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23.黒い室内

ネズミ獣が消えた後の地面には、魔石の他に赤黒い物体が散らばっていた。これはネズミ獣のドロップ品、ネズミ肉だな。


「お? おにいちゃん。見て見て!」


地面からキラキラ光る物体を拾い上げたイモが、俺の元へ差し出した。


「なんだ? これもネズミ獣の肉か?」


キラキラ黄金に輝く肉。ということは、今の集団にレアモンスター。黄金ネズミ獣が混じっていたか。


レアモンスターは得られる魔力が格段に多い。



■SSR 暗黒魔導士 LV10 3↑UP


・スキル:暗黒の霧(視覚異常、聴覚異常、嗅覚異常、味覚異常、触覚異常、攻撃減少、防御減少、敏捷減少、魔攻減少、魔防減少)


・スキル:暗黒抵抗

・スキル:暗黒強化(New):暗黒スキルの威力上昇。

・EXS:プリンボディ



結果。俺のLVは3上がり、一気にLV10の大台。

ベテラン探索者として新たなスキル暗黒強化を習得した。


しかし……攻略読本にはレアモンスターとの遭遇は非常に稀であると書かれているが……


自宅ダンジョンでの遭遇は、これで2回。

いや、イモの最初の撃破を合わせると3回目となる。


……あきらかに運が良すぎる。

ただの運なのか? 何か原因があるのか?

考えても分からない上に、運が良いに越したことはない。


「それで、このお肉どーするの? いっぱい落ちてるよ?」


■ネズミ肉:あまり美味しくない。


食べるのに問題はないようだが……進んで食べようとは思わない。


「黄金ネズミ肉だけ持って帰ろう。後は放置で」


「えー。もったいないお化けが出るよー」


確かに食べられる肉を捨てるのはいささか心は痛むが……

現実問題、肉は重くかさばる。この先の探索を考えれば持ち運ぶのは無理である。


「そっかー。しかたないか」


俺のリュックが臭くなるというのは副次的理由にすぎない。


その後、分かれ道を曲がったり直進したりした俺たちは、小さな部屋の入口に辿り着いた。


薄く光っており灯りに不自由はないはずのダンジョンだが、見える室内の天井は暗くただ真っ暗なことだけが見て取れる。


ガサガサ


暗闇の室内から音がする。


「何かいるな……イモ。中に入らず、ちょっと待ってくれ」


「はーい。イモ。いつでも電撃いけるからねー」


明らかに怪しい室内。無闇に突入する愚はおかさない。


「発動。暗黒の霧」


突き出す右手の平から闇黒霧を放出する。

勢いよく室内に流れ込んだ暗黒霧は、みるみる室内一杯にまで広がって行った。


室内に潜んでいる者がいるのなら、室内丸ごと暗黒の霧で満たしてしまえば良い。まずはデバフで包み込み戦闘力を低下させる。突入するのは、その後だ。


「げっ?!」


ぼんやりとではあるが、俺は闇黒の霧が触れた存在を感知することができる。

暗黒の霧に感じる生体反応。その数……50を超える無数。しかも、この形。この大きさ……ここはゴキブリ獣の巣!


「イ、イモ! 室内にありったけの電撃を頼む! 相手は50以上のゴキだ!」


「おー。いっぱい。そういうことならー」


イモは左右の両腕を突き出すと。


「ダブル連鎖電撃!」


バリバリバリー


イモの左右の指先から室内に2条の光が走る。壁面に着弾した電撃が無数に拡散。室内の壁、天井を走り抜けていった。


げっ……電撃の光で照らし出される室内の様子。

その壁にも天井にも。全て真っ黒な物体が張り付いていた。


この部屋だけ天井が薄暗いのは、これが原因か。


室内を荒れ狂う電撃が治まったあと。天井の明かりに照らされた床には、無数の魔石と怪しい肉が残されていた。


■ゴキブリ肉:毒はない。それ以外はノーコメント。


100パーセント攻略読本だというのに味について記載がないのはどういうことか? 編集者ならしっかり食べて判定して欲しいものである。


「おおう。おにいちゃん。またピカピカ発見だよ」


室内を見て回るイモは、金色に輝く板のような物を持っていた。


あれは前回も拾ったゴキブリ獣の羽。しかも金色ということは、またまたレアモンスター。うじゃうじゃ居た中に黄金ゴキブリ獣が混じっていたわけだ。


「とりあえず入れるねー」


イモは俺のリュックに黄金ゴキブリ羽を詰めこんだ。


キモイ。やめてほしいがレアモンスターのドロップ。まさか捨てるという選択肢はありえない。肉でなくて良かったというべきか……


「おにいちゃん。それで後のお肉はどうするのー?」


どうもするはずがない。無視である。


■SSR 暗黒魔導士 LV13 3↑UP


・スキル:暗黒の霧(視覚異常、聴覚異常、嗅覚異常、味覚異常、触覚異常、攻撃減少、防御減少、敏捷減少、魔攻減少、魔防減少、毒、腐食、恐怖)


毒 (New)時間経過により体力が減少する

腐食(New)時間経過により体力が減少する

恐怖(New)怯えすくみ行動できなくなる


・スキル:暗黒抵抗:暗黒強化

・EXS:プリンボディ



やばいな……LVが上がりまくりである。

ダンジョンに入り始めてまだ3日。これは最速LVアップの新記録ではないだろうか? 公表するつもりはないが。


LVアップによって暗黒の霧のデバフ効果はさらに増加。

ついには毒と腐食という相手のHPを削るダメージまで有すようになっていた。


暗黒魔導士は能力低下と状態異常。2つの能力をあわせもつハイブリッドギフトというが……こういうことか。


そしてギフトLVの上昇にあわせて俺の身体能力も強化される。あくまで後衛魔法系ギフトのため主に伸びるのは魔力だが、肉体頑強度、いわゆるHPも増加していく。


その影響だろう。

以前ゴキブリ獣に噛まれて痛みの続く俺の左腕は、いつの間にか痛みのなくなるまでに回復していた。なにせ今日だけでLVが6も上がったのだ。


「なにこれー? おにいちゃん。これなに?」


イモの声に見て見れば。


なぜこれほど大量のゴキブリ獣が発生したか?

その原因たる存在が室内中央に浮かんでいた。


漆黒の風が渦巻く小さな竜巻。モンスターゲート。


「イモは見るのは初めてか。これがモンスターゲート。ここからモンスターが出てくるんだぞ」


「へー。これ。イモが中に入るとどうなるの?」


モンスターが無限にあふれ出るモンスターゲート。

おそらくは異界の、モンスターが溢れる世界につながるワープホールではないか? そのような仮説が有力であるが──


「分からない。だが、絶対に入らないように。ふりじゃないぞ? 絶対だからな?」


仮説を実証しようとモンスターゲートに送り込んだ探査機械も。さらには実際に入って行った者も。そのどれもがゲートから帰って来ないという。


「うー。怖い。分かったよ」


「よし。それじゃ今日はこれで戻るか」


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