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25.暗黒水球

4/24(水)


「ねえねえ。聞いた? 3年の池先輩」


「もちー。探索者になったってやつっしょ」


「そうそう。それでギフトがSRの戦士長だって」


「えーマジー? 凄いじゃん。それー」


「うちらも探索者なって池先輩と一緒にダンジョン行こうよ」


「ちょべりぐなアイデアやん。やるっしょー」


クラスの女子がダンジョン話で盛り上がっていた。





学校を終えて訪れる品川ダンジョン。

ゲートを通り地下1階。モンスター狩場へ直行する。


今日も狩場は多くの探索者で混雑していた。


モンスターの取り合いとなるわけだが……LVを上げるのも魔石を稼ぐのも、自宅ダンジョンのある俺に焦る必要はない。


そういう意味ではこの混雑も逆にありがたいもの。誰がどれだけモンスターを倒したかなど分からないのだから、倒した数以上に魔石を売っても不審に思われることはない。


「チュー!」


さっそく現れたネズミ獣に対し、俺は右手に包丁を構え相対する。


俺のギフトはデバフを得意とするSSR暗黒魔導士。

デバフ魔法である暗黒の霧で相手を弱らせてから戦うのが定石だが……ここ品川ダンジョンでは暗黒の霧は控えめに戦うこととする。


何故か? それはSSRギフトは目立つからである。


目立ちチヤホヤされるのも魅力であるが……今の俺には自宅ダンジョンという秘密があるため目立っては意味がない。


ズバーン


飛びかかるネズミ獣を斬りつける。


ここ品川ダンジョンは、ただ魔石を売るための実績作り。

効率を求める必要もないのだから、近接戦闘の練習がてら戦うこととする。


ズドスッ


切られてなお噛みつこうと迫るネズミ獣に包丁を突き刺し止めを差す。


「よし」


焦る必要はない。徐々に包丁の扱いに慣れていけば良い。


「いくぜ。俺のスキル。魔弾」


ポツポツ襲い来るネズミ獣を倒す合間、聞こえる声の方角を見れば、探索者が突き出した片手の先からソフトボール大の黒い球体がモンスターに放たれた。


ドーン


魔法を受けたアメーバ獣が吹き飛び地面に転がる。


あれもスキルか……攻略読本をペラペラ探り読めば。


魔弾。Rギフト傭兵の使うRスキル。

自身の魔力を球体として対象に発射する。初期は硬球をぶつけた程度の威力でしかないが、LVの上昇した魔弾は銃弾に匹敵する威力となる。


レア度は低いながら遠距離攻撃が可能か……なるほど。興味深いスキルである。


戦いにおいて離れた相手を攻撃できるのは大きなメリット。

仮に相手が遠距離攻撃の手段を持たないならば、一方的に叩きのめせるのだから当然である。


俺の持つ暗黒の霧も離れた距離から相手を攻撃できるわけだが……ここで目立つSSRスキルをぶっ放すわけにもいかない。


逆を言えばRスキルであれば、いくらぶっ放しても問題はないということ。

Rギフトの獲得率は30パーセント。3人に1人は居るわけだから目立つこともない。


もちろんSSRの俺にRスキルは使えないわけだが……見た目を似せるだけなら。


包丁を右手に構えたまま。俺は左手の五指を開き前に差し向ける。


「発動。暗黒の霧」


左手の平の前に、少量の暗黒の霧を放出する。


霧とはごく小さな水の粒が無数に浮遊した状態にあるという。

であれば、暗黒の霧もごく小さな暗黒の水の粒が無数に浮遊した状態と考えられる。


放出した暗黒の霧を、俺は手の平で包み込むよう凝縮していく。


霧を凝縮すれば水になるという。ならば暗黒の霧を凝縮すればどうなるのか?

結果。俺の左手の平には拳ほどの大きさの黒い水の塊。暗黒水球が完成していた。


後はこいつをモンスターに投げつけるだけ。傍から見る分には、魔弾で攻撃したように見えるはずだ。


俺は左手に握りしめる暗黒水球を振りかぶり、丁度ゲートから現れたアメーバ獣へ投げつけた。


ビシャーン ストライク。


暗黒水球が弾け散りアメーバ獣を小さく吹き飛ばすと同時、その身体をべったり黒く染め上げる。


突然の攻撃に怒ったアメーバ獣が俺の元までピョンピョン跳ねて来るが──


暗黒水球は魔弾に見えて、その実、暗黒の霧を凝縮した暗黒純度100%の暗黒水球。身体を濡らす暗黒の水がデバフ効果を発揮する。


デバフ発動:アメーバ獣は視覚異常。

デバフ発動:アメーバ獣は聴覚異常。

デバフ発動:アメーバ獣は嗅覚異常。

デバフ発動:アメーバ獣は味覚異常。

デバフ発動:アメーバ獣は触覚異常。

デバフ発動:アメーバ獣は攻撃減少。

デバフ発動:アメーバ獣は防御減少。

デバフ発動:アメーバ獣は敏捷減少。

デバフ発動:アメーバ獣は魔攻減少。

デバフ発動:アメーバ獣は毒。

デバフ発動:アメーバ獣は腐食。

デバフ発動:アメーバ獣は恐怖


しまった。アメーバ獣を相手にこのデバフはやりすぎだ。

近づいて来たところを包丁でブスリの計画だったが……


ぴょんぴょん跳ねるアメーバ獣は方向感覚を失いフラフラ。毒と腐食で体力を削られフラフラ。恐怖のあまりへたり込んだところで体力が尽き死んでいた。


暗黒の霧を凝縮したからか?

暗黒の霧よりデバフ効果が高いように思える。


ま、まあ良い……魔弾で死んだように見えるだろう。たぶん。


問題は俺のコントロール。相手に命中させるのが難しい点だが……動きの速い相手。コウモリ獣やゴキブリ獣。ネズミ獣に当てるのは難しくとも動きの遅い相手には使えそうである。


落ちた魔石を拾い上げ、俺は狩場を後にした。


「はい。魔石の買い取り金額は1万円となります」


今日は魔石を全部で20個売却。本当は4匹しか倒してないのだが……まあこの程度なら許容範囲だろう。


7738万7935位:城 弾正


ダンジョンランキングも100万位ほど上昇。

なかなかに順調である。


最後にE級ポーションを1個購入して俺は帰宅する。


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