表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/87

14.暗黒の霧

イモと2人。自宅ダンジョン地下1階へと降り立った。


昨日はこのすぐ近くに親父の……

そう考えるとあまり気乗りしない場所だが……


「おー。イモ。ダンジョン探索するの初めてだから緊張するよー」


俺の袖をつかんだイモがニコニコしながら後に続く。


いざとなれば女の方が度胸が据わるとはいうが……イモは全く平気そうである。大物かもしれない。


周囲を見回し進むダンジョン。ここは鍾乳洞タイプのダンジョンだな。


品川ダンジョンはコンクリート造りのダンジョンで、天井も道も広い造りとなっていたが、自宅ダンジョンの道は狭い。


道幅は約1.5メートルくらいか?

2人が横に並んで歩くに不自由はないが、モンスターと対峙した時の立ち回りに苦労しそうである。


「イモ。用心しろよ? いざとなったらお兄ちゃんが守るからな」


反面。ゆうに3メートルはある天井。

つららのようにぶら下がる鍾乳石の脇から、1匹のコウモリが飛び出していた。


「コウモリ獣か! イモ。さがっていろ」


えーと。確か攻略読本に戦うコツが載っていたな……どこだ?


ペラペラとページを繰る俺の横で、イモは右手を突き出すと。


「電撃」


ビシャーン


イモの右手指先を発した電撃がコウモリ獣を貫き、紫煙しえんに変えていた。


ようやく見つけたコウモリ獣のページ。


■コウモリ獣。危険度E


空からの奇襲を得意とするモンスター。

超音波で周囲を探索。暗闇であっても正確に飛来する。

素早い動きに小さな身体のため、攻撃を当てづらい。


体力防御力は低いため、一撃を当てることが大切。飛び道具がない場合は、あえて噛みつかせてから叩くのも有り。



集団行動していることが多いため、注意すること。か……なるほどね。


「なるほどねじゃないよー。おにいちゃん。また来たよ!」


イモの言葉に天井を見上げると、さらに1匹。

コウモリ獣がこちらへ飛んでくるのが見えた。


「イモ。慌てなくとも大丈夫だ。すでに俺はコウモリ獣の弱点を把握している」


さて。ずいぶんお待たせしましたが、ようやく俺のギフト。

SSRにして総合評価9.5点、暗黒魔導士の出番である。


■ギフト:暗黒魔導士 LV1

・スキル:暗黒の霧(視覚異常)


自身のギフトは、どういう仕組か本能で理解できる。


俺が使えるスキルは、暗黒の霧。

ようはデバフ魔法で、LV1の今は暗黒の霧に包まれた相手の視覚を阻害し続ける、とある。


「発動! 暗黒の霧。世界を闇に染め上げろ!」


突き出す俺の右手から、黒い霧が宙に漂う。


この暗黒の霧に包まれている間は、継続してデバフ効果が発動。LV1の今であれば霧で前が見えづらくなるわけだ。


湧き出した暗黒の霧に頭から突っ込むかたちとなったコウモリ獣。そのまま霧を突っ切り、俺の右腕に噛みついていた。


カプリ


痛い。


チューチュー


やめろ。人の血を勝手に吸うんじゃない。


俺は右腕に噛みつくコウモリ獣を左手で取り押さえ、地面に叩きつける。素早く取り出した包丁でもって、そのまま突き刺した。


うーむ……アメーバ獣とは異なる。哺乳類を突き刺す独特の柔らかい感覚。これは慣れるまで気持ち悪いものだ……


突き刺す包丁をグルリ捻ると同時。コウモリ獣は紫煙となり消えていた。


やれやれ……肉を切らせて骨を断つ。

さすがは攻略読本。完璧な対処法である。


傷口にポーションを振りかけながら、俺は自画自賛する。


「おにいちゃん。そのやり方じゃ無理じゃないかなー?」


何が無理なのか?

動きの早いコウモリ獣を倒すに完璧な手順ではないか?


「だって、ほら」


天井を指さすイモ。

その先には30を超えるコウモリ獣の群れ。


いやいや……そりゃ集団行動していることが多い。とは書かれていたが……少々多すぎではないだろうか?


誰も立ち入る者のない自宅ダンジョン。誰もモンスターを退治しないため、繁殖し放題というわけか?


「とりあえず発動。暗黒の霧」


モワモワと広がる暗黒の霧がコウモリ獣を覆い隠していく。


霧に包まれる間は、デバフ効果として相手の視覚を阻害し続けるわけだが……


コウモリ獣は暗黒の霧を意に介せず、標的を見つけたとばかり一斉に俺を目指して降下していた。


まあ、さっきのコウモリ獣もそうだが……やはりそうなるか。


だいたい初戦の相手がコウモリ獣とか、俺に対する嫌がらせか? あいつら超音波で有名やん。霧で見えづらいとか、視覚関係ないやん。


仕方がない。えーと。1匹を倒すのに1回噛まれて血を吸われるとして……1回に吸われる血液量は何CCだ? 血液の30%を失うと生命の危険性があるとして、俺の体重を考えると……


「おにいちゃん。動かないでよ?」


必死に計算する俺をよそに、イモは右手を掲げると。


「連鎖電撃」


ビシャーン バリバリバリー


右手を発する電撃がコウモリ獣に落雷。

そのまま俺の周囲を飛び回るコウモリ獣30匹まとめて電撃が連鎖、貫通していた。


マジかよ……もしも俺が動いていたら……ちょー怖いんですけど……


「だいじょうぶ。フレンドリーファイアだもんねー」


まとめて30匹のコウモリ獣が紫煙に変わる。

溢れた紫煙はイモ。そして俺の身体へ吸い込まれていった。


身体が熱い。これが魔力の奔流。

倒したコウモリ獣が魔力となり、俺の力となる。


イモが全て倒したにもかかわらず、得られる魔力はパーティで等分割。


もっともいくらパーティだからといって、何も貢献しないのではわずかしか得られない。意味がないとはいえ俺は視覚異常のデバフを与えていたため、問題なく等分割されていた。


しかし……意味のないデバフで経験値だけいただくとか……


これが野良パーティなら、俺は袋叩きの上パーティ追放されても文句は言えない。ま、まあとにかくこれで……


■ギフト:暗黒魔導士 LV2 ↑1UP

・スキル:暗黒の霧(視覚異常、聴覚異常)


あれだけの数を倒せばレベルも上がるわけだ。


そして、ギフトレベルの上昇にともないスキルも強化される。

なになに……暗黒魔導士LV2になったことで、暗黒の霧に聴覚異常の効果が加わったようだ。


「む?」


全部のコウモリ獣を退治したかに思ったがまだ1匹残っていたようで、しょうこりもなく天井から俺を目がけて降下する。


「発動。暗黒の霧!」


俺の腕を発して広がる暗黒の霧。

空中から霧に突っ込んだコウモリ獣は。


ドカーン


そのまま俺の足元。地面へ勢いよくぶつかっていた。


ふっ。見たか!

これがSSRにしてうんぬんかんぬんの実力。


コウモリ獣が超音波を感知する耳。

その聴覚を阻害することで距離感を狂わせた結果。やつは地面に激突。自滅したというわけだ。


「おー。おにいちゃんすごーい!」


やれやれ……真の強者は戦わずして勝つ。

直接に武器を振るうなど蛮人のやることよ。

イモもよく覚えておくように。


「あ。でもまだ動いてるよ?」


地面に激突したコウモリ獣は、羽をモゾモゾ再び飛び立とうとしていた。


ファック! 嫌がらせか?

せっかく俺が格好良く解説していたというのに……


「しねー!」


ブスリ。包丁を突き刺し始末する。

とにかくこれでコウモリ獣は全て片付いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ