメーバ獣やイモムシ獣を相手する分には、害獣駆除のようなもの。


今日がゴールデンウイークであることもあわせて、いつも以上に多くの者が品川ダンジョンを訪れていた。


それでも食堂の賑わいに比して、この地下3階まで来ている探索者は少ない。


「この前ミーが挑戦した地下2階はもっと混雑してました。ここはベリー少ないでしょう」


運動場ほどもある広場に他の探索者は15人。

混雑大好き日本人が少ないのは、ここ地下3階のモンスターに原因がある。


ゴブリン獣。


地下2階までの動物や昆虫のようなモンスターと異なる人型モンスター。明確に意志を持ち、武器を持って能動的に攻撃を加えてくるゴブリン獣。


彼らと臆せず戦えるかどうか?

探索者としてこの先やっていくための試金石となるのがこの地下3階。


「ゴブゴブー」


広場中央付近のゲートから新たにゴブリン獣が湧き出していた。


他の探索者は複数ある別のゲートに貼り付いており、今ゴブリン獣が湧き出すゲートの近くに探索者の姿はない。


ちょうど良い。ならばあのゲート、我々が貼り付かせてもらう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が中二キャラじゃなければ、普通にパーティーメンバー募集していたんだろうになぁ……。
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