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2.試験合格

ひととおり「必勝! ダンジョン探索資格。100パーセント合格読本」を読み終えた今日。ダンジョンン探索資格習得に向けた筆記試験の当日である。


「行って来る」


「おにいちゃん。いってらっしゃーい」


イモに見送られたどり着いた繁華街のビル。

その一室が今日の試験会場である。


ガチャリ


受付を終えて入る室内。ズラリと席に座るのは、おっさん、少年、おっさん、少年、少女。


過半数である少年は、俺とおなじくこの春から改訂された年齢制限にあわせて探索者を目指す者たち。いくら危険とはいえ、年頃の少年であればダンジョンにロマンを感じるのも当然である。


残るおっさんたちは、社会の機械化、自動化の流れにより、職を失った者たち。人手があぶれるとなれば、年をとった中高年の首が切られるのは仕方がない。


そのような、おっさん連中でも合格できるのだ。

バリバリ現役高校生の俺が試験に落ちようはずがない。


「はい。試験終了です。係の者が回収に回るので答案用紙を渡してください」


必勝! ダンジョン探索資格。100パーセント合格読本のおかげもあり、自己採点は100点満点。俺は合格間違いなしの手応えとともに試験会場を後にした。





ピンポーン


「ちーっす。郵便っす」


「どうも。ご苦労さまです」


ようやく届いた書面には、大きく合格の2文字。

晴れて俺は今日からダンジョン探索者となったのだ。


「おにいちゃん……合格したんだ?」


「やれやれ……少し本気を出してしまったかな?」


3日ほど徹夜しだだけだというのに困ったものである。


「おー。すごいすごいすごーい!」


実際のところ犯罪歴がなく、若く健康であれば、ほぼ合格できるという話だが……わざわざイモに教えることもない。褒められて悪い気はしないものだからして、イモには黙って俺を褒めるマシーンになっていてもらうとしよう。


イモが万歳三唱する横で、俺は封筒からプラスチックのカードを取り出した。見た目は交通系カードやクレジットカードにそっくりである。


「なにそれ?」


「これが探索者の証。探索者カードだ」


表面には俺の名前。じょう 弾正だんじょう。有効期限。そしてダンジョンランクが記載されている。


「へー。でもダンジョンランクって何も書いてないね?」


ダンジョンランクは、ダンジョンで稼いだ金額により決定される。当然、探索者になりたての俺は1円も稼いでいないわけで、ランキングの表示はない。


「なんだー」


イモが残念がるのも無理はない。俺のテスト結果。おそらくだが100点満点のパーフェクト解答。特別にランキング100位あたりからスタートしても良いものを……ダンジョン協会とやらも頭の固い連中である。


「でも、おにいちゃん。本当にダンジョンに行くの? あぶなくないかなー?」


「ふっ。イモよ。お兄ちゃんを甘く見てもらってはこまるぞ?」


試験帰りに本屋で購入した1冊の本をイモに突きつける。


「なにこれ? 必勝! はじめてのダンジョン探索。100パーセント攻略読本?」


100パーセント攻略読本シリーズ第2弾。

ダンジョン探索の事前準備から、低階層に現れるモンスターの特徴、実際の立ち回りなどが記された貴重な攻略本である。


「うーん。本当にこんな本で大丈夫なのかなー?」


「大丈夫。まれに誤植があるだけだ」


「それって駄目じゃないかなー……?」


間違いなど誰にもあることだからして、細かいことを気にしてはいけないのである。





4/20(土)


いよいよ記念すべきダンジョンデビューの日。


「行ってくる」


「おにいちゃん。いってらっしゃーい。帰りが遅い時は遭難探索申請するからねー」


「いやいや。それは止めてくれ」


申請するだけで100万円。加えて探索経費が丸ごと要求されるのだ。お金を稼ぎに行って、逆に借金を増やしては本末転倒である。


「だって戻らないとお母さん心配するよー? お母さんに言ってもいい?」


それは困る。

何せ俺が探索者になったことは母に内緒である。


仮にも死傷者数ナンバー1の職業。いくら一攫千金とはいえ、危険な職業には反対するだろう。


心配をかけるのは間違いないうえ、下手すれば自分の稼ぎが足りないのが原因と考え、エロエロ勤務まっしぐらの可能性もある。


無理せず早めに戻るとしよう。


「いってらっしゃーい。お土産忘れないでねー」


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