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22.VSアメーバ獣

「ただいまー」


ようやく自宅に帰るのは夜10時。

さすがにお腹が減った。


「おにいちゃん。おかえりー」


「帰ったぞー。って、イモは何を?」


何やら缶スプレーを片手に廊下をウロウロしていた。


「イメージトレーニングだよ。ほら。ゴキジェット」


そう言って、イモはゴキジェットをプシューと吹いていた。


……なるほど。

昨日ゴキブリ獣相手に苦労したので、自宅のゴキブリ相手に練習していたわけだ。


「だとしても、あまりシューシューしないように。それ人間にも毒だから」


「はーい」


イモには1人で自宅ダンジョンへ入らないよう言ってある。1人で入って何かあっては大変だからだが、そのぶん力が有り余っているのだろう。


「明日は自宅ダンジョンへ行くか?」


「本当? 行く行くー」


出来れば品川ダンジョンでもう少し魔石を売りたいところだが……イモを放置するのも危険である。有り余る体力から1人でダンジョンへ入りかねない恐れがある。




4/23(火)


火曜日。週は始まったばかり。まだまだ先は長い。


「なあ。今度みんなでダンジョン行かねーか?」


「おー。面白そうやん」


「せやけど、試験受けて探索者資格を取らないとあかんやろ?」


「あんなん、若くて病気なければ、名前書くだけで良いらしいで」


「マジか? じゃ行ってみるか?」


「行くべ行くべ」


クラスの男子がダンジョン話で盛り上がっていた。





放課後。そそくさ帰宅した俺は自室で準備を整える。


「ただいまー。おにいちゃん。もう帰ってるー?」


「イモお帰り。俺の方は準備OKだぞ」


「おー。ちょっとだけ待っててー」


帰ってくるなりお菓子を手に取ると、イモは庭へ出て行った。


いったい庭で何をしているのやら……

そういえば最近は野良ネコをよく見かけるが……まさかな。貴重な食糧をばらまく無駄はしないはず。たぶん。


「お待たせー。イモはいつでも行けるよー」


「いやいや。さすがに着替えないとマズイだろう」


「なんで? イモの制服、変かな?」


イモの制服姿は世界で1番可愛いといえる。

しかし、可愛い制服が汚れては、最悪破れようものなら買い替えとなる。そのような予算は我が家に存在しないのだ。


「そっかー。それじゃ着替えるー」


ダンジョンで稼いだなら制服姿のままでも良いのだがな……いくらイモが可愛いとはいえジャージ姿は微妙に芋となる。





イモと2人。自宅ダンジョン地下1へと降り立った。


「イモ。練習したし今日はがんばるぞー」


張り切るのは良いが母が帰るまでには戻らないとな。心配をかけたのでは元も子もない


「電撃。でんげきー」


バリバリー


前を行くイモが現れるアメーバ獣を倒し進んでいく。


「イモ。次にアメーバ獣が来たら、お兄ちゃんに1匹任せてくれないか?」


「へ? どして? おにいちゃん攻撃スキルないよ?」


確かに俺のギフト暗黒魔導士はデバフ職。

モンスター相手に直接暴力を振るうような野蛮行為は他人にお任せしたいのが本音なのだが……残念ながら品川ダンジョンにおける俺はソロ探索者。他に暴力を代行してくれる者など存在しないため、武器の取り扱いに慣れておく必要がある。


「んじゃ、はい」


洞窟内を3匹でノソノソ動くアメーバ獣。

うち2匹を瞬殺したイモは1匹を残して後ろに下がった。


残されプルプル震えるアメーバ獣。

俺は右手に包丁を握りしめ、そろそろと距離を詰めていく。


あえて暗黒の霧は使わない。今は真正面から戦い撃破することに意味がある。


突然に跳ね上がり、俺に飛びつこうとするアメーバ獣。


「ふんぬ!」


ズバーン


右手の包丁を一閃。

見事な悪球打ち。顔を目がけて迫るアメーバ獣を切り裂いた。


ポヨーンポヨポヨ


弾力ある表皮を切り裂くことはできなかったが、吹き飛び地面を跳ね転がるアメーバ獣を追いかけると。


ブスリ。


包丁で一突き。止めを刺した。


いくら魔法使い系ギフトは肉弾戦が苦手とはいえ、相手は最弱のアメーバ獣で俺のギフトLVは7である。真正面から戦って負けることはない。


「おー。おにいちゃん。すごーい!」


「ふぅ……やれやれ。この程度なら朝飯前だというのに」


すでに夕方を終えた夕飯前であるが気にしない。


「おぅ。さすがおにいちゃん。ばんざーい」


俺を褒めながらも、イモは横道から現れたネズミ獣5匹を瞬殺しているが……気にしない。


その後も現れるモンスターを倒しながら奥へと進む。

誰も探索に入る者がいないだけあって、そこかしこにモンスターが蠢いていた。


「チューチュー!」


洞窟の先から走り寄るのはネズミ獣。それも20匹の大軍。


「おにいちゃん。これも練習する?」


いやいや……俺を思って言ってくれているのだろうが……さすがのお兄ちゃんでもこの数を相手にするのは無理である。


「それじゃイモの出番だよ! 連鎖電撃」


バリバリー


先頭を走るネズミ獣に命中した電撃が、後に続くネズミ獣を鎖でつなぐよう連鎖する。20匹全てのネズミ獣は電撃連鎖の1撃で全滅していた。


「おお! イモ凄いぞ! 偉いぞ!」


「えへへ」


イモは何気なく退治しているが……やはり自宅ダンジョンは危険である。体長20センチの人食いネズミが20匹。俺1人であれば1、2匹は相手できても、その間に他のネズミ獣に噛みつかれお陀仏であっただろう。


そして、それはイモも同じ。いっけん無敵に見えるイモの雷轟電撃もあくまで後衛ギフト。不意を討たれモンスターに接近されては危険となる。


なるほど。ソロのためだけではない。イモを守るためにも、俺は近接戦闘技術を磨く必要があるわけだ。


「うわー。何かいっぱい落ちたね」


ネズミ獣が消えた後の地面には、魔石の他に赤黒い物体が散らばっていた。これはネズミ獣のドロップ品、ネズミ肉だな。

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