28.品川 地下2階
「ニャン太郎バイバーイ。また明日ねー」
イモ虫肉を口に咥え、ニャン太郎は自然へ帰って行った。
しかし……肉がまだまだいっぱいあるな。
モンスターからお肉がドロップするのは1割程度とはいえ、数を倒せば集まるわけで……畜産農家の未来が心配である。俺が心配しても仕方はないが。
「よし。イモ。今日は俺が晩御飯を作るぞ」
「ほんと? やったー」
男女平等の昨今。イモに家事を任せきりはよろしくない。料理の出来る男はモテるとも聞くしな。
「というわけで。今晩はセルフ焼肉です」
「やったー」
ネズミ肉の謎ラップをはがして切ってドンと並べる。
後はホットプレートで勝手に焼いて勝手に食べてほしい。
「おいしー。おにいちゃんは料理の天才だー」
やれやれ……ただ肉を並べただけだというのに。
「あ、おにいちゃんそれ食べごろだよ。イモが取ってあげるー」
パクパク
うむ。この絶妙の焼き加減。俺は料理も天才だったようだ。
「ただいまー。あれ? この匂いは焼肉かな?」
「おかあさんおかえりー。おにいちゃんが料理作ったんだよー」
「本当? 凄ーい。って生のお肉並べただけで、実際に焼いてるのイモちゃんだよね?」
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掲示板 【ダンジョン】探索者初心者スレpart222
415:名無しの探索者さん
地下2階からはやっぱりパーティが主流でしょうか?
ソロだと危ないですかね?
416:名無しの探索者さん
2階ならソロでいける
といってもギフト次第かな
417:名無しの探索者さん
地下2階はタフな敵が多いよね
ギフトが戦士とかなら楽だけど
418:名無しの探索者さん
ギフトが市民はどうすれば……
419:名無しの探索者さん
LV10は欲しいかなあ……
420:4日でLV19www
市民とかwwダンジョンやめちまえw
混雑して邪魔なだけやw
迷惑かけんなwww
421:名無しの探索者さん
広義でいえばみんなおんなじ市民なんだし……
422:名無しの探索者さん
>>421
荒らしには構わないように
最近変なのが住み着いてるから
423:名無しの探索者さん
>>420
またLV上がったんすか?
寄生して食べるご飯は美味しいっすか?
424:名無しの探索者さん
地下2階のモンスターは動きは単純だから
LV5あれば落ち着いて戦えば勝てるはず
425:4日でLV19www
アホかw俺は寄生されてる側やw
今日はLV1から育成したったわ
426:名無しの探索者さん
>>425
俺も寄生させてもらっていいっすか?
427:名無しの探索者さん
ありがとうございます
ソロでちょっと地下2階へ行ってみます
428:4日でLV19www
>>426
甘えんな氏ね
429:名無しの探索者さん
無理せず安全第一でね
ハイエナには気を付けて
430:4日でLV19www
>>427
氏ね
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4/26(金)
学校
「今日を終えれば明日から10連休やー」
「お前らダンジョン資格は取れた?」
「楽勝やで」
「ワイもや」
「よーし。んじゃ連休は一緒に行くべ?」
「おうよ」
「楽しみやで」
クラスメイトは連休を利用してダンジョンに行くそうだ。
どこかで出会うこともあるかもしれない。
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放課後。今日は品川ダンジョンの日。
しかし、明日からの10連休はどうしたものか。
クラスで話題になっているくらいだ。
連休中はダンジョンの賑わいが予想される。
確かに俺は無理にモンスターを倒す必要はないが、品川ダンジョン探索は近接戦闘の練習も兼ねている。全く倒さないというのも時間を無駄にするだけでもったいない。
まあ、連休中にダンジョンを訪れるのは普段あまりダンジョンを訪れない者たち。主に賑わうのは地下1階だろうから俺は地下2階へ向かうとしよう。
昨日今日に探索者となった者が訪れることはなく、普段とそう混雑は変わらないはずである。
地下2階でエレベータを降りた俺は、案内板に従い狩場へ移動する。
狩場となる部屋にはモンスターゲートが1つ。
室内には30人の探索者がいた。
モンスターが強くなるほど魔石の価値は高くなる。
かといってモンスターが強すぎては生命の危険がある。
ちょうどそのバランスの良い階が地下2階。
現れるモンスターは、イノシシ獣やウシ獣などなど。
いずれも並外れたパワーを有するが、慣れればそれほど危険はないということで、ソロで活動する者は地下2階をメインにするという。
地下2階の推奨LVは5以上。俺のLVは16なのだから挑むに十分。
モンスターゲートに光が走り室内にモンスターがあらわれる。
「ウモー!」
ウシ獣が6頭。現れると同時に勢いよく走りだしていた。
ひとまず俺は壁際に下がり、他の探索者の戦いを観察する。100パーセント攻略読本で予習はしているが実戦はまた別である。
「ウモー!」
ガイーン
盾を持ったイカツイ男が正面からウシ獣を受け止めると、返す刀でウシ獣に武器を叩きつけていた。
「ウモー!」
ヒラリ
細剣を持った優男は正面から突進するウシ獣をヒラリかわすと、すれ違いざまに幾度も細剣を突き刺していた。
なるほど。やはり注意するべきはあのパワーと耐久力だが……動きは単調で直線的。確かにこれならソロでも何とでもなりそうだ。
■ウシ獣 危険度D
デカイ牛のモンスター。
パワーを生かした突進を受けては、半端な探索者ではひとたまりもない。また、分厚い皮膚は硬く大きな身体は並外れた耐久力を持つ上に、防御力を上げる自己強化魔法をも得意とする。




