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29.暗黒打撃

品川ダンジョン地下2階。


狩場のそこかしこでウシ獣を相手に探索者が戦う中、再びモンスターゲートに光が走り、追加のウシ獣が6頭あらわれた。


後ろで控える他の探索者が現れたウシ獣に攻撃を開始するなか


「凝縮。暗黒の水」


俺は手早く暗黒の霧を水球に。ウシ獣の1頭を狙って暗黒水球を投げつける。


バシャーン。命中。


デバフ発動:ウシ獣は視覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は聴覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は嗅覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は味覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は触覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は攻撃減少。

デバフ発動:ウシ獣は防御減少。

デバフ発動:ウシ獣は敏捷減少。

デバフ発動:ウシ獣は魔攻減少。

デバフ発動:ウシ獣は魔防減少。

デバフ発動:ウシ獣は毒。

デバフ発動:ウシ獣は腐食。

デバフ発動:ウシ獣は恐怖にレジスト。

デバフ発動:ウシ獣は魔力減少。

デバフ発動:ウシ獣は魔力蒸発。

デバフ発動:ウシ獣は麻痺にレジスト。


「ウモー!」


飛散した暗黒水で身体を濡らしたウシ獣は怒りを露わに俺の元まで突進する。しかし、その動きは他のウシ獣に比べ緩慢。


デバフにより速度の落ちた突進をサイドステップで回避しながら、その身体に包丁を叩きつける。


ズバーン


LVの上昇とともに身体能力は強化される。

魔法系ギフトは身体能力に劣るとはいえ、俺のLVは16あるのだ。

デバフで能力の落ちたウシ獣を相手にするくらいなら行けるはず。


ズバーンズバーン


ウシ獣に幾度も包丁を叩きつける。

相手の防御力は落ちているはずが……


ズバーンズバーン


俺の包丁はウシ獣の皮膚を浅く傷つけるのが精いっぱい。

致命傷を与えるには至っていなかった。


根本的には俺の火力がショボイのが原因だが……ウシ獣の持つ強化魔法にも原因がある。


ウシのように人畜無害な面をしておきながら、こいつは強化魔法。防御力上昇バフを使うれっきとしたモンスター。ただでさえ固い皮膚が強化魔法によってさらに硬化しているのだからなおさらである。


くわえて暗黒魔導士のデバフは同時に複数種類の弱体を与える反面、個別の効果は低い。防御力を下げるだけに限っていえば専門職である弱体魔導士が上であり、俺のデバフはウシ獣の防御力を下げきれていないのだ。


それでもこのまま叩き続ければ。時間はかかるが毒とあわせてじきにウシ獣は倒れるはずである。


ドカーン


俺の隣で同じようにソロで戦っていた男が、デカイ斧を振り下ろしてウシ獣の頭を両断する。


「ふっ」


ウシ獣をペチペチ相手どる俺を見て、男がニヤリ笑みを浮かべた。


野郎。振り回す斧といい、アメフトヘルメットを被ったいかにもパワー系の見た目といい、戦士系のギフト持ちか?


さらには一仕事終えたとばかり男は一服を始めていた。


野郎。ダンジョン内は禁煙ではないが、副流煙が邪魔すぎる。と、気をとられたのがマズかった。


ウシ獣への反応が遅れ、突き出される角が俺の胸をかすめていた。


痛い。


ジャージが引き裂かれ、血が流れ落ちる。

かすめただけだというのに、この威力か。


「ウモモー!」


血を見て興奮したか雄たけびを上げるウシ獣。


ぐぬぬ……調子に乗りやがって!

と言いたいところだが、これはマズイぞ……


デバフを受けてなお、ウシ獣の身体能力は俺を上回る。

くわえて傷が、痛みが邪魔して動きが鈍っている今。

これ以上に攻勢に出られては、俺の身が危険である。


頭を後ろに引いたウシ獣。

そのまま勢いを乗せて滅多やたらに角を突き出そうとする──その時。


「ウ……ウモモ?」


突然にウシ獣はその動きを止めていた。


やれやれ……ようやくか。


デバフ発動:ウシ獣は麻痺した。


通常のデバフ魔法は、レジストされればそこで終わる。

効果は一切発動せず、相手には何の影響も与えない。


だが、俺の魔法。暗黒の霧は設置式の継続発動型。

霧が相手を覆うその間。デバフ判定が発動し続ける。


今は霧ではなく水だが……どちらにせよ同じこと。

暗黒水が相手を濡らすその間。1回2回レジストされようが、暗黒水を拭い取らない限りデバフは発動し続けるのだ。


例え相手が99%レジストしようとも、100%でないのなら、いつかは成功する。


「ウ、ウモモー!」


ウシ獣は体力に優れるモンスター。麻痺で動かないはずの身体を無理矢理動かし、身体に付いた暗黒水を振り払おうとするが……


動き出すその前に───


俺は包丁を持つ右手とは逆。

空手の左拳に魔力を込める。


LV15となって習得した暗黒魔導士4つ目のスキル。


「暗黒パンチ!」


ドカーン


ウシ獣の額に左拳を叩きこんだ。


■スキル:暗黒打撃

 暗黒魔力を直接叩きつけ、対象の強化魔法を解除すると同時、体内にデバフを流し込む。


パリーン


左拳に残る手応えとともに、ウシ獣の強化魔法。防御力上昇バフは砕け散る。

同時。俺の拳を通して全てのデバフがウシ獣の体内に流れ込む。


デバフ発動:ウシ獣は視覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は聴覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は嗅覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は味覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は触覚異常。

デバフ発動:ウシ獣は攻撃減少。

デバフ発動:ウシ獣は防御減少。

デバフ発動:ウシ獣は敏捷減少。

デバフ発動:ウシ獣は魔攻減少。

デバフ発動:ウシ獣は魔防減少。

デバフ発動:ウシ獣は毒。

デバフ発動:ウシ獣は腐食。

デバフ発動:ウシ獣は恐怖。

デバフ発動:ウシ獣は魔力減少。

デバフ発動:ウシ獣は魔力蒸発。

デバフ発動:ウシ獣は麻痺。


後衛の魔法職である魔導士が肉弾戦を行うのだ。

リスクを負うだけあって、そのデバフ成功率は暗黒の霧より遥かに高い。


「ウも……モ……」


俺の前には恐怖に怯え、麻痺で動かない身体を縮こめるウシ獣の姿。


戦意を失った相手を叩くのは気が引けるが……デバフが消えれば、恐怖が消えれば襲ってくるのだ。


手加減は無用。一息に決める。


スパーン


右手の包丁を一振り。


強化バフを消去され、暗黒デバフにより脆くなった皮膚はあっさり俺の刃を通し、頸動脈を切断するクリティカルヒット。血しぶきを上げてウシ獣は崩れ落ち紫煙と消えていった。


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