27.ニャン太郎
新たに仲間とした野良猫ニャン太郎とともに、自宅ダンジョン地下1階へ。
「ニャン太郎ー。がんばれー。がんばれー!」
まずは1匹。ニャン太郎にモンスターを倒させる。ギフトを獲得しなければ、パーティを組むことは出来ないのだ。
さっそく見つけたネズミ獣を蹴とばし暗黒の霧で包み込む。俺がデバフのフルコースで弱らせたところを、ニャン太郎に仕留めさせるわけだが……
「……にゃー」
にゃーじゃない。
動けないネズミ獣を相手に何をびびっているのか?
ネコならネコらしくネズミ獣に噛り付いてほしい。
「ニャン太郎ー。いくよー。なぐれー。ひっかけー」
イモに背を押され、おそるおそるネズミ獣に近づくニャン太郎。ポコリ。右手の爪を伸ばしてネズミ獣を軽く引っかいた。
毒で瀕死だったネズミ獣は、それだけで消滅する。
「やったー。ニャン太郎すごーい! ばんざーい!」
……凄いのか?
まあ、自分よりデカいネズミ獣を相手に、がんばったほうか。
紫煙がニャン太郎と俺たちの身体に吸い込まれる。
ダメージの99%は俺の毒と腐食だが、止めをさしたのはニャン太郎。紫煙の多くはニャン太郎へ。止めをさした者が魔力の大半を獲得する。
問題はこれでギフトを獲得できるかどうかだが……ダメなら獲得できるまで繰り返すしかない。
「ニャン太郎どう? ギフトもらえた?」
うずくまるニャン太郎を抱え上げ、イモが問いかける。
「にゃー」
うむ。よく分からん。
「よし。パーティ結成を試してみる。ニャン太郎がギフトを獲得していれば成功するはずだ」
「おー。全員で手をつなげば良いんだよね。ニャン太郎いくよー」
イモは抱えるニャン太郎の手を取り、俺の手に乗せる。
「よし。アクセプト。イモ。ニャン太郎」
パーティメンバーと感覚を共有する。
「にゃん!」
「おー。ニャン太郎。成功したっぽいよー」
「だな」
猫とつながるのも不思議な感じだが……まあ良い。
「それじゃ、どんどん奥へ行ってみるか」
「おー」「にゃー」
後は俺とイモでモンスターを退治すれば、パーティメンバーであるニャン太郎にも経験が分配される。パワーレベリングの完成というわけだ。
ドカーン ドカーン
イモがモンスターを蹴散らし奥へ進む。
俺は落ちた魔石を拾いながら、ニャン太郎は落ちた肉を食べながら、イモの後に続いていく。
「ニャン太郎。食べてばかりじゃダメだぞ?」
パワーレベリングといっても何もしない者に分配される経験は少ない。一撃でも良い。何か働いておかねば等分割にはならない。そのため俺はせっせと暗黒の霧をまき続けている。
「にゃー……」
まあ今は無理させて怪我されても困るか。
「おー! おにいちゃん。また金ピカいるよ!」
通路の前方をノソノソ歩くのはイモ虫獣。
10匹のうち1匹の表皮が金色に輝いていた。
「ラッキーだな。ただ……イモとはちょっと相性が……」
「連鎖電撃」
バリバリバリー
俺が喋るより早く。イモは電撃を放っていた。
直進した電撃が黄金イモ虫獣を直撃する。
しかし、電撃は黄金イモ虫獣の身体に吸収、かき消えていた。
「あれ? なんでー? イモの電撃消えちゃった」
イモ虫獣の表皮はゴム状の物質で出来ている。
いわゆる絶縁体であり、ただでさえイモの電撃とは相性が悪いところに、より強化された黄金イモ虫獣なのだから仕方がない。
「むー。イモ虫めー」
「まあまあ。ここはお兄ちゃんの出番というわけだ。発動。暗黒の霧」
電撃に反応してモゾモゾ這い寄るイモ虫獣たちをまとめて暗黒の霧で包み込む。
「おー。そっか。連鎖電撃」
ビシャーン バリバリバリー
デバフにより魔法抵抗の減少したところをイモの電撃が貫通。10匹全員が紫煙と消えた。
「やったー。金ピカ落ちたー」
■イモ虫獣のゴム:弾力、絶縁力に優れたゴム。
黄金に光るイモ虫獣のゴム。
これはけっこうな価値が、何かに使えるのではないだろうか?
他に落ちたイモ虫の肉と一緒にまとめてリュックに放り込む。
不思議ビニールに包まれた魔物肉は、常温で1ヵ月の保存がきく。いくらお腹を空かせた野良猫ニャン太郎も、今日はお腹いっぱい。もう食べられないという顔をしているので、保存しておくとしよう。
その後、時間まで探索。黄金ゴキブリ獣を追加で1匹退治して、本日の探索は終了した。
■ギフト:暗黒魔導士 LV16 3↑UP
・スキル:暗黒の霧(五感異常、攻撃減少、防御減少、敏捷減少、魔攻減少、魔防減少、毒、腐食、恐怖、魔力減少、魔力蒸発、麻痺)
魔力減少(New)時間経過により魔力が減少する
魔力蒸発(New)時間経過により魔力が減少する
麻痺(New)身体が痺れ動かなくなる
・スキル:暗黒抵抗:暗黒強化
・スキル:暗黒打撃(New)
暗黒魔力を直接叩きつけ、対象の強化魔法を解除すると同時、体内にデバフを流し込む。
・EXS:プリンボディ:鋭利歯
適正狩場で効率よく稼いだ場合でもLV10以降は1LVの上昇に1ヵ月かかるといわれており、LVが15を超えると更に効率が悪くなるという。
ダンジョンの発生から3年。まだ36ヵ月。
俺のライバル来栖くんはLVが20を超えたと噂になっていたが……
トップランカーであってもその程度が限界のなか、ダンジョンに入って1週間と経たない俺のLVは16。
黄金モンスターおそるべし……である。
この調子であれば近いうちに来栖くんも含めてごぼう抜き。ダンジョンランカーナンバー1となるのは間違いないといえよう。
「そういえばイモ。ギフトLVはいくつになった?」
「んー。19だよー」
……イモのやつ……抜け駆けである。ズルイのである。
「にゃん」
うむ。たぶんLVを自己申告したのだろうが、さっぱり分からん。




